みか
あなた…
とむ
みか…か?
みか
えぇ、久しぶりね…
とむ
本当だったのか…元気だったか?
みか
えぇ、変わりないわよ
とむ
そっか…
とむ
なぁ…今更なのは分かってるんだけどさ、あの時の事本当に悪かった…
みか
まだ気にしてたの?全然大丈夫
気にしてないわ
とむ
でも…お前…
みか
確かにあの時は私もびっくりしたわ、でもね…今は全然大丈夫、何ともないわ
とむ
なぁ、もう…やり直すことは出来ないのか?
みか
…無理よ
もし私がやり直したいと思ってもこれはどうしようもない事なの
とむ
でも…!
みか
でもじゃない!
とむ
っ…
みか
あの時は、ああするしか無かったのよ
あなたのためだったの…
みか
だって私…今でもあなたのこと…
とむ
じゃあ…!
みか
あのね…私もう行かなきゃ行けないんだ…
とむ
え…もう行くのか?…
みか
えぇ、もう時間もないしね…
とむ
俺は…嫌だよ!
確かにあの時お前を離してしまったのは俺だ!でも…でも俺はやっぱりまだお前の事が好きなんだよ!割り切れるわけないだろ?
みか
あなた…
とむ
分かってるさ!分かってるけどさ…こんな別れ方…あんまりだろ?
みか
えぇ、そうね
こんな別れ方、望んでするものじゃないものね
とむ
だったら…
みか
でも、こればっかりはどうしようもない
どれだけ望んでももう元には戻れない…
一緒に居られることはもう出来ないのよ
とむ
10年だぞ!こんなにも一緒にいたんだ!
これだけ長い時間を君と…君だけと一緒に過ごしていたんだ!
とむ
初めて告白して付き合って、デートしたり旅行だって行った、そしてお前と結婚して…
たまには大喧嘩する日もあったけど、俺には全てがかけがえのない大切な思い出なんだ!
みか
分かってる、あなたがくれた大切な思い出は私にとっても大切な宝物よ?でも、もう割り切ってくれないと…お別れの時も言ったわよね?
みか
体に気をつけて、お幸せにね?って
とむ
そんなの…無理だよ
お前と別れてから俺の日常は全て空っぽになってしまった
とむ
本当に今更だが…お前がいないとやっぱり駄目なんだって気づいたんだ
みか
そんなの…私だって…
とむ
え…?
みか
私だって!あなたが居ないとつまんないわよ!あなたの事が好きだったから!あなたとの日常が幸せだったから、私だって空っぽになってるわよ!
とむ
みか…
みか
でもね、私気づいたんだ
とむ
何に…だよ
みか
これが私たちの運命なのかなって
とむ
そんなこと…あるもんか…!
みか
ごめんね…
やっぱり私はあなたと一緒に居られない
私の所に来ることも許さない
とむ
みか…
みか
あなたが何しようとしているか、何となく分かるわ
とむ
なっ…
みか
でもね、絶対にやめなさい
私のところに来たら許さないって言ったでしょ?
あなたにはまだこれから幸せになる権利がある
みか
今手に持っているものを捨てて、私の事は忘れるの
みか
そして、次の幸せを見つけなさい
とむ
そんな…そんなこと出来るわけないじゃないか…
みか
いいえ、きっとできるわ
だってあなたは私のことを幸せにしてくれたじゃない
みか
あなたが思っている以上に、私はあの10年間幸せでいっぱいだったのよ?
とむ
それは俺だって!…
みか
だから、これからは
私以外の誰かを、私以上に幸せにしてあげるの
みか
それが出来たら、私の所に来てもいいわ
一緒にお酒でも飲んで話しましょ?
とむ
…っ
分かった…でもやっぱり俺は新しい出会いなんて作らないからな
みか
え…いや、なんでよ
みか
まだ分からないの!?
それじゃあなたが辛いだけじゃない…
そんなの…私…耐えられないよ…
とむ
大丈夫
もうお前の所に行くなんて言わないし、幸せにするって約束は守るさ
みか
じゃあ…なんで…
とむ
俺にはお前に託された大事なものがあるからだ
みか
それって…
とむ
あぁ…俺とお前で作った大切な、本当に大切な宝物だ
みか
そっか…
とむ
俺はお前と、この宝物しか愛せないんだ、だから俺はお前が俺に預けてくれたこの宝物は俺が絶対に幸せにしてみせるさ
お前以外の誰かを幸せにするって、これでも成立するよな?
みか
うん…うん!
あなたがそれだけの決意があるならもう私は何も言わないわ
みか
でもね?無理しなくていいのよ?
私はあなたが他の人と一緒になっても怒らないし、嫉妬だってしないわ…きっと
とむ
ふっwお前のその嘘をつく時の癖
見抜けるようになるとほんっとわかりやすいよなー?
みか
ふふっ、そうねー
やっぱりこの癖を見抜くのはあなたしかいないわよねー
とむ
当たり前だ、どれだけお前と一緒にいたことか…だいたい10年っても、それはお前と付き合ってからの年月だ
付き合う前から…なんなら幼稚園児になる前から一緒だったろ?
とむ
その、『きっと』って言う時、お前が嘘ついてる証拠だからな
みか
っ…はーぁ
そうね、嫉妬はするかも…
嫉妬してあなたの所にひょっこり顔出すかもね
とむ
怖いこと言うなよw
でもな、お前だったらいつでも大歓迎だぜ?
それにお前を嫉妬させるような事は絶対しないさ
みか
あなた…
ありがとう…
とむ
いや、お礼なんて、俺の方が言わないと聞けないだろ?
みか
そうかしら?
とむ
そうだよ、そうに決まってんだろ?
みか
そっか…じゃあお互いに言い合いましょうか?
とむ
あぁ、そうしようか
みか
うん、じゃ私からね…
みか
あなた
私とずっと一緒にいてくれてありがとう
私の事幸せにしてくれて…ありがとう
私の事…愛してくれて…
みか
ありがとう
とむ
あぁ、俺の方こそ
とむ
みか
俺とずっと一緒にいてくれて、ありがとうな
俺の事幸せにしてくれてありがとうな
俺のことずっと愛してくれて…
とむ
ありがとうな…
とむ
それから…
とむ
俺の…命を救ってくれて…ありがとうな
みか
ふふっ、いいのよ
私の大事な旦那様だもの
妻として当然よ?
とむ
本当は俺がお前の事守らないといけなかったのに…本当にごめんな…
みか
はぁ…
ごめんなんて言わないで?
私がした事は後悔してないわ
だから、あなたも後悔しないでね?
とむ
っ…あぁ、あぁ…(泣)
みか
ふふっ、何だか涙出てきちゃったわw
文字が全然読めないんだものw(泣)
とむ
俺もw
みか
ふふっ、じゃそろそろ行くわね?
とむ
あぁ…あっちでも元気でな?
みか
もちろんよ
私があなたのとこにお邪魔してもいいように、ちゃんと掃除しとくのよ?
とむ
あぁ、いつでも来い
みか
うん!
とむ
じゃあ、最後に1個俺からお願いしていいか?
みか
なに?
とむ
俺がそっちに行ったら、また一緒に暮らしてくれ、ずっと、ずっと
みか
…えぇ、約束するわ
絶対、何があってもこの約束だけは守ってみせるわ!
とむ
ありがとう
みか
でも、だからってあんまり早く来ちゃダメだからね?
焦って来たりしたら、私本気で怒るから
とむ
わ…わかりました
お前を怒らせるなんてそんな恐ろしい真似、出来るわけないからな
みか
分かればよろしい!
とむ
じゃ、行ってらっしゃい、みか
みか
行ってきます、あなた
通信者記録
故 みか様
みか様 夫・とむ様 子・とうか様
の3人で市街地を歩いていた際
とうか様を抱えていたとむ様に、通り魔の男性が刃物を刺突しようとしていた所、みか様がお2人を守ったため、刃物が腹部に刺さり、出血多量を起こし、死去
享年25歳
善行を行ったため、天国行き、及び1度のみ希望する者への、文字のみによる連絡を与えられ、今回使用された
報告以上
故 みか様 及び 故 とむ様
の希望による、経過報告を書き記す
お2人の通信の後、とむ様は右手に持っていた包丁を捨てた
とむ様は自殺を謀り、右手に包丁を持っていた所、みか様との通信ができる知らせを受けたという
みか様には、自殺をしようとしている事は
お見通しだったようだ
そもそもこの、天国と現世のとの間で、通信が出来たというのは、天国のある、いわゆる【魂の世界】と、【現世】との間に何らかの繋がりがあると気づいた者が、その世界の繋がりを通せば、【魂の世界】の住人と、【現世】の住人と会話する事が可能なのではないかと考えたからである。
そして技術は進み、音声による通話は実現することは出来なかったが、文字のみによる会話は実現することが出来た。
また、この通信ができることは、予め亡くなられた方の親族には伝えられるので、【魂の世界】から通信が来ても、驚愕することが無いように配慮している
さて、お2人の話に戻り
とむ様は、みか様との約束通り、娘であるとうか様を何不自由無く、幸せにしてあげる事ができた。
とうか様は成長し、最愛の人を見つけ結婚し、子宝にも恵まれ、本当に幸せそうに暮らしていたという
とむ様本人は、やはり妻であるみか様を亡くされた後も、とむ様が宣言された通りに出会いを求めず、とうか様が嫁に行かれた後も、お1人で過ごされていた
ただ、寂しく感じることは無かった
みか様との約束。みか様の元に行き、2人でずっと暮らすという約束を早く果たしたいと、逆にわくわくしていたのだという
また、とうか様がとむ様の様子見に来ていたので、とうか様やお孫さんと楽しく過ごされていた。
とむ様は、みか様が言っていたように『私も幸せになる事ができていた』と仰られた
そして、月日は流れ、とむ様は85歳で天寿を全うされました。
とむ様は、お1人で娘であるとうか様を育て、幸せにして見せた、という事で
とむ様は当然、善行なる者と判断され、みか様と同じ天国行き、及び現世との通信をする権利が与えられた
そして、念願のみか様との再開
お2人は再開した途端に、それはもう周りの方々の目など気にせず、抱き合って大泣きしていた
そして2人は、1件の家を貰い受け、そこでいつまでもいつまでも、幸せに暮らしています。
経過報告終了
管理官
通信したい方のお名前を送信してください
とむ様の親族となりますので、お名前だけで結構でございます
とむ
とうか
管理官
とうか様ですね、承りました。
現世の担当の方に準備要請の連絡を致しますので、少々お待ちくださいませ
とむ
とうか、俺だ
とうか
お父さん?
とむ
あぁ、とうか
久しぶりだな
とうか
元気にしてる?
とむ
あぁ、変わりないよ
そっちはどうだ
お前は元気なのか?
あすか君とは上手くやってるかい?
孫達は元気か?
とうか
もーお父さんったら
心配しすぎだよー
大丈夫、ちゃんとやってるし子供達も元気だよ
とむ
そうか…お前が元気なら良かったよ
とうか
お父さんはどう?お母さんとちゃんと暮らせてる?約束したんでしょ?
とむ
勿論さ、毎日が楽しいよ、それこそ隣にいるしな
とうか
そっかー、楽しそうでよかったよー
お母さんは元気かな
とむ
元気だよー、だってさ
とうか
うん、それなら良かったよ
とうか
ね、お母さんに言いたいことがあるんだけどさ
とむ
なんだい?お母さん見てるから言ってみな?
とうか
うん…
あのね、お母さん
お父さんと私の命を助けてくれてありがとう
とむ
とうか…
とうか
お母さんが私を助けてくれたおかげで、私こんなに幸せになれたよ!
本当にありがとう!
とむ
こちらこそ、幸せになってくれてありがとうだってさ
とむ
こっちに来たらお話聞かせてね、だって
とうか
勿論だよ!いっぱい話そ!
お母さんと話すの夢だったの!
とむ
あぁ、でも慌ててくるんじゃないぞ?
めいっぱい幸せになってから来なさい
とうか
わかった!
とうか
じゃ、そろそろだね
とむ
あぁ、少し寂しくなるが二度と会えなくなるわけじゃない、こっちで会えるのを2人で楽しみにしているよ
とうか
うん!
とうか
じゃ、お父さん、お母さん、元気でね!
とむ
あぁ、お前も元気でな
管理官
とむ様ととうか様の通信を終了させて頂きます