いきぬいた

ﾋﾟｯ

続いてのニュースです

2ヶ月前から行方不明の 一条梨花ちゃん(8)が 男性の家で発見されました。

誘拐犯だと思われる 瀬川楓容疑者(29) は容疑を認めているとの事です。

現在、取り調べか進められています。

ｻﾞﾜｻﾞﾜ…

えっ、一条ってあの…？

後ろで聞いていたこの店のバイトに コソコソと言われる。 もう慣れたことだ

不採用はいつもの事だ

今は一人暮らしをしている。

昔、恋人と同棲したこともあったが 毎日のように、特別扱いされ お義母さんには可哀想可哀想といわれ 続けいやになり、別れた。

だって私は何も可哀想ではないのだ。

なんであの時 警察に本当の事を言えなかったの だろう

私は何もされてない。

そのたった一言が喉に詰まって 出てこなかった。

私は可哀想じゃない。

家に記者が来たこともあった。

ドアを閉めようとする。 でも その一言で冷静な自分が一瞬で 砕けた。

次の日私と楓らしき人の写真が 週刊誌に載せられていた。 「精神状態が危うく、洗脳された被害者女性。加害者男性はx市でカフェを経営。」

『Fleur de poire』

週刊誌に載っていた住所をもとに カフェを訪れた。

中は薄暗く、店員は一人しかいない。

注文は

固まってしまった。 だって楓そっくりだったから

聞こえてます？

ｽｯ

対応も、声も 全てが似ていた。

でもありえない。 あれから何年もたっているのだ。

気づいて欲しいけど、 気づいて欲しくない。

終始ﾎﾞｰっとしながら コーヒーを少しづつ口に含んだ。

それから梨花は 毎日のように通うようになった

バイトが出来ないから お金もない

ご飯もろくに食べていない。

カフェについたと同時に倒れ込む。

……………っ！

梨…………っ！

おっ…………………ろっ！

おきっ……！

起きろっ梨花っ！

次の日私は目を丸くした。

週刊誌に2人で歩く姿が 載せられていた。

『一条梨花ちゃん事件、再び』 『洗脳された被害者女性。』

楓と私は何もしてないのに。 ただ一緒に時を過ごしただけなのに。

次の日、 前とは違う記者がきた。

私はもう何も答えない。

梨花がやって来て生活が ガラリと変わった。

お菓子を食べる ジュースを飲む デリバリーする グロテスクな映画を見る 休日寝坊する。

どれも経験したのは初めてだった。

俺は自由に生きる梨花に憧れた。

厳しい母親のもとで育ったから こんな生活は違和感でしかない。 母親がみたら、嘆くだろう。

俺に自由をくれた子。 まだ8歳の女の子。

生きるのに疲れていた。 でも梨花に出会って、生きる事の楽しさを知った。

世間から見たら 被害者と加害者。

恋でもない、 愛でもない。

何を言っても信じてもらえない。

でもね、気づいちゃった。

世間に認めて貰う必要なんて ないんだよ。

真実を知ってるのは 私と楓だけ。

END