榮明寺(えいめいじ)保管庫
人形A
ヒマだな
人形B
ヒマだね
人形A
ここに来てから、どのくらい経った?
人形B
わからない
人形B
ここ、時計とかもないし
人形A
退屈で死にそう
人形B
あの子、元気かな?
人形A
あの子?
人形B
この間、廃墟に来てた人間の子ども
人形A
そういえば、いたな
人形B
ほかの人間の子どもと、一緒にいたよね
人形B
あの子、名前なんて言ったっけ?
人形A
たしか、ミコトって名前だった
人形B
そうそう、ミコト──
人形A
おれたちを見ても、全然驚かなかったよな
人形A
ほかの人間の子どもは、驚いてたけど
人形B
あの子は、特異体質の子だからね
人形B
そういうの、慣れていたのかも
人形A
人形B
どうしたの?
人形A
いや、ミコトのそばにいた
人形A
“死神“のことを、思い出して──
人形B
“死神“って、黒い服──パーカーって言うんだっけ──を着て
人形B
前髪で右目を隠してた……?
人形A
うん、そいつだ
人形A
ミコトも、とんでもないのに
人形A
魅入られたもんだ
人形B
そんなに、とんでもなかったの?
人形A
……ミコトが、悪霊に襲われる直前──
人形A
あの“死神“はなんの戸惑いもなく、悪霊を狩って消滅させたんだ
人形B
消滅?
人形A
消滅したが最後──
人形A
二度と生まれ変わることが、できないって──
人形B
…………
人形A
ミコトはあまり、よくわかってなかったみたいだった
人形B
子どもだからね、それでいいんだよ
人形A
だな、わかってたら
人形A
自分を責めてただろうな
人形A
優しいやつだから
人形B
また、会えるかな?
人形A
きっと、そのうちにな──
人形A
それより、なんだか眠くなってきた
人形B
ぼくも、眠くなってきたよ
人形A
寝るか?
人形B
うん
人形B
おやすみ
人形A
……おやすみ