拓也
彼女は珍しく真面目な顔をしているなと思ったらこちらを振り向きニッコリと笑いこう言った。
美香
確かに僕はいつも無表情だ。
いつも周りのみんなからはクールだの人間じゃないなどと言われる。
僕は不思議に思った。
何故僕は笑えないのだろう。
何故僕は悲しまないのだろう。
何故僕は怒らないのだろう。
久々に感情をあらわにした僕は呟いた。
拓也
と。
彼女は僕の呟きが聞こえたのかムッとした顔になって
美香
と言った。
彼女と付き合ってから一年ぶりに地元の海に行ったものの僕は海を横目で見て通り過ぎる人間だから彼女は呆れて一人で海を眺めていた。
美香
なんて彼女は爽やかで美しい顔をしているのだろう。
こんな素敵な女性が僕なんかの彼女でいいのだろうか。
つくづく自分が嫌になった。
せめて笑顔が自然に作れれば少しは彼氏として堂々とできるのに。
僕はふとそう思い口角をあげた。
美香
と彼女はこちらを見て笑いだした。
変顔じゃないんだけどな。
と僕は思いつつも口には出さないことにした。
彼女を僕といる時に少しでも幸せにしてあげたい。
彼女は親に暴力を振るわれていた。
いつも僕に色々なことを話してくれて、笑顔が絶えない彼女が親に暴力を振るわれているなんて。
可哀想だ。
僕は一年前に初めてそう思った。
可哀想?
可哀想ってなんだろう。
よく分からないな。
やはり僕は変わった人間なのだろうか。
彼女の姉が親から引き離し家で一緒に暮らしているらしい。
僕なんて適当に生きている人間だ。
美香とは格が違いすぎる。
いつからだろう。こんなに感情が薄れて適当になったのは。
…もういいや。
こんな難しいことは考えたくない。
今後は彼女を幸せにする事だけを考えよう。
終
コメント
7件
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