朝
先輩
朝
ここ、テーピングしましょうか?
バレー部先輩
お、助かるー!
バレー部先輩
ありがとな、霧矢ちゃん!
放課後の体育館
部活前、朝が他の男子部員の足にテーピングをしているのを、影山は少し離れた場所から見ていた
影山飛雄
……
笑ってる
あんなふうに
誰にでも、あんなふうに笑うんだろうか
自分にだけ向けられてた気がした笑顔が、他の誰かにも向けられているのが、なんとなく落ち着かなかった
朝
影山くんどうしたの?
朝
今日はなんか静かだね
影山飛雄
……別に
朝
そっか
朝
でも、いつもよりパスが速い気がする
朝
みんなびっくりしてたよ?
影山飛雄
……あいつ、怪我したのか
朝
え?
朝
あ、うん
朝
昨日ちょっと足ひねっちゃって
朝
だから今日は私が__ __
影山飛雄
……そっか
その返事の声が、 どこか刺さるように硬かった
その日の練習後
朝
影山くん、なんか怒ってる?
影山飛雄
怒ってねぇ
朝
でも、今日は全然目合わせてくれなかった
影山飛雄
……
朝が心配そうに見上げる
その視線に、影山は耐えられなくなって思わず口を開いた
影山飛雄
……お前、あいつに優しすぎじゃね?
朝
え?
影山飛雄
いや、別に……
影山飛雄
ダメとかじゃないけど……
影山飛雄
なんか、気になるっつーか……
朝
……それってもしかして……
嫉妬?
嫉妬?
影山飛雄
ち、ちげーしっ!!
目を見開いて真っ赤になる影山に、 朝は思わずクスッと笑った
朝
そっか
朝
じゃあ私、影山くんに一番優しくするように頑張ろっかな
影山飛雄
なっ……!
影山飛雄
お、お前、またそうやって……!
朝
ふふ、照れてる
影山飛雄
照れてねぇ!!
だけど__ __今度は少し、目を逸らさずに彼女の方を見れた気がした