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「っと、これで、OK、かな。」 「わぁ…。」 フクロウはフラミンゴに髪飾りをつけてもらっていた。 けっかけはフラミンゴがフクロウの誕生日に何か送りたいな、と考えたこと。いろいろなものを見て、考えたけれど、やっぱり自分の得意な分野で勝負しようかな、と思い、アクセサリーに決めた。 フラミンゴの誕生花の髪飾り。フラミンゴの誕生日、7月14日の誕生花はカワラナデシコで、西洋名はフリジットピンク。 なぜフクロウの誕生花でないのかと言われれば言葉に詰まってしまうだろう。 フラミンゴが用意したのは赤色のカワラナデシコの髪飾り。 花言葉は燃えるような愛。 _____________そう、フラミンゴは、フクロウに恋をしている。 自分の色をつけてほしいな、とも思ったけど、それはあからさますぎるな、と思ったし、なによりピンクのカワラナデシコの花言葉は純粋な愛。 ワタシはそんな綺麗な恋はしていない。むしろどろどろで、汚くて、アナタの唯一の親友って立場に、この気持ちを隠して居座っている。常に、心のどこかに罪悪感があった。フクロウに、本心を伝えずに隠している、罪悪感。 ピンクの花言葉は、とてもワタシには似合わない。ちなみに候補として、白もあったのだが、それはすぐに却下した。白の花言葉は才能。 一見褒めているように聞こえるけど、フクロウの努力を否定しているようで、嫌だった。 だから、赤にした。 綺麗な恋ではないけれど。 ワタシは燃えるように、誰にも渡したくないくらいに、恋をしている。 だから、赤にした。 ただ、魔獣が入り浸っているこのご時世。アクセサリーショップなどあるわけがなく。 プレゼント用に用意したアクセサリーはフラミンゴの手作りとなっている。 喜んでもらえるのか、一抹の不安はあるがその一方でわくわくもしていた。_____フクロウに喜んでもらえるといいな、気に入ってくれるかな。これをつけたフクロウは、きっと可愛いんだろうな。 そして迎えたフクロウの誕生日。 一刻も早く渡したい気持ちもあったけど、あいにく朝早くから任務が入っている。それよりも早く起きて渡すのは迷惑だろう。そう考え、任務が終わった後、人気のない廊下で渡そうときめた。 今日は一日、ずっとソワソワしていたようで、カラスからは 『フラミンゴ、何かあったのか?だいぶソワソワしているぞ。』 と、お小言をもらってしまった。 でも、許してほしい。好きな人に、プレゼントを渡すのだ。ドキドキしないはずがない。 やがて任務も終わり、夜ご飯の前にそっと、フクロウをロビーから連れ出した。 「え、っと、フラミンゴ?どうしたの、こんなところまで連れてきて…。」 「んーとね、フクロウに渡したいモノがあって…。」 ポケットから、大事に、壊さないように、そっと、ソレを取り出す。 「はい、フクロウ、お誕生日、おめでとう。」 「えっ…ありがとう、フラミンゴ。 えへへ、嬉しいな…。」 はじめこそ驚いた表情をしていたフクロウだったが、すぐに歓喜へと変わり、顔が綻ぶ。 「その、実は、私も、フラミンゴに、プレゼントがあって…受け取ってくれる?」 「もちろん!でも、なんで?今日はフクロウの誕生日だよね?」 「うん…まぁ、それは朝に祝ってもらうまで、忘れたたんだけど…フラミンゴに、いつもお世話になってるから、お礼がしたくて…。」 フクロウもフラミンゴにお世話になっているから何かお礼がしたいな、と思い、プレゼントを用意していた。 なにがいいかな、と長らく悩み、いろいろな人に相談して、考えて。おしゃれが好きなフラミンゴのためにアクセサリーをプレゼントすることに決めた。 「~~~~~~~っ、」 …なんですか、この可愛い生き物。 嬉しい。その一言に尽きる。 お世話になってるのはワタシのほうなのに。わざわざプレゼントまで用意してくれるなんて…もっと、好きが溢れちゃうよ… 「はい、フラミンゴ。いつも、ありがとう。」 「こちらこそありがとう、フクロウ。」 フクロウからプレゼントをもらう。 「開けてみてもいい?」 「いいよ、私も開けるね。」 お互いにワクワクしながらプレゼントを開ける。破かないように、丁寧に,丁寧に。 「…わぁ…。」 先に声を上げたのはフクロウ。袋の中から出てきた、きらきらしたものを見つけて、笑顔になる。 「花の髪飾りだ…キラキラしてて綺麗。」 「でしょ?…あっ、フクロウのプレゼントも出てきた。これって…イヤリング?」 「うん。フラミンゴはおしゃれが好きでしょ?だから…イヤリングなら使えるかなって。」 「とっても嬉しい!ありがとう、フクロウ!」 「それは私のほうだよ。ありがとう、フクロウ。」 あ互いに笑顔になる。相手への愛のこもった、素敵で不思議な笑顔。 「あ、そうだ!フクロウに髪飾り、つけてあげる!」 「え、いいの?」 「もちろん!まかせて!」 「お願い、します。」 フクロウがフードを脱ぎ、フラミンゴのそばによる。 一束の髪を掬い、ぱちん、と音を立てて髪飾りをつける。 「フラミンゴ、私もフラミンゴにイヤリング、つけたい。…だめ、かな?」 小首を傾げて聞いてくるフクロウ。…破壊力、やばい。尊死しそう。 「いい、よ。お願い。」 ワタシのほうが身長が____具体的に言えば20センチ高いのでフクロウでも届くように、しゃがんで視線を合わせる。じっと、フクロウを見つめる。 「ふ、フラミンゴ…恥ずかしいから…目、閉じてて…。」 「わかった。」 フクロウのお願い通り、目を閉じる。フクロウを見れないのは残念だけど、フクロウにイヤリングをつけてもらうためだし、これくらい… 「ん、と…これ、意外と難しい…。」 耳がさわさわする。落ち着かない。 それに、フクロウの吐息が顔にかかって…だんだん体がほてってくる。 ぱちっ、とイヤリングの止まる音がしてようやくフクロウの顔が離れていく感じがする_____と思ったら。 「わわっ!」 「フクロウ、どうし______んっ。」 フクロウの小さな悲鳴が聞こえ、咄嗟に目を開けると、フクロウがワタシのほうに倒れ込んできている。 そして、それを止める術などなく、ただ受け止めるしかなかった。…ワタシの、唇で。 ふに、と。柔らかい感触。すべすべで、あったかくて。とても、甘かった。 互いに目を見開き、頬を染める。 フラミンゴは怒涛の展開についていけず、固まっていたが、慌ててフクロウが顔を逸らしたことで、その時間は終わりを告げた。 「フ、フフフフラミンゴ、え、と、その、ご、ごめん、!いいわけ、にしか、ならないとおも、けど、えっと、あ」 「フクロウ、落ち着いて。」 そっと、頭を撫でると、フクロウは落ち着いたようで、金魚のようにぱくぱくさせていた口を閉じた。 (…慌ててるフクロウも可愛かったな。) なんてあらぬことを考えていると、そのままぎゅーっと抱きしめてくる。 ワタシもそれをうけいれる。 …最近は甘えてこなかったから、珍しいな。フラミンゴは過去に思いを馳せる。 ちっちゃい頃はフクロウが泣いちゃったときとか、よくワタシが慰めていた。それでか、寂しい時とか、辛い時、時々甘えてくるようになった。 今甘えてきてるのは多分、羞恥心から逃れるためだろう。耳まで真っ赤だし。 「ワタシは平気だよ。フクロウも怪我は無い?」 「うん、フラミンゴが受け止めてくれたから…。」 と、そこでまたあの感触____キスの感触を思い出したのか、頬をかぁっと真っ赤に染める。 (…そんなされると…こっちまで、恥ずかしくなっちゃうじゃん。 それに…すり、と擦り寄ってくるフクロウ。もう、可愛すぎて、意識飛びそう…) 「フク、ロウ…。……××。」 (この空気の甘さで、頭がおかしくなっているのかもしれない。 今、おかしなことを、口走った気が…) 「え…?」 気のせいじゃなかった。ガッツリ言ってた。なんならフクロウに聞かれてた。 「あ、え、と、いまの、は、」 「ふら、みんご。」 フクロウが顔を上げて、フラミンゴを見上げる。 「今の、ほんとう…?」 フラミンゴはしばらく言い淀んでいたが、やがて覚悟を決めたように唇をぎゅっと結ぶ。 「う、ん。ほんと、だよ。」 「どっちの、好き、なの、?」 「キスしたい、ほうの好き。」 テンパっていたものの、短時間で落ち着きを取り戻し、向かい合う。 「ワタシは、フクロウが、好き、だよ。」 言い切った。 ずっと隠していくつもりだった想い。 一生伝えるつもりのなかった思い。 それを、十年間貯めに貯めた想いを、はっきりと口にした。 ______フクロウ、はっきりフってくれるかな。優しいから戸惑っちゃうかもしれない。この関係も、大事な、唯一の親友って関係も、変わっちゃうのかな…? フラれたら、ワタシ、泣かないで我慢できるかなぁ。 「フラミンゴ、私も、フラミンゴのこと、好き。」 「え…?」 その言葉はフラミンゴにとって予想外すぎるものだった。 「い、つも優しくしてくれるところ、とか、こんな、だめだめな、私でも仲良くしてくれるところ、とか、そばにいてくれるところとか、ぜんぶ、好き…」 フクロウはそこまで言って、恥ずかしくなったのか、フラミンゴの胸に顔を埋めて黙ってしまった。 一方のフラミンゴはいっぺんに一生懸命好きを伝えられて、擦り寄られてオーバーヒートを起こしそうなくらい熱くなっていた。 両者無言の時間が過ぎていく。 お互いに話さないけれど不思議と居心地が悪い、ということもなく、穏やかな時間が流れる。 数分か、はたまた数十秒かたち、顔の赤みは幾分かマシになったところでフラミンゴとフクロウは向かい合った。 「フクロウ、もう一回言うね。…ワタシ、フクロウが好き。こんなワタシでもよければ、付き合って欲しい、な。」 「うん、私も、フラミンゴのこと、大好きだから、その、よろしく、ね…?」 裾をぎゅ、と掴みながらなんとか返事をする。 幸せそうに笑い、ぎゅー、と抱きしめ合う。 ___________ 「わ、…ふたりとも、笑ってる。」 「よかった、のか…?こんなところでイチャイチャしてることについては色々言いたいところだが。」 「丸くおさまったようでよかったです。最近、どこかギクシャクしているというか、落ち着きがなかったので。解決したようで、安心です。」 カラスたち4人は夕食ができたことをフラミンゴとフクロウに伝えにきていた。見つけたはいいものの、ふたりの様子が気になり、隅から眺めていたのだ。…結構初めの方から。 「幸せそう…よかったぁ。」 「あ、見てください、みなさん。」 「わぁ、キス、してる…!」 「げ、」 当の2人は四人が見て顔をあかくしたりしていることを知るはずもなく、ついにはキスにまで手を出した。 触れ合うような、啄むようなキスを繰り返していたが、それはどんどん深くなっていく。 「フクロウがリードしてるな…。意外だ。普段の2人ならフラミンゴがリードしそうな雰囲気なのにな。」 「ギャップ、ってやつかな…?」 「僕たち、何を見せられてるんだろう…?」 この甘い空気のなか、ほのぼのとした雰囲気を醸し出す2名と淡々と感想を言う1名を傍目に、出て行くタイミングを見失い途方に暮れる1名。 結局、4人は声をかけることなく、静かに、バレないようにその場をさった。 …延々といちゃいちゃし続けるふたりを残して。
猫
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↑意味不明