記憶は、
初めて叔父と出会ったところから甦る。
己の父親ととてもよく似た顔の叔父。
だが、
その笑顔をいつも怖いと思っていた。
目が怖い。
だから、
叔父も怖かった。
とても優しくて、
何でも買ってくれたけど
叔父の顔は
いつも怖くて見れなかった。
そのことを母親に言うと、
とても困った顔をしたから
言わないようにしたけど
叔父の笑顔に慣れることはなかった。
……
あの時、
自分を車の中に押し込んだ時も
父親に息子の居場所は知らないと嘘を吐いて
電話を切った時も
自分を蹴ったり殴ったりした時も
叔父は笑っていて、
怖かった。
誰か助けてって…
ここから出してって…
何度も
何度も
思って
そして、
サンタにお願いをした。
サンタは
どんな願いでも叶えてくれる存在。
そんな話しを
母親から聞いていたから。
だけれど、
サンタは現れなかった。
薄れゆく意識の中で、
叔父と叔母が
幸せそうに笑っていた。
いつもの怖い笑顔ではない、
心底嬉しそうな笑顔だった。
いいなぁ、
自分もあんな風に笑いたいなぁ…
”幸せになりたいなぁ…”
そう思って
意識は途切れた。
・
・
サタン
太郎
サタン
サタン
太郎
サタン
太郎
太郎は握っていた手を振り切った。
そして、逃げるようにサタンの背後に回る。
太郎
太郎
もう一方の手を伸ばそうとしたが、
その手もサタンが掴む。
ボギッ!
両腕の骨が握りつぶされる。
サタン
サタン
そのまま力を込めると、
手首から先が千切れて落ちた。
時塚英司が怒鳴ると、
体が見る見る膨れ上がり、
手足が異常に短い巨漢となった。
否、
その顔は二つあり
女性と思われる顔は泣いていた。
サタン
サタンは呆れたように呟く。
雄叫びを上げ、
圧し掛かってこようとした時塚。
しかし、
その動きは巨体相応の
非常にゆっくりとしたものだった。
サタンは重いため息一つ吐いて拳を握りしめ、
ブヨブヨとした腹部に一撃、入れた。
ドンッ!
鈍い音と共に
時塚の膨れ上がった欲望という名の肉が揺れ、
物凄い勢いで吹き飛んでいった。
太郎
暗闇の中で何かにぶつかる音がして、
真っ暗だった空間がひび割れ、
砕け散る。
・
・
結界をぶち破った時塚英司の魂は
そのまま空の彼方へ飛んで行った。
ロマリエル
太郎
ロマリエル
太郎
ロマリエル
サタン
ロマリエル
サタン
太郎
ロマリエル
ロマリエル
太郎
サタン
サタン
太郎
ロマリエル
太郎
・
・
地面の上を転がる欲の塊。
ベザル
ベザル
ベザル
欲の塊は起き上がろうとしたが、
ブルブルと震えるだけで起き上がることは出来なかった。
ベザル
そう言うとベザルはその身を
一回りも二回りも大きくさせた。
その燃えるような真っ赤な瞳に
怯える塊が映る。
ベザル
ベザル
ベザルはその喉元に噛み付き
容赦なく引き千切った。
・
・
・
太郎
太郎
サタン
太郎
サタン
サタン
サタン
太郎
太郎
太郎は首を横に振る。
太郎
太郎
太郎
太郎
太郎
太郎
太郎
太郎
太郎は声を上げて泣いた。
サタンは
そんな太郎を抱き締めてやること出来なかった。
ヴィアルテ
ヴィアルテ
ロマリエル
ヴィアルテ
太郎
ベザル
ベザル
ベザル
ベザル
ベザル
サタン
サタン
太郎
ロマリエル
ロマリエル
ヴィアルテ
太郎
太郎
サタン
サタンは大きく頷く。
太郎
太郎
サタン
サタン
太郎
ベザル
ベザル
太郎
太郎
サタン
太郎
サタン
サタンが使い魔三人を見るが、
三人とも首を横に振る。
サタン
サタン
サタンの言葉に少しだけ
太郎は嬉しそうな顔をして見せた。
・
・
コメント
6件
( ;∀;)✨✨