捨てなくていいものばかり この手から零してしまう。
それが、何のための謝罪なのかは 分からなかった。 とってつけたような「ごめんなさい」を一体彼はどのように受け取ったのだろう。ただ、一瞬だけ悔し気な顔をして、手の中にあった鍵を惜しむように握った後 それをダイニングテーブルにそっと置いた。 それを彼に渡した時確かに僕達は幸せだった。
Urata
何が楽しいのか、スマホを見ながら うらたさんは笑った
カタカタとキーボードを打っていた 手を止めてそちらを見れば、スマホを向けてくる。その画面に並ぶのは 「そらるさん結婚説濃厚」 「そらるさん結婚まじ!?!?」
…眉を寄せた僕にうらたさんが呆れたように
Urata
と声を漏らした。
Urata
しょうがねぇじゃん。
Mfmf
子供みたいにそっぽ向いて 再び作業に戻る。 事実無根の結婚説を見るのはこれが 初めてではない。
そらるさん本人が「俺は何回結婚すればいいんだよw」とネタにするくらい事ある事にそういう噂が立つ それが不自然ではないような年齢になったことくらい自覚している。 けれど、仕方の無いことだと割り切れるほど大人ではなかった。
Urata
あんなに愛されてて
Mfmf
そらるさんに愛されているという 実感はあった。 それでもネットの評価で今の立場を手に入れたと言っても過言ではない自分たちだ。いつか、そんな顔も知らぬ人々の勝手な想像の通り そらるさんが自分ではない誰かと結婚してしまうような気がしてそれが酷く恐ろしい
同性の自分たちには確約された未来がない。そらるさんと自分を結ぶものは今にも掻き消えそうな程脆い線にしかすぎない。結婚説が流れるたびに、行き場の無い不安は大きくなっていった。
Urata
そらるさんに最近会えてないのか?
Mfmf
アルバムの製作もあるし
自分が面倒で重たいことも分かってる。こうして気分が落ちるたびに、 持ち前の面倒見の良さを発揮して 家に来てくれるうらたさんには 感謝しかない
…そういえば製作スタッフに 女の人居るって言ってたな…。 どろりと暗い想像は、1度始まると止まらない。その女の人がものすごく綺麗で性格のいい人だったらどうしよう。
ううん、女の人だけじゃなくて 男の人だって恋愛対象になるかもしれない。インフォさんだってそらるさんの昔からの友達でーーー
Urata
うらたさんの声で薄い唇をちぎりと 噛んでいたことに気づく。 慌ててなんでもないと言うけれど 見透かしたような目に射抜かれた。
Urata
ダメだろ
Mfmf
Mfmf
怖くて堪らないんです。
Urata
Mfmf
失うことが震えるくらい
怖くなって、
うらたさんの方が泣きそうになる 自分のもののように心配してくれる彼はとても優しい。 その無条件さがそらるさんと重なってまたひとつ寂しくなった。
そらるさんから久しぶりに 連絡が来た。飯でもどう?って 了承のスタンプを送る。 ささくさとシャワーを浴びて、 お気に入りの服を着て、 薄らメイクをしたりして
行先はきっといつものラーメン屋 色気も何も無い場所だけど 好きな人には可愛いって思われたいでしょ?
Mfmf
Srr
Mfmf
終わったんです!
なんてね、本当はちょっと 急いで納期の追った仕事を終わらせた。
Srr
Mfmf
Srr
そうですけど…と口もった 僕に背を向けてそらるさんが歩き出す。
Srr
来てくれてありがと
どんな不安もその一言で 取り払ってくれる。そらるさんへの好きがまたひとつ深くなっていく
Srr
Mfmf
Srr
ほら、そらるさんを信じて、 愛し合うことはこんなにも簡単だ。
あれから、 何日か立ったある日 今僕は恋人であるそらるさんの家に来ている。
Mfmf
書類や服を片付けていく。 2人で買った服、誕生日にあげた アクセサリー
ーーーーカタン
何かを落としてしまったようだ。 拾い上げれば黒くて小さな箱
Mfmf
それとも、よっぽど お気に入りの指輪なのかも。
Mfmf
そらるさんの綺麗な指に 嵌るのが想像出来る。
Mfmf
小さなそれはよく見なければ分からないけど…じっと目を凝らした時だった
Srr
Mfmf
そらるさんがドアを開けてリビングに入ってくるのと同時に指輪を手から落とした。
Soraru×urata
…見なきゃいいものはどこにだって あるものだ。
Srr
もうかなり前だけど。
放心したようになっている 僕に言った。
Srr
Mfmf
Srr
なんとなく捨てづらくてさ
ほんと、タイミング悪い
めんどくさそうに言ったそらるさんにカチンとくる 元恋人のペアリングなんて 処分しておくべきじゃないのか? それを目の着くところにおくなんて…ーーーーたまたま?
Mfmf
Srr
Mfmf
当てつけみたいにこんなことしたんじゃないんですか!?
Srr
落ち着けって。
早く別れてしまえって うらたさんは思っていたのかもしれない。知らぬ間に涙が零れた。
Srr
Mfmf
Srr
それくらい、俺にとってはどうでもいい過去だよ。
Mfmf
言っても良かったでしょ!?
Srr
俺が好きなのはお前だって!!
滅多に大声を出さないそらるさんが 珍しく声を上げている。
Srr
Mfmf
Srr
俺は正直お前にそこまで言われるとは思わなかったよ。
Mfmf
Srr
Mfmf
そらるさんが目を見開いた
Srr
Mfmf
Srr
指輪ごときで?
Mfmf
Srr
そらるさんが手に持っていた ケースを床に叩きつける
Mfmf
いれば幸せだって思ったんです
ずっと一緒に居られるって信じてたんです。
Srr
Mfmf
苦しい…
Srr
これは返す、
いつでも自由に彼が僕の部屋に入れるという証 それを彼に渡した時確かに僕達は幸せだったーーーーーーはずなんだよ。
Urata
目を丸くしてうらたさんが 固まった
Urata
Mfmf
Urata
泳ぐ瞳は何か 「心当たり」があると示していて
Mfmf
Urata
Mfmf
そらるさんと付き合っていて不安だって僕が弱ってるのどう思いました?
Urata
Mfmf
…僕達親友でしょう?
Urata
本気でお前とそらるさんが
上手くいくようにって!!
Mfmf
「指輪」
Urata
…言葉を失った その反応だけでわかるよ あぁそう、お互いにまだ 大切に持っているということですか
Mfmf
Urata
俺たちはもう別れて
Mfmf
そらるさんの事 あぁ、それとも
ーーもう僕に隠れて 復縁してたりするんじゃないですか?
泣きそうだったうらたさんの顔が 一変した。
Urata
Mfmf
そうだとしても僕はもう
そらるさんの恋人じゃないですから
どうぞ明日からは、いいえ、今この瞬間からはこそこそせず堂々と関係を持っていいんですよ?
Urata
俺はもう遠慮しない。
Urata
Mfmf
あぁ、 僕は何一つ大切にできない 臆病者だ。
Urata
これ!
Srr
Urata
ここ、どうやるの?
Srr
耳を塞ぎたくなる。 ーーーあぁ、昔はこういう風にしてたんだ。
Sakata
あの二人
Mfmf
Mfmf
Sakata
Senra
Sakata
Senra
気悪くせんでな
センラさんは坂田の口から 手を離した。
Sakata
あんなに仲良かったやん
Mfmf
僕が振ったの
Sakata
Mfmf
それにそらるさんだってもう
「次」が居るみたいだし
Sakata
そんなわけないやんか!
だってうらさんは…!
Senra
言ったらあかん!
Sakata
Mfmf
そんな事ないって
Senra
俺らからはなんも言えんよ
Mfmf
センラさん。
センラさんの手を掴む
Mfmf
Senra
Mfmf
何が正しいのか分からないんです
Senra
Mfmf
Senra
坂田も来るやろ?
Sakata
Senra
話を聞いても全部解決するわけやないんよどうするかはまふくん次第やから。
Mfmf
Sakata
Senra
初めてやね
Mfmf
Senra
聞いてもええ?
Mfmf
さっきまでの事を全部話した。
Senra
まふくんと付き合い始める時に
絶対に隠そうってうらたんから言ったんよ
Mfmf
Senra
それともう1つ理由があるんよ
Senra
Senra
そいつといる為だったらなんだってするんだ。うらたくんのことは心から愛してる。けれど、ここでうらたくんを最優先にして生きられない。ここで別れて欲しい」
Mfmf
Senra
Senra
何を捨てでも俺はあいつを愛してあげたい」って
Sakata
Mfmf
Urata
どうしたんだよこんな夜中に
Mfmf
Urata
Mfmf
酷いことを言いました。
Urata
顔上げてよ
泣きそうな声
Mfmf
何も知らなかった。
ほんとにごめんなさい!
Urata
俺はほんとに気にしてないから
Mfmf
そらるさんにアプローチしていいって言いました。でも、あの言葉を前言撤回させてください。
Urata
Mfmf
Mfmf
「そらるさんを僕にください!」
Urata
あの日からそらるさんは
まふの物だよ
Urata
そらるさんとよりを戻したいとか思ってないから!
Urata
誠実で不器用で…………いい男だよ
Urata
早く行ってこーい!!
Mfmf
伝えたいことがあってきました。
Mfmf
そう言いました。そらるさんと居るのが苦しくって例え終わる日が来るとしても、僕は、
Srr
Srr
そんな気持ちで俺はうらたくんと
別れてない。
Mfmf
Srr
ーーー何を言われたって お前を離す気なんてないから。
Mfmf
Srr
Srr
まふまふ。
少し歪な僕達の蝶々結び 僕たちにはそれが一番ぴったりかもしれないなぁ…なんて