短編長編集、生存確認部屋

ぐしゃぐしゃっと髪を掻く

あの女なら吸わせてくれると思ってたんだけど

そう世の中甘くないってか…？w

空に向けて小さくため息を吐く 誰宛でもない吐息は人に知られることなく朽ちていく

頭にポツ、と水滴が当たったかと思うと、一気に水が滴ってくる 幸い、路地裏はあまり雨が当たらないようだ

まぁ当たらないと言っても 路地裏以外の場所に比べてなので 肩も服も帽子も少しずつ水に侵食されてゆく

吸血鬼なので飛ぶことは出来るが 羽が濡れて思うように飛べないと 予想する

つまり詰み

人間界に出てまだ5年 吸血鬼で言ったらエリートに属する 方なのかもしれないが 短いことに変わりはない

どこかに泊まらないと 自分で言うのもあれだが 俺は顔がかなり良い方だと自覚している

適当に女捕まえよう んで泊めてもらうか

ビショビショに濡れた服をまといながら彼女に話しかける

少々上目遣いをしながら述べる これで堕ちなかったやつはいない

いやぁ良かった…

…ん？

今アイツ、「俺」って言った？