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学校へと潜入したが、渡り廊下でフルフェイスヘルメットを被った人物達に挟み撃ちにされてしまったハカセ父達。

時間はその直後までさかのぼる。

ハカセ父

まるで待ち伏せされていたみたいですね。

ヨウタ父

挟み撃ちですか……姑息な真似ではありますが、銃器を持っている状態では、あまりよろしい布陣ではありませんね!

ヨウタの父が廊下を強く蹴り、フルフェイスAとの間合を一気に詰める。

まさか、銃口を向けられたままの状態なのに、間合を詰められるとは思っていなかったのであろう。

とっさに猟銃を構えようとするが、しかし、その時点でヨウタの父の回し蹴りが、フルフェイスAを捉えていた。

ヨウタ父

挟み撃ちってのは、文字通り敵を双方から挟むわけですが、銃撃というのはいささかやりにくい。

ヨウタ父

下手をすると、向こう側にいる相手に弾が当たってしまうかもしれない。
猟銃に使われるような散弾ならなおさらです。

ヨウタ父

だから、こうして隙ができるんですよね。

ヨウタ父が言い終わると同時に、フルフェイスAは床に崩れ落ちていた。

フルフェイスB

くそっ!

フルフェイスBが猟銃を構えるが、しかしヨウタ父のほうが速かった。

フルフェイスBが引き金を絞るよりも速く、フルフェイスBの背後に回り込むと、トンと首筋に手刀を叩き込んだ。

よく漫画などであるが、本当に気絶をするものなのだろうか。

長年抱いてきたハカセ父の疑問は、今目の前で解決した。

どうやら、本当らしい。

ヨウタ父

ふん、他愛もない。

崩れ落ちるフルフェイスBの姿に、ヨウタの父は吐き捨てるかのように言った。

ハカセ父

……助かりました。一時はどうなるかと思いましたよ。

ヨウタ父

それにしても妙ですねぇ。

ヨウタ父

こいつら、まるで私達がダストシュート経由で体育館に来ることを知っていたみたいな動きをしましたね。

ハカセ父

確かに、狙って私達を待ち伏せしていたような気がしなくはないです。

ヨウタ父

さて、それでこいつはどうしますか?

ヨウタ父

とりあえず武器を奪って無力化しておきますか。

ヨウタ父

……あ、いいことを思いつきましたよ。

ヨウタ父

確か、体育館には更衣室があったはず……。

ヨウタの父はそう言うと、フルフェイスヘルメットを担ぎ上げて歩き出した。

ハカセ父

あっ、もう1人のほうはどうします?

ヨウタ父

とりあえず一緒に更衣室まで連れて行きましょう。

ヨウタ父

背負えますか?

ハカセ父

あぁ、はい。
こちらのほうが体も華奢のようですし、大丈夫だと思います。

ハカセ父は気を失っているであろうフルフェイスBを担ぎ上げる。

ハカセ父

(思ったよりも軽い。体型からして女性か?)

そんなことを考えながら、ハカセ父はヨウタ父の後に続いた。

更衣室には独特の匂いが漂っている。

汗の匂いというよりも、それをごまかすための制汗スプレーの匂いが強い。

ハカセ父

さて、どうするつもりですか?

ハカセ父の問いかけに対して、ヨウタの父はフルフェイスAのヘルメットを脱がす。

ヨウタ父

おっと、この人は……ご存知だったりします?

ハカセ父

いえ、少なくとも私は初対面の方ですね。

フルフェイスヘルメットの下から出てきた顔は、50代くらいの男性のものだった。

ヨウタ父

んー、私はどこかで見たことがあるような気がするんですけどね。いや、この人誰だったかなぁ。

ヨウタの父は見覚えがあるようだが、しかし思い出せないでいるようだ。

ヨウタ父

まぁ、そのうち思い出すことでしょう。

ヨウタの父は考えるのをやめ、改めてフルフェイスAからライダースーツ一式を剥ぎ取る。

トランクスと肌着姿の中年は、いまだに目を覚さない。

ヨウタ父

うん、やっぱり思った通り。私にぴったりだ。

なんの説明もなしに、剥ぎ取ったライダースーツを身につけるヨウタの父。

フルフェイスA

どうです?
似合うでしょう?

フルフェイスA

おぉ、これ喋るだけで合成音声が出るのか!
なるほど、これならうまい具合にごまかせそうだ。

あげく、フルフェイスまで被ってしまう。

その姿を見て、彼がやろうとしていることは、おおむね理解できた。

ハカセ父

その格好で敵に紛れ込むおつもりですか?

フルフェイスA

えぇ、その通りです。
あなたもどうです?
もう一着ありますし。

ハカセ父

いえ、やめておきます。
まず第一にリスクが高い。

ハカセ父

相手がどれだけの人数なのか分からないんですよ?

ハカセ父

それに、正体がばれたら、なにをされるか分かりません。

ハカセ父

くわえて、こちらの方はおそらく女性です。

ハカセ父

さすがに体格で中身が違うことに気づかれてしまいますよ。

フルフェイスA

そうですか?
中々ナイスアイディアだと思うんですが。

ハカセ父

いえ、他の手段を模索したほうがいいでしょう。

ハカセ父

おっと、その前に失礼。
ちょっと連絡をしたい方がいるんです。

フルフェイスA

おっ、グループメールですか?

ハカセ父

いえ、グループメールはリスクが高いようです。

ハカセ父

少なくとも信頼できそうな方に、直接のメールを入れます。

ハカセ父はスマートフォンを取り出した。

ハカセ父

直接連絡をする形になって申し訳ありません。

ハカセ父

ハカセの父です。

セイヤ母

あ、学校への潜入はどうなったのですか?
他の保護者の方も気にしておられたので、グループメールのほうに連絡したほうが……。

ハカセ父

いえ、そちらのほうはリスクが高いようなのです。

ハカセ父

実は先ほど、無事に体育館から中に潜入することができました。

ハカセ父

しかし、そこで私達は先生の仲間と思われる連中に、ピンポイントで待ち伏せをされたのです。

ハカセ父

なぜだと思います?

セイヤ母

……まさか、体育館から潜入することが相手にバレていた?

ハカセ父

その可能性は高いかと。

ハカセ父

少なくとも、たまたま居合わせたわけではないと思います。

ハカセ父

もちろん、相手が大勢いて、それぞれの持ち場がある可能性も考えられます。

ハカセ父

ただ、もし少数で動いているのだとしたら……。

セイヤ母

私達の動向を担任に伝えている人間がいる……ってことですか?

ハカセ父

はい、その通りです。

ハカセ父

グループメールに参加している保護者の中に、担任と内通している人間がいるかもしれません。

ハカセ父

ですから、こうして直接あなたにメールをしました。

セイヤ母

そうですか。
でもどうして?
私がその内通者ってこともありえるのに。

ハカセ父

あなたのPTAでの仕事ぶりは見させていただいたつもりです。

ハカセ父

みんなが嫌がることを率先して引き受け、周囲に気を遣わせまいと振る舞い、逆に気を遣って回る。

ハカセ父

そんな方が、こんな大それたことの片棒を担ぐとは思えません。

ハカセ父

というのは建前でして、息子の口からよくセイヤ君の話を聞きますのでね。

ハカセ父

息子と仲良くしてくれている子の親が内通者だとは、やっぱり思いたくないじゃないですか。

ハカセ父

やっぱり親って子どもが基準になるようですね。

ハカセ父

根拠としては非常に薄いですが。

セイヤ母

やっぱりそうなりますよね。
私は根拠が薄いとは思いません。
親の直感って意外と当たるものですし。

セイヤ母

それで、具体的に私はなにをすれば?

ハカセ父

グループメールのほうに、嘘の情報を流してもらいたいのです。

ハカセ父

あとですね、こちらの方に見覚えはありますか?

ハカセ父

私達を襲った連中のうちの1人なんですが。

ハカセ父

ちょっと今、写真を送りますね。

スマホのカメラで例の男を撮影しようとした時のことだった。

フルフェイスA

まずい、もう目を覚ましますよ!

ヨウタ父は、慌てた様子でひん剥いた男をロッカーの中に詰め込み、近くにあったモップをつっかえ棒にして、ロッカーが開かないようにする。

更衣室が狭いがゆえに実現できた力業だ。

フルフェイスA

窮屈でしょうが、これでしばらく身動きは取れないでしょう。

てっきり、見ぐるみを剥がした男が目を覚ましそうになったのだと思ったハカセ父であったが、どうやら違うらしい。

小さな唸り声のようなものと一緒に、フルフェイスBの体がぴくりと動く。

唸り声ですら、合成音声に変換されるのが気持ち悪い。

フルフェイスA

いいですか?
もうこの人が目を覚ましてしまいます。

フルフェイスA

とりあえず、その辺りで気を失ったふりでもして倒れておいてください。

フルフェイスA

あとは私がうまいことやりますから。

ハカセ父

え?
き、気を失ったふりですか?

フルフェイスA

えぇ、そうです。

フルフェイスA

さぁ、早く!

ヨウタの父が言う通り、確かにフルフェイスBは目を覚ましてしまいそうだった。

なにを考えているのか分からないが、とりあえず従ってみるハカセ父。

ロッカーに寄りかかるように座ると、うつむいてみた。

フルフェイスB

……ここは?

フルフェイスA

目が覚めたか。

フルフェイスB

あぁ、思い出した。
急にマッチョな男が後ろに回り込んできて………。

フルフェイスA

あぁ、あれは仕方がない。あれだけの筋肉の持ち主が相手だったんだ。
不覚をとるのも分かる。

フルフェイスB

それで、そのマッチョは?

フルフェイスA

こっちが軽く銃で脅したら、逃げて行ってしまったよ。

フルフェイスA

だが、その代わりにこいつを捕らえることはできた。

フルフェイスB

そう。
だったら、こいつを連れて一度教室に戻ろう。

フルフェイスBの言葉にヨウタの父は頷く。

フルフェイスA

おら、起きろ。
いつまで寝てるつもりだ?

そして、ハカセ父のことを何度か足で蹴ってきた。

ハカセ父

(いや、本気で蹴ってきてるじゃないですか。演技なら、もう少し演技らしく)

文句のひとつでもつけてやろうと思ったが、しかし喋ったら全てが台無しだ。

我慢して発言しないように務める。

ハカセ父

う、うーん。

そして、今しがた目を覚ましたような演技をする。

ハカセ父

(これ、ちゃんとニュアンスが伝わってるんだろうか)

フルフェイスA

やっと目を覚ましたか。

フルフェイスB

よし、行こう。

フルフェイスB

あまり教室を離れるのもよくないから。

フルフェイスA

あぁ、そうだな。

ヨウタの父は銃口をハカセ父へと向けてくる。

中身がヨウタの父であり、それが演技だと分かっていても、銃口を向けられるのはいい気分ではない。

フルフェイスA

立て。

ハカセ父は両手を挙げつつ立ち上がる。

フルフェイスA

歩け。行くぞ。

ハカセ父

(随分と悪役が板についてるじゃないですか……)

ハカセ父

(本人もノリノリなのが、嫌な予感しかしませんが)

こうして、形は変則的ながら、3年D組へ潜入を試みた父親達。

反撃……開始。

3年D組のクーデター

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