一応、フルフェイス達に捕まってしまった――という前提で教室までやってきたハカセ父。
そして、フルフェイスAになりすましたヨウタの父。
その異様なまでの光景に、言葉が出なかった。
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父は小さく息を吐き出し、自分を落ち着かせながら、しかし担任には気づかれないように周囲を見渡す。
おそらく、死んでしまっているであろう生徒。誰が誰だかさえ分からないが、その生徒のご両親には申し訳ない気持ちになった。
だが、やはり自分の息子が存命していることを知って、喜ばない父はいない。
安心して大きく吐息を落としたことさえ、不謹慎に思えた。
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
教室内では、さも勝ち誇ったかのように担任が喋っている。
とりあえず、一度ここから出ておきたい。
成り行きで連行される形になってしまったが、まだハカセ父にはやるべきことがあった。
場を動かすために、床に横たわった女子生徒に駆け寄ろうとする。
当たり前だが、担任に銃口を突きつけられてしまった。
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父は、血しぶきらしきものが飛んだ教室の後ろ側を見て推測した。
おそらく、あそこで何人かの生徒が殺害されている。
けれども、教室に遺体が転がっている様子はない。
つまり、殺した後に遺体を運んだと考えられる。
それがもし、フルフェイス達の仕事だとしたら、その時に隙が生じるのではないか。
ハカセ父の推測は全てが正解というわけではなかったが、ある程度の的を射たものになっていた。
案の定、担任はフルフェイス達に遺体を運ぶように指示を出す。
フルフェイスBはすぐに了解したが、フルフェイスの返事がワンテンポ遅れる。
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父の言葉は届きはしない。届きはしないが、内心でフルフェイスAにエールを送る。
その甲斐あってか、フルフェイスAはフルフェイスBと力を合わせ、遺体を外へと運び出すために、教室の外に出た。
ハカセ父
上着の下に仕込んだホルスターには、署から持ち出した拳銃が入っている。
しかし、担任の隙を伺っているうちに、フルフェイス達は戻ってきてしまった。
ハカセ父
ハカセ父は、改めて不利な状況に戻ってしまったがゆえに、次の手を打つ。
ハカセ父
ここでハカセは担任に向かって、保護者の代表として、亡くなった生徒を確認したい旨を担任に告げる。
その際、ちらりと、しかし確実にフルフェイスAのほうへと視線をやり、小さく頷いて見せた。
担任がハカセの父を単独で隣の教室にやったりはしないだろう。
必ず、フルフェイスのどちらかを監視につけるはず。
そこでヨウタの父が名乗り出てくれれば……。
ここからの脱出も容易となる。
ハカセ父
ハカセの願いが叶う。
推測通り、隣の教室を出たいと主張すると、担任は監視をつけようとした。
そこで間髪入れずにヨウタの父が自ら申し出てくれたのだ。
これで、教室を出ることになるのは味方だけとなる。
教室の外に出るなり、隣の教室に向かうふりをしながら、ハカセ父は声をひそめた。
ハカセ父
ハカセ父
フルフェイスA
ハカセ父
フルフェイスA
ハカセ父
フルフェイスA
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
フルフェイスA
ハカセ父
ハカセ父
ハカセ父
フルフェイスA
ハカセ父
フルフェイスA
ハカセ父
もはや2人の間に言葉は必要なかった。
我が子のために……ただ、それだけだった。
ハカセ父
ハカセ父はそう言うと、担任達に気づかれぬように、その場を離れるのであった。
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