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黒き輪廻と欠片の邂逅

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黒き輪廻と欠片の邂逅

19 - 第6話 リィンカーネーション(5)

2025年08月11日

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ルティの前に出る。

無造作に手をかざし、飛来する弾を弾き返す。

ナタカ

な!?

弾かれた魔力の礫がナタカを襲う。

傷口を押さえてこちらを見るその顔は、先刻とは違う、驚きの表情を浮かべていた。

???

この程度の力で魔王を名乗るとは、片腹痛い

声が、響いた。

言葉を発したのは自分の身体。

ただ、身体を操る意識は、違う何かのものだった。

ルティ

……シーク、よね?

ルティ

なに、やってるの?

ルティ

どうして!?

ルティの慌てた声が聞こえる。

身体はルティを無視して、足を踏み出す。

ナタカ

な、なんなの?

ナタカ

今になって本気とか、ずるくない? 

ナタカ

ねぇっ!

ナタカ

いいよ。

ナタカ

ボクも、本気で行くからさあっ!

ナタカの言葉に合わせ、空からワイバーンが降り立った。

予備の戦力として温存していたらしい。

???

無駄だ

無造作に腕を振るうと、漆黒の光が瞬いた。

一振りだった。

空から強襲したワイバーンの群れが、一瞬で蒸発した。

ナタカ

う、そ。

ナタカ

うそうそうそうそっ!

ナタカ

キミ、おかしいよ!

ナタカ

キミのキャラスペックで、こんなことできるわけない!

???

貴様らの尺度は、役に立たん。

???

魔物使いと死霊使いを理解した程度で魔王を騙るなど、愚かな

ナタカ

くっ!

ナタカ

〈闇の帳よ〉ダークネス!

それは、目くらましの魔法だった。

視界が闇に覆われるが、駆ける足音だけは聞こえていた。

???

〈地よ 応えろ〉スパイクグロウス!

短い悲鳴が聞こえ、鉄の匂いが鼻についた。

暗闇が消えるとそこには、奇妙なオブジェが生まれていた。

ナタカ

どうし、て。

ナタカ

ただの、スパイクグロウス、なのに

胴の中心に岩を刺し、赤い何かを流している、修道服を纏った何か。

ナタカ

こんなの、ちーと…………

それは力を失い、物言わぬ骸に成り果てた。

魔力の鳴動が止まる。

最悪の事態のひとつは、避けられた。

ただ、別の問題が、残っていた。

 

ルティ

待ちなさい!

ルティに呼び止められ、振り返る。

身体を動かしているのは、魔王の魂。

ルティもそれを理解している。

理解しているからこそ、敵意を、こちらに向けている。

???

おまえは……。

???

封印の片割れか。

???

我が正体を知りながら呼び止めるとは。

???

いいだろう。語れ

尊大に、威圧的に、魔王は語る。

ルティ

シークを、返しなさい!

強がって見せたところで、それが虚勢なのは明らかだった。

???

聞けんな。

???

と言いたいところだが、そうだな。

???

対価を示してみろ。

???

モノによっては、考えてやらんこともない

魔王が望むものは、決まっている。

ルティが持つ欠片を手に入れて、完全に復活すること。

それだけは、阻止しなければならない。

ルティ

…………あげるわよ

震えながら、泣きそうになりながら、ルティは声を出す。

ルティ

あんたの魂の欠片と、私の魂

ルティ

あんたにあげる!

ルティ

だから、シークを返して!!

その選択は、違う。

これまでずっと、魔王を封印し続けるために別れを繰り返してきた。

世界のために、犠牲になる事を選んできた。

だから、今回も犠牲にするべきだ。

シークという不完全な魔王を、殺すだけでいい。

ルティ

ごめんね。シーク。

ルティ

私、もうできないよ

ルティは、泣いていた。

ルティ

始まりの時の名前、呼んでくれたよね。

ルティ

うれしかった

涙を流しながら、微笑んでいた。

ルティ

あとのこと、任せるけど

ルティ

リョウやメルがいれば、きっと大丈夫

身勝手だ。

本当に、身勝手でわがままだ。

これまでの繰り返しを、出会いを、別れを、共に笑い、泣いた日々を

こんなところで、終わりにしたくない。

???

いいだろう

魔王はゆっくり、ルティに近づいていく。

その動きを止めることは、できない……。

守護精霊

…………!

絶望が溢れた静寂の中で

ただひとつ、小さな影が

魔王の前に立ちふさがる。

それは、ルティの守護精霊。

紅蓮の炎を纏い、ルティを守るように魔王の道を塞ぐ。

???

躾が、なっていないな

魔王は、ルティを見据える。

そして、なぜか魔王は

その歩みを止めた

???

そうか。

???

そういう事か

魔王は、そう呟いた

???

おまえは、望まないのだな

言葉の意味が理解できない。

ルティ

なにが、望まないのよ?

魔王の目を通し、ルティの魂が見えた。

真紅の光を纏い、輝く魂がひとつ。

そこに魔王の魂の欠片は

存在していなかった。

???

長き輪廻を経て自我を持ち、転生した。

???

そうなのだろう?

???

我が欠片だった者よ

魔王は視線を落とす。

守護精霊

…………

紅蓮と漆黒の光を纏った小さな魂が、そこにあった。

守護精霊は答えず、ただ、魔王を見つめている。

???

今更、無為というわけか

 

 

魔王は空を仰ぐ。

???

いいだろう。

???

魔王の宿命にも飽きてきたところだ。

???

貴様らに任せるのも、それはそれで面白い

見えるものは、星星の瞬きのみ。

???

器よ。聞こえているのであろう?

器が誰を指すのかは、理解できた。

身体を動かすことができなくても、五感は生きている。

それを、魔王も分かっているのだろう。

???

異世界より招かれた者の中には、世界の敵が紛れている。

???

魔王の力はそれを滅ぼし、世界を守るために存在する

ルティ

ちょっと待って!

ルティ

それってどういうこと?

ルティ

あんたは世界を、守っていたっていうの?

???

そうだ

ルティが尋ね、魔王が肯定を返す。

ルティ

それじゃ、私たちがやってきた事って……

???

間違っていたわけではない。

???

我も世界を守るために、国のひとつやふたつ、滅ぼしてきた。

???

我の封印を企てる事は、必然

魔王の言葉に、心に、憎悪の色はなかった。

そこにあったのは、純粋な、世界への慈しみ。

???

そして、我が封印されたのは

???

我が弱かった。それだけの事だ。

???

我が弱かったが故に、あの世界は……

身体の自由が、戻る。

魔王の魂の欠片は、眠りについたのだろう。

頬を伝う涙の意味は、もう、推測することしかできなかった。

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