アルル
ロマ帝せんせー。
わたしって、何なの?

アルル
どうしてわたしだけ、
『トクベツなクラス』
の生徒なの?

狭い教室にふたりきり。
アルルは真っすぐ手を上げて、
そう質問した。
ローマ帝国
ええとねアルルさん。
それは貴女が
フランスの都市であり…

アルル
その話は何度も聴いたよ。
『おまえはみんなと違う』
ってね。

ローマ帝国
…うーんとね、アルルさん

アルル
わたしは祖国様のように
異性や同性にモテないし、
ともだちだって多くない。

アルル
だってそれは、この
特別支援学級に居るから。

アルル
ここに居たら、
同い年の子たちと
話せないんだもの。

アルル
ねぇ教えて。
わたしは何が
『トクベツ』なの?

ローマ帝国
………………。

どうやら彼女は、
自分がここに居る理由に納得できず
ここを出たがっているようだ。
ローマ帝国
…そうね。それじゃあ、
今日の授業は❞化身の区分❞
についてやりましょうか。

ローマ帝国
さぁ、ノートを開いて。
しっかりサボらず板書を
するのですよアルルさん。

アルル
んー、なんか
まるめ込まれてる
気もするけど…。

幼き頃のフランスによく似た、
聡くて大人びた物言い。
ロマ帝は彼女にそれを重ねた。
賢い彼女は
納得いかなそうにしながらも、
のろのろとノートを開いた。
ローマ帝国
あのねアルルさん。

ローマ帝国
”国”と”地域”は、
どちらも人の姿を象った
『化身様』と呼ばれます。

ローマ帝国
それらは自身の土地を
反映した性格となり、
自身の土地で話されている
言語を使うんですよ。

アルル
ふーん。要するに、
国はそこの標準語を話すし
わたしたち地域には
それぞれ訛りが出るわけね

ローマ帝国
その通り!
国と地域の化身の違い、
バッチリ頭に入ってますね。

ローマ帝国
そして、国が死を迎えた時
都市や自治領の化身が
そのまま後継者に…
という事例は稀なんです。

ローマ帝国
例としては、
今の中国とは思想を違えた
元中華民国・台湾だとか。

ローマ帝国
彼らは
本土を追い出されても尚、
独立国家としてやっていく
ことを望んでいるとか。

アルル
へぇ、芯の強い国なのね。

ローマ帝国
そう。清は強い国
だったのです。

アルル
?

ローマ帝国
?

ローマ帝国
それでは問題です。
デーレッ。

アルル
!

イタリア訛りの巻き舌は
『デーレッ』にしっかりと
盛り込んできた。
ローマ帝国
Q,なぜ「建国年数」は
「独立してから経った
年数」として
数えられるのかっ!?

アルル
えぇっなにその
当たり前な質問

ローマ帝国
いえいえ。これは
「人間と化身の違い」の
応用問題ですよ。
シンキングタイムstart!

アルル
あっあわわわわっっ、
えーと、ええとええと…

アルル
人間と化身の違いぃ…?

アルル
…誕生日や年齢は、
人間は「生まれてから」
数える……

アルル
「建国」と「独立」は
同義ではない……

アルル
子供が次々独り立ちして
崩壊した国家もある…

アルル
繋がったっ!

アルル
A,植民地支配されてからの
年数を数えるのは
無意味とされているから!!!

ローマ帝国
ん~~素晴らしい回答!

ローマ帝国
ちなみに解説を聞いても
いいですか?アルルさん。

アルル
わたしが?
出題者の先生じゃなくて?

アルル
んーまぁいいけど…

アルル
例えばアメリカさん。

アルル
植民地時代から
”13植民地”としての自我は
あったと聞いているから、
同一人物で間違いない。
もちろん州ごとそれぞれの
自我だろうけどね。

アルル
支配されてから169年、
その間も子供なりに
年はとっている筈なのに、

アルル
独立したときはじめて
「0歳」になったのが彼。

アルル
親離れしてから年を
数え始めるっていう概念が、
人間たちには
不思議に感じるのかもね?

アルル
ああでも「建国記念日」
をつくったのは
人間たちだったわ。

アルル
でも確かに、
「今年で我々も
支配されて○○年かぁ…」
とか考えても意味ないよね。

アルル
それなら国家として、
民族として誇りを持って
独立できた喜ばしい日を
「誕生日」にした方がいい。

アルル
…とか、
人間は考えそうだからね。

ローマ帝国
おお~~~~。
アルルさんすっごい。

ローマ帝国
ちなみにこの学校がある
「日本」はどうですか?

ローマ帝国
この国
「独立記念日」は
無いんですよ。

アルル
それは…単純計算でも
2686歳になるねぇ。

アルル
そもそも日本は
「誕生日」の基準が
「神話」だから。

アルル
初代神武天皇の即位日、
とも言われてるっけ。

ローマ帝国
…ううん、
先生から教えること
一つもなくなっちゃった。

アルル
ふふん。どう、先生?
わたしをこのクラスから
出す気になった?

アルル
わたしは何も劣ってない。
ほかの子と違うなんて、
言わないで。

ローマ帝国
…君が『特別』な理由を
説明するために
授業していたんでしたね。

ローマ帝国
君は優れています。
「特別支援」なんて
必要ないほどに。

アルル
でしょ?だったら―――

ローマ帝国
それでも君を、
ふつうのクラスに
配属することが
できない理由。

ローマ帝国
それは――――――

ローマ帝国
君の日本語力に
問題があるから!!!!!

アルル
へ?

ローマ帝国
いえね、先生べつに
意地悪で君をここに
閉じ込めているわけじゃ
ないんです。

ローマ帝国
(そもそも配属は
上の指示ですし…。)

アルル
せ…せんせ……
日本語力って…

ローマ帝国
そう。
君はここに通うには、
あまりに地元愛が
強すぎたんです。

ローマ帝国
授業の最初に
言ったでしょう?
『地方の化身には
訛りが出る』って。

アルル
じゃ…じゃあわたし、
日本語ぜんっぜん
だめだめってこと…!?

アルル
ここで勉強するには、
日本語がそんなに
上手くならなきゃ
いけないの!?!??

アルル
みんなが合わせてよ!!!
わたしは”都市”なんだよ!?

それを聞いたロマ帝先生は
アルルの机の前で膝をつき、
ローマ帝国
すみません、
はっきり告げることで
君を傷つけて
しまいましたね。

ローマ帝国
ねぇ…アルルさん?

ローマ帝国
君はここでもう少し、
先生と日本語を
学びましょう。

ローマ帝国
何。心配することは
ありませんよ。

ローマ帝国
この学校にはたくさんの
お国様が通い、
日本人の生徒に混ざって
『ふつうのクラス』で
勉強できているのです。

ローマ帝国
そんな校風の本校に
君を入れたのは
親御さんの判断ですが…

ローマ帝国
………君は賢いから、
すぐに生徒たちと
馴染めるでしょう。

ローマ帝国
だから、学ぼう。
アルルさん。

アルル
………………っ

アルル
わたし頑張る…
ぜっっっっっったい、
『ふつうのクラス』に
入るからっ!!!!

ローマ帝国
はい!

負けず嫌いのアルルは、
ロマ帝先生に諭されて
メラメラと
やる気を出した。
その様子を見て先生が、
ホッと息をついて
安堵するのだった。