恵子
…え
恵子
ちょっと待ってあなたは一体何を…
慶太
今は理解できなくても仕方ないよ
結論を先に伝えて情報の入りを良くしたかっただけだからね
そう言うと彼は携帯をとりだし、電源をつけ表示させた画面を私に見せてきた
慶太
ここに写ってるのは誰か分かるね?
そう差し出された画面に写っている集合写真には見知らぬ顔数名に加えて、家の神棚にある父親の顔と同じ顔があった
恵子
…私のお父さんだわ…
恵子
…でも本当にどうして?
お母さんは知っていたの?
この状況にまだ頭が追い付かなかった
全ての情報が断片的に私の頭に流れ込んでくるせいだ
すると彼はしばらく沈黙した後、口を開き詳しい説明を始めた
慶太
まず順番に整理していこう
慶太
最初に君のお父さんについてだ
君のお父さんは今から約20年前に株式会社アポロジクスに入社
優秀な頭脳を用いて一気に出世コースに乗ってその5年後社外女性と結婚し、同年、夫婦間に子をもうけた
慶太
そして社運を賭けた新薬プロジェクトの主任を任されて、10年かかるであろうと言われた新薬をわずか5年で開発しプロジェクトは大成功
君の父親は功績を認められて研究所の所長に昇任する…予定だった
慶太
会社側は作り出した新薬を外国の軍に高額で売り付けた。
その事実を聞いた君のお父さんはすぐさま詳細を会社のお偉いさんに聞いた
「私達が開発した物はただの農薬だったではないか」と
慶太
でも実際は違った
確かに農薬として使用できるし害虫に感染して行動を制御して畑に寄り付かないようにするものだった
でもそれはあくまで第2の使用方法
本当の使用方法は兵器としてだった
慶太
そしてその事実に気が付いたお父さんは外部に公表しようとしたけど…その準備中に会社がパンデミックを引き起こして情報網を混乱させ今までの会社の経歴を改竄して…君のお父さんの研究室を爆破させてその中に感染者を解き放った
その時君はその場にいて、お父さんは君を逃がして命を落とした
慶太
…そしてさっき君のお父さんと結婚したと言った女性は入社初期からの友人で君のお父さんを誰よりも理解してる人だった
その後女性は君のお父さんの会社に入社し、お父さんの助手を任された
…もうだいたいは掴めたんじゃないかな
恵子
…私のお母さんね
でもそれだったらお母さんは昔何があったか知っていたんじゃないの…?
知ってて教えなかったってことなの?
慶太
そういうことだよ
慶太
でもお母さんのことは責めないであげて欲しいんだ
君に危険が及ばないように過去のパンデミックの詳細その全てを秘密にしてきたんだ
訳が分からない
どうして母親は知っていたのに私に教えてくれなかったの?
頼りないって思われてたの?
どうして彼は私に事の詳細を伝えてくれたの?
危険って一体なに?
慶太
…そこから先はお母さんに聞いて欲しい
僕が言うべきではないことだから
恵子
…分かったわ
お母さんが帰ってきたら聞いてみることにする
慶太
あ、
慶太
後お母さんに誰にその話を聞いたかを聞かれたら僕の名前を伝えて欲しい
慶太
そしてこの話をした理由を聞かれたら
慶太
"決断の時が来た"と伝えて欲しい
恵子
…全く訳が分からないけれどとりあえずその通りにお母さんに伝えるわ
慶太
よかった
お母さんによろしくね
恵子
…そういえば一つ聞きたいのだけれど
恵子
どうしてあなた転校生なのに放課後皆に絡まれていないの?
うちの学校の生徒なら転校生が来たなら必ず絡むと思うのだけれど
慶太
あー…それは…
慶太
僕は基本的にコミュニケーションが取れない方だから…
自己紹介終わりに皆が話しかけてきてくれたんだけど、全然話が進まなくて皆の興味が薄れちゃったみたいだね…
恵子
…悲しいわね
同情しながら彼にそう言った
でも少しおかしいと思った
なぜ私とは普通に話せているんだ?
恵子
‥ねぇ
慶太
どうしたんだい?
恵子
どうして私とは普通にしゃべれるの?
慶太
そりゃもちろん君が…
慶太
いや
君のお母さんが説明してくれるよ