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ある日、私は産まれました。
それが偶然なのか必然なのか、 それともそんなことを考える必要が ないのかは分かりませんが、 確かに私はそこにいました。
私の名前は、 「ヒロキ」と言うそうです。
私がそれを望んだ訳ではありません。
ただ、母がそう呼ぶのです。
母以外はどう呼ぶかと 気にしたことがありました。
いいえ、そんなことはありません。
私のことを呼ぶ人物は、 母以外にいなかったのです。
母は、「トウダイ」という 良い学校を卒業したそうです。
トウダイについて私は知りません。
もっと言えば、学校という言葉も 卒業という言葉も知りません。
父については、よく分かりません。
唯一知っているのは、コアな発明家 であるということです。
有名である訳ではありません、 彼は有名になるために発明をする 訳でもオカネを稼ぐために発明をする 訳でも無かったのです。
ただ、彼は趣味で研究をし、 コアな客層がソレに惹かれ、 勝手にオカネを落としていきました。
私の家はオカネが いっぱいあったそうです。
しかし、それが良いことで あるのか私には分かりません。
少なくとも私は父が嫌いなのでした。
…いいえ、父が嫌いなのではありません。
私は親という概念が嫌いだったのです。
お母さん
ヒロキ
お母さん
お母さん
ヒロキ
私には外に出ることが 許されていませんでした。
許されていたのは、ただ将来発明家 になるための勉強だけでした。
そのために必要な材料があれば、 母が用意してくれました。
…いいえ、許されていなかったのは 外に出ることだけではありませんでした。
外の世界に関わること、 それが私に許されなかったことでした。
テレビという物体があるらしいです。 ゲーム機という物体があるらしいです。 友達という人間がいるらしいです。 楽しいという感情があるらしいです。
噂程度に聞きましたが、 私は見たことがありません。
私は遊びというモノを知りません。 楽しいという感情を知りません。
笑顔を知りません。 笑い方が分かりません。
生まれてから今になるまで、 ただ学びをしていました。
しかし、私には 分からないことでいっぱいです。
世界は広いのです。 そんな抽象的なことなら知っています。
外の世界に出てみたい…
ただ1つぽつんとした部屋の中、 そう思っていました。
ローソクが7つになったときも、
8つになったときも、 9つのときも10のときも…
11のときも12のときも13のときも…… そして23を数えたときに転機が来ました。
お母さん
お母さん
ヒロキ
ヒロキ
お母さん
お母さん
お母さん
ヒロキ
お母さん
お母さん
お母さん
ヒロキ
私には、楽しいという感情が 分かりませんでした。
分からないので、喜べと言われて これが本当にそのような感情なのかを 理解できませんでした。
喜べと言われているのですから、きっと これが楽しいという感情なのでしょう。
実感はありません。全く楽しいと 感じていません。
しかし、そうしろと言われている以上 私はそうなのです。そうやって、 私という人間は少しずつ完成 していきました。
私という発明品が、完成していくのです。
もう既に約4分の1は完成しています。 道のりは長いですが、母は私という作品 を完成させるために努力しているようです。
母も、立派な発明家なのでしょうか。
そういえば、発明家以外の職業を 私は知りませんね。
そういえば、私の作った作品は 誰がどのように使っているのでしょうか。
外に出れば分かるのでしょうか?
お母さん
お母さん
お母さん
ヒロキ
……そのときようやく大変な ことに気づきました。
外に出てみたはいいものの、 外の過ごし方を私は知らなかったのです。
右往左往してる間にも、 1日は終わっていきます。
何をしようにも何も知らず、 とりあえず歩いてみました。
小さい人間を見つけました。 10個ほどローソクを減らしたくらい の大きさでしょうか。
……!……………!
…?知らない言葉ですね。
上手く聞き取ることが できませんでした。
発明家の気質ですね、 分からないままにして放っておく のが嫌で、立ち止まって眺めていました。
少しずつ理解しました。私が唯一 知っている遊びができました。
遊びはこの世界にいくつほど あるのか分かりません。
2つでしょうか、3つでしょうか。
私は1つの遊びを覚えました。 これは多いのでしょうか、それとも 少ないのでしょうか。分かりません。
小さな人間はじーっと観察し続けて いた私が怖かったのか、目を鋭くして から離れていきました。
別に嫌な気持ちにはなりません、 それは母の目と似ていましたから。
そういえば、 嫌な気持ちとはなんでしょうか。
悲しいという感情のことでしょうか。 よく分かりません。
とりあえず、もうすぐ1日が終わるので 帰路に着きました。とても迷いました。
一人でその遊びを模索しながら ただ歩きました。そしてようやく、 私は理解しました。
ヒロキ
ヒロキ
……いいえ、私が理解した感情は 1つだけではありません。
お母さん
お母さん
ヒロキ
また、あの地獄の日々を繰り返す。
「楽しくない1日」を何度も、何度も。
何度も?
嫌です。もう戻りたくありません。
これが、嫌な気持ちなんですね。
ヒロキ
お母さん
グサッ…!
お母さん
お母さん
ヒロキ
私を邪魔する人間、これが如何に 凶悪で醜くて気持ちの悪いモノなのか 私は理解しました。
私はもっと遊びたい。
楽しいことをしたい。
この有り余る楽しさを、 誰かに共有したくなりました。
なので…
私は、24個目のローソクを 見ることを拒んだのです。