〜ユキ(真冬)視点〜

次の日

ボクらは駅前のカラオケに来ていた

ウィズ経由で聞いたリーフの話だと、 カラオケは個室な上に防音だから、 会議の場所をここにしたらしい

優が名乗る前に、 二人の名前を言ったリーフ

二人はボクらの敵である探偵だし、 リーフが二人の情報を何も 持っていないはずがない

リーフ……というか九葉は、 この中では最年少

なのにこうやって仕切ったり、 年上相手に物怖じせずに話せるのは、 彼女の強みだとボクは思ってる

大まかな作戦を、リーフが話していく

浦田先輩に、ボクが持ってきていた とあるケースを渡した

ケースに入ってるのは、 ボクが左目につけてる青色のカラコン

これは暗視機能がついてて、 ソラのお手製だ

渡さなかった赤色のカラコンは、 ソラのパソコンから転送されてきた 情報を映し出してくれる機能つき

でも、元ある数はひとつだけだから、 これをつけるのはボクだけ

しばらく話し込んで、 大まかな作戦が決まった

みんなが椅子から立ちあがろうと すると、優がそれを止めた

浦田先輩からもそう言われて、 四人で顔を見合わせる

組織名の意味は、「幻影」

何か犯罪を犯しても、その場に何も 証拠を残さない、幻のような存在

組織の中に階級はあれど、 個々に実力がある奴らだ

リーフが、ボクの言葉を 継いで話し始めた

一見いつもの調子のウィズだけど、 少し表情が暗くなっている

そう言ったソラが、持っていた パソコンを開いて、浦田先輩達に 見せるように机に置いた

探偵二人に協力してもらうのは、 ソラが提案したこと

最初はリーフに反対されたけど、 彼女もボクらだけじゃ 人手不足なのは分かってた

だから仕方なくだけど、最終的には こうやって了承してくれた

頷くまで、少し渋った浦田先輩

敵から情報を受け取るのは、 探偵としてのプライドに 差し障るんだろう

それだけじゃなく、生き残った人に 心の傷まで負わせてる

ボクらにとって、 絶対に許せない奴らだ

呆れ顔のリーフが、 低いトーンでボソリと何かを呟く

高校生の割に背が低い九葉は、 実は結構それを気にしてるらしい

すぐにソラが値段を割り出した

彼方さんに言い包められて、 小さくなっている九葉

口論は、昔から九葉より 彼方さんの方が強いんだよね

そう言いつつも、ちゃんと鞄から 財布を取り出してる

みんな帰る支度ができて、 カラオケボックスを出た

一見してみると、 ただの高校生の集まり

そんな平和な世界だったら、 どれだけ良かったか

……なんて、この場の雰囲気に 似合わないことを考えてみる

あの日まで、もう一ヶ月しかない

みんなと仲間でいられるのも、 たった一ヶ月なんだから