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何日歩いただろうか。
それすら曖昧になるほど途方もない距離を移動し、 最終選別の行われる藤襲山に着く。
好みの人間を探しながら歩いていた奈那にとって、 長い道のりは全く苦ではなかったが。
会場を見渡すと既にかなりの数の選別を受ける者が集まっていて、それぞれ緊張や恐怖、意気込みなどを語り合っている。
その中でも奈那が特に気になるのは、
奈那
額に大きな火傷跡のある耳飾りを付けた真っ直ぐな目をしている人。素直で優しい、そんな雰囲気の男の人。
奈那
目を奪われるほどに綺麗な瞳と髪。雷を連想させる…。そして何故か、ボロボロの人。震えている男の人。
奈那
そして蝶のように美しく可憐で、まさに"儚い"を具現化したような女の人。師範の友人の継子。見たことがある。
奈那
最後に、少し離れたところにいる顔に大きな傷の入った人。苛立っているのだろうか、眉間に皺が寄っている男の人。
この四人だろうか。
ちなみに気になるというのは強さを測っているのではなく、単純に顔やら佇まいやらの話である。
甘露寺姉妹に血の繋がりはないものの、妹は長く一緒に住んだ姉の性格をしっかり受け継いだらしい。
奈那
キュンキュンする人を探していただけである。
奈那
噛み締めるようにそう呟き、美男美女にうっとりしているといつの間にか最終選別が始まっていた。
ああ、話しかけたかったのに……もう既に姿が見えない。
奈那
我先にと駆けていく大衆。
急いでも良いことはない。ゆっくり確実に行こう。
気合いを入れて臨んだものの……そもそも鬼と遭遇することがほとんどなく、遭遇しても弱かったため特に苦戦することはなかった。
奈那
と得意気にドヤ顔を決めてみる。誰も見ていないのに。
奈那
そして地獄の一年を改めて思い返し、失神しそうになった
道中かなり強い鬼の気配を感じたものの、それもいつの間にやら消えていた。
奈那
奈那
気になっていた四人と選別中に出会うことはなかったが、代わりに猪の被り物をした野生児のような少年を見かけた。
被り物の下が非常に気になる。
見せてもらおうとしたものの、三日三晩走り続ける少年に話しかけることは出来なかった。
奈那
と、失礼なことを考える。
暫くぼーっと"キュンキュンする人"のことを考えていると、綺麗で小さなふたり組から刀に使う鉄を選ぶように促される。
奈那
良いかは分からないが、 直感で選ぶ。こういうものは直感が大切なのだ。
皆は何を選んでいるのだろう。そう思い横を見るとすぐ横に耳飾りの少年。あまりの美貌に声が出そうになる。
話し掛けることができそうだ。この好機を逃す訳にはいかない。
奈那
あの、と声を掛けたもののいきなり
奈那
などと言う訳にもいかず…いや、普段であれば言っていたが。
真剣に選ぶ彼の邪魔をするわけにはいかない。 当たり障りのないことを言う。
するとカラ、と耳飾りが音を立てながら 真っ直ぐな瞳を私に向ける。
師範の言葉を借りると、
甘露寺蜜璃
と言ったところだろう。
竈門炭治郎
竈門炭治郎
晴天を感じさせる爽やかな声で、声によく似合う太陽のような笑みを浮かべる炭治郎。
奈那
妹がいること、素敵な育手がいること、とある鬼殺隊に助けられて、憧れていることなどをたくさん教えてもらった。
彼女の相槌は全て
奈那
奈那
奈那
から始まるものだった。
ひと通り話し終わったあと、 後ろからすみません、と声をかけられる。
声を掛けたのは金髪の少年。 彼の言葉に奈那は目を見開くことになる。
我妻善逸
奈那
炭治郎と話し終わり、奈那は後ろからの声に振り向く。 蜂蜜のような金色の瞳と視線が絡まる。
我妻善逸
我妻善逸
奈那
奈那
近くで見るとさらに整って見える金髪の彼に思わず声を上げる。
それよりも、夢だろうか? なんの脈絡もなく求婚された。何故。聞き間違いだろうか。
本当なら師範になんと報告しようか。
突然の求婚に脳が爆発しそうになる。
我妻善逸
我妻善逸
我妻善逸
我妻善逸
奈那
奈那
奈那
我妻善逸
我妻善逸
我妻善逸
奈那
我妻善逸
鼻水と涙を大量に流す善逸という少年は息継ぎというものを知らないのだろうか。
私もかなり騒いでいるため、確実に周囲に強烈な印象を持たせただろう。
私はキュンキュンとしながらも初対面でこんな風に話しかける人がいることへの驚きの方が勝ってしまっていることに申し訳なく思う。
竈門炭治郎
我妻善逸
奈那
近くで聞いていた炭治郎の介入により、更に大声になる善逸。
美形の彼らを近くで見られたことは嬉しいが、蜜璃が待っている。
彼らに申し訳ない、と思いながらも奈那は師範にこれまでの出来事を一刻も早く報告するべく言い争うふたりに知らないふりをして帰ってしまった。
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