いつか君が還る場所

キーンコーンカーンコーン

私は藤咲 夢(ふじさき かなえ) 小学5年生。

今日は友達の委員会の手伝いを終えて下校、もうすぐ16時。

顔を隠されたまま、目の前に一枚の手紙を差し出された。

普段はお世辞にも上手と言えない字だが、手紙の名前は妙に丁寧に書かれていた。

私の家はアパートの2階部分。 風呂トイレ別の2DK。

鍵を開けて玄関に入る。

扉をあけると正面にキッチンがあり、右と左に障子のついた和室と洋室。

寝室の和室で母親が冷えピタをつけて横になっていた。

私の母親は、統合失調症

3年前、私が彼女の異変に気づいて 主治医と協力して病院へ強制入院

だけど、主治医が『たまに薬を飲まない患者がいる』と言っていた 自分が病気だということを信じない、信じたくないからだそう

不運にも母親はそれで、たまに体調をくずしている

今はすっかりやつれてしまい 若い頃の面影はほとんどない

それでもたまにほほえみながらありがとうと言ってくれる

私はお母さんの ありがとう という言葉が好き

それを聞くと昔を思い出してとても幸せな気持ちになる

後は、困った人や泣いてる人がいたら 心が苦しくなってしまう

だから私は相手に、私ができる限りの事をして全力で助ける

それが成功して、ありがとうと言って見せてくれる笑顔が とても好き

一心不乱に布団に向かってダイブ

突然、母親が包丁を手に、馬乗りになってきた

右頬に包丁が触れピリッと熱くなり、血が滲み出てくる

表情がいつもの母親に戻り、そして子供のように泣きはじめた

母親を起こさないように、布団で光をさえぎりながら携帯をいじる

お母さんを起こさないように立ち上がり、家の外へと移動した。

3時間後

そうして私は 家を出た。