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釉(ゆう)は、いつものように 勉強道具を詰めたカバンを背負い 家とは違う安らぎの場所である図書館へ向かった
自習席でテスト範囲の参考書を広げていると 隣から優しく声をかけられた。
柊星
顔を上げると 大学生の**柊星(しゅう)が立っていた
釉
釉も素直に答える 彼は学校のいじめや 家の重苦しい空気とは 無縁の穏やかな光だった
しかし柊星の視線が 釉の左の頬に留まる 殴られた際の微かな腫れが まだ残っていたのだ
柊星
心配そうに聞かれた瞬間
釉の心臓が冷たく跳ねた
釉
釉
釉
いつものように 完璧に用意された 明るい嘘で誤魔化す 柊星は納得した様子ではなかった
それ以上は追及せず
自分の席に戻って静かに勉強を始めた
昼時になり
二人ともお腹が空いた
釉
柊星
柊星
柊星の提案で二人は図書館を出た
近くにある 地元の人間にしか知られていないような 少し人気のない定食屋に入る
迅
奥の厨房から 威勢の良い声が響く声の主は 近所に住む**迅(じん)さんだった。
迅
釉
柊星
釉
柊星
迅
釉は学校や家庭で見せない 素の柔らかな笑顔を迅さんに向ける
この定食屋もまた 釉にとっての小さな安息地だった
注文した定食が運ばれてくる 釉は塩サバ定食 柊星はボリューム満点の唐揚げ定食。
釉は唐揚げの香ばしい匂いに惹かれ 思わず柊星の皿を見つめてしまった
柊星は その視線に気づくと箸で大きな唐揚げを一つ掴み 釉の塩サバの隣にぽん、と置いてくれた
柊星
釉
その温かい行動に 釉の胸の奥がじんわりと温かくなった
釉
柊星
迅
釉
釉
柊星
迅
柊星
迅
柊星
迅
釉
店から出ると柊星が腕を引っ張った
柊星
釉
柊星
柊星
釉
普段行かない場所に連れ出され 釉は少し戸惑いながらもその活気に 押されてついて行った
クレーンゲームの眩しい光
賑やかな電子音
そんな喧騒の中で いつもの境界線が少しだけ曖昧になる
柊星
釉
柊星
夢中になって クレーンゲームをしていると
長袖の袖口から 手首に貼られたガーゼが ほんの少し覗いてしまった。
柊星
釉
柊星
釉
あっという間に暗くなり 二人は家への帰り道を歩き始めた
柊星
釉
団地の入り口に差し掛かったところで 一人の男性が柊星に声をかけてきた 大学の先輩らしい
颯叶
その男性がお隣に住む颯叶(はやと)さんだと知った
柊星
釉
颯叶
二人は少し立ち話をし颯叶さんは先に帰っていった
月に照らされた帰り道
歩き始めると柊星が いつもの屈託のない明るさとは違う
少しだけ低い
優しい声色で 重たい口を開いた
柊星
柊星
柊星
釉
柊星
柊星は目線をまっすぐにして釉を見た
釉は瞬時に完璧な「嘘の笑顔」を作り明るく答える
釉
釉
釉
釉
しかし柊星の顔には 「納得していない」という 影がはっきりと見て取れた
柊星
釉
だが彼はそれ以上何も言わなかった
そのまま二人で歩いているうちに家に着いた。 柊星と別れ玄関を開ける
釉
留
釉
土曜日だったため 両親は朝から家を空けていた
テーブルの上には 昨日のようなメモもない
ただ静寂がある
この家の中で 暴力も怒鳴り声もない 凪いだ海のような時間
釉と弟の留だけが二人きり
この時間だけが釉が心の底から安らぎを感じられる
唯一の「光」だった
留
釉