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薄桜鬼次伝

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薄桜鬼次伝

9 - "鬼"の秘密

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2024年03月03日

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原田に呼ばれ、台所へ来た千尋。

原田右之助

すまねぇな、今日は平次達が当番なんだが、アイツ、バックれやがってよぉ。
手伝ってくれねぇか?

口ではそういうものの、料理を教えてあげようと

風間千尋

わかりました!お力になれるならなんでもします!

満面の笑みで答える。

そして、少しすると、千尋が包丁で指を切ってしまう。

風間千尋

いッ…!

原田右之助

おい!大丈夫か、千尋。

風間千尋

あ、はい…大丈夫です。
舐めておけば治りますから。

原田右之助

でも、結構深く行った音したぜ?見せてみろ

風間千尋

いえ、ほんとに大丈夫ですからッ

原田右之助

いいから。

手で傷口を抑えている千尋の手を優しく退け

風間千尋

ッ…

原田右之助

!…お前、これ……

原田は千尋の傷口を見て何か思ったのか驚いた顔をしている。

千尋は気まずそうに目を逸らす

風間千尋

ご、ごめんなさい…

いたたまれなくなったのか千尋は台所から走り去って行く

原田右之助

あ!おい!千尋!

原田は千尋を追いかけるが、途中で見失う。

千尋は自分の部屋へ逃げ、縮こまる

風間千尋

違う…化け物じゃない…私のせいじゃない…
違うの…

血相をかき、震えながら耳を両手で抑えている。

風間千尋

……ここでも、また…化け物にされる…嫌われる…バレてしまった……

真選組の幹部達は天皇の屋敷に来ていた。

沖田総(はじめ)

また、面倒事押し付けられましたね。

斎藤肇(はじめ)

口を慎め、総。
仕事をいただけたのだ、ありがたく思え。

原田右之助

……

原田は夕方の事を思い出し、黙り込んでいた。

藤堂平次

右之さん?どうかした?

永倉新一

そうだぜ、右之!さっきから元気ねぇじゃねぇか!

原田右之助

あ?…いや、なんでもねぇよ。

小さく口角を上げ。

藤堂平次

そうか?なら、いいんだけどよ。

永倉新一

千尋ちゃんに、土産買っていってやらねぇとな。1人で留守番させちまってるしよぉ

原田右之助

千尋、か…
ん?

前から見慣れた顔が歩いてくる。

永倉新一

おっ!千秋ちゃんじゃねぇか!

鈴鹿千秋

あら、真選組の皆さん来てたのね。
天皇様からのお達しかしら?

土方影歳

あぁ、まぁそんなとこだ。

斎藤肇(はじめ)

そういえば、アンタは天皇様の遠い親戚に当たるのだったか。

鈴鹿千秋

えぇ、まぁそんな感じね。

天霧花菊

皆様、確か千尋様を預かってくださっているようですが、今日千尋様は?

永倉新一

今日は屯所で留守番してもらってんだ。
元気なさそうでよぉ

鈴鹿千秋

え?千尋ちゃんに元気がない?

藤堂平次

確か、晩飯の時も居なかったよな。

鈴鹿千秋

貴方達、何かしたんじゃないでしょうね。

千秋が軽く睨む

沖田総(はじめ)

何もしてないよ?
あ、もしかしたら僕のせいかも

沖田はケラケラ笑う

原田右之助

……

鈴鹿千秋

…原田さん、何か知っているのかしら。

様子がおかしい原田に気付いたのか尋ね

原田右之助

…姫さんよぉ、2人で話せるか?

天霧花菊

なんと無礼な!千秋様をッ!

鈴鹿千秋

お花、行ってくるわ。

千秋は花菊の言葉を遮るように言う

天霧花菊

…ですが、姫様…

鈴鹿千秋

いいから、待っててちょうだい。
真選組の皆さんも

そう言うと原田と千秋は去っていく

鈴鹿千秋

で?お話と言うのは千尋ちゃんの事かしら。

原田右之助

…まぁ、そうだな。

鈴鹿千秋

千尋ちゃんに元気が無かった原因は貴方なんでしょ?

原田は黙って首を縦に頷く

鈴鹿千秋

何があったの?

原田右之助

あんたは、千尋の事どこまで知ってる?

鈴鹿千秋

どこまで?…そうね、ある程度…いや、全てかしら

原田右之助

…じゃあ、傷が一瞬で治る事も?

鈴鹿千秋

!!!貴方、それをどこで知ったの!?

原田右之助

今日、晩飯作るの手伝って貰ってた時に、千尋が包丁で指を切っちまって。

鈴鹿千秋

千尋ちゃんが傷口を貴方に見せたの?

原田右之助

いや?俺が無理やり見ちまった。
千尋は隠してたんだぜ?

鈴鹿千秋

…はぁ~、これだから男は野蛮だって言われるのよ…まぁいいわ、一緒に屯所へ行ってもいいかしら

原田右之助

屯所に?そりゃまたなんで。

鈴鹿千秋

千尋ちゃんや、みんなには私から説明するわ。
潮時だし…

鈴鹿千秋

その代わり、全て知った時貴方達が千尋への態度を変えるなら、千尋ちゃんは解放しなさい。

原田右之助

俺達の態度?

鈴鹿千秋

千尋を"化け物"と思うならって話よ。

原田右之助

悪いが、俺達の中にそんなやつは居ないんだよ

鈴鹿千秋

そう、ならいいわ。

真選組の幹部、そして千秋と花菊が屯所へと戻ってくる。

風間千尋

あ、おかえりなさい…
え?千秋ちゃん?それに花菊さんまで

千尋が出迎えると千秋と花菊がいるのに驚いた

鈴鹿千秋

ごめんね、千尋ちゃん。
今から話さないといけない大事な話があるの。

風間千尋

大事な話?

鈴鹿千秋

とりあえず、座ってくれる?

土方影歳

俺達は居ない方がいいのか?

鈴鹿千秋

いえ、居てください。
今からする話は今後の貴方達にも関係してくる話ですから。

藤堂平次

なんだよ、急に「屯所に来る」って言い出すし、何事かと思えば「屯所で話す」って言うしよぉ

天霧花菊

姫様の話を遮らないでくださいますか?

永倉新一

ガハハッ!平次言われてやんの!

藤堂平次

は!?しんいっさんに言われたくねぇし!

近藤生士

おい、静かにせんか。

『は、はぁ〜い…』

伊庭三郎

それで、話と言うのは?

伊庭の言葉に千秋は頷く。

鈴鹿千秋

貴方達も1度会ったと風の噂で聞きましたが、"天霧千里"と"不知火翔"を知っていますよね。

土方影歳

!!…そいつらは確か、この間の連中か

近藤生士

たしか自らを"鬼"と名乗っていたと聞くが。

鈴鹿千秋

はい、その通りです。

永倉新一

鬼なんて存在するわけねぇだろ。

天霧花菊

失敬なッ!
かくいう私(わたくし)と姫様も"鬼"なのです。

風間千尋

え…?千秋ちゃんと花菊さんが、鬼?

鈴鹿千秋

…鬼は古の時代より存在しています。
戦国、いや平安…もっと前でしょうか。

天霧花菊

分かりやすく言うのであれば、こちらに居られる千秋様は古き鬼の血筋、"鈴鹿御前"様の末裔に当たられる"千秋姫様"

天霧花菊

そして、私は姫様に代々お仕えしている忍びの者。

鈴鹿千秋

ついでですので、言っておきます。
花菊は"天霧千里"の姉、そして私は"不知火翔"の妹です。

沖田総(はじめ)

!!!…初耳だよ。

原田右之助

まさか、そんな事って…

斎藤肇(はじめ)

……

土方影歳

それで、お前達が鬼だと言うことはわかった。
……話を続けろ。

千秋と花菊が頷く

鈴鹿千秋

古来より時の権力者達は鬼の力に目を付け、利用しようと狙って来ました。

天霧花菊

本来争いを好まぬ鬼の一族は人同士の争いに巻き込まれる事を嫌い、次第には散り散りになり、隠れて暮らすようになったのです。

鈴鹿千秋

人との交わりが増え、今では血筋の良い鬼はそう多くありません。
東国では"雪村"、そして西で最も大きな鬼の家は………"風間"…

風間千尋

!!!…風間?

藤堂平次

おいおい!それって、千尋を"鬼"だって言うのかよ!

風間千尋

……

千尋は手をぎゅっと握り締める。

伊庭三郎

……千尋ちゃん。

千尋の隣で伊庭が心配そうに千尋を見つめている。

鈴鹿千秋

雪村家は江戸の時代に滅んでしまいましたが、千尋ちゃんは雪村家の鬼の血も引いているのです。

風間千尋

…え?それはどういう…

鈴鹿千秋

千尋ちゃん、貴方の曾祖母様が雪村家の最後の生き残り、"純血の女鬼"そして、雪村家の最後の頭領だった方よ。

風間千尋

……で、でも私は人間で…

鈴鹿千秋

……話を続けさせて、千尋ちゃん。

千尋へと近寄り、千尋の手に己の手を優しく乗せ、言う。

その後、新撰組のみんなに向き直り話を続ける

鈴鹿千秋

…血筋の良い、しかも純血の子孫同士が結ばれれば、より強い鬼が生まれる。
私が何を言いたいか分かりますか?

土方影歳

天霧、もしくは不知火の狙いが風間という訳か。

鈴鹿千秋

そうです、後1つだけお話しておきます。
純血の鬼の特徴としては名前に"千"の字が入っているという事です。

近藤生士

では風間くんを狙っているのは"不知火"ではなく、"天霧"と言うことか。

鈴鹿千秋

察しがよくて助かります。

天霧花菊

私(わたくし)の愚弟が申し訳ありません。

永倉新一

……謝る相手は俺たちじゃねぇんじゃねぇの?

天霧花菊

!!!……そうでした。
千尋様、申し訳ありません。

風間千尋

い、いえ…でも私、自分が鬼だなんて信じられません…

鈴鹿千秋

…千尋ちゃん、私はこの人達を信用しているわ。だから、貴方が隠している事を全て話すつもりよ

風間千尋

私が隠していること…?
……千秋ちゃん!まさか!

千秋は千尋の言葉に頷く

風間千尋

や、やめて千秋ちゃん、それだけは……

鈴鹿千秋

千尋ちゃん、いつまでも逃げている訳にはいかないでしょ?

天霧花菊

この方達なら大丈夫です。

風間千尋

で、でも…私、

伊庭三郎

すみません横から申し訳ありませんが、
本人が嫌がっているのに無理強いは良くないと思います。

鈴鹿千秋

…伊庭さん、貴方は知っているでしょう。
彼女が隠している秘密を。

伊庭三郎

それをばらす程、僕は落ちぶれてはいませんよ。

真剣な顔で千秋に言う

鈴鹿千秋

!!!…それもそうね。
ごめんなさい、千尋ちゃん。
貴方が嫌がっているのに無理強いしてしまったわ。
でも、もし貴方がこの人達に明かそうと思った時は包み隠さず教えて差し上げて?

天霧花菊

きっと、千尋様のお力になってくださいます。

2人は優しく微笑んで千尋に言う。

風間千尋

…わかりました、ごめんなさい。

鈴鹿千秋

貴方が謝ることじゃないわ

千尋に優しい笑みを向け

鈴鹿千秋

さて、お話も出来たし私達は失礼します。
千尋ちゃんの事、何卒よろしくお願い致します。

新撰組のみんなに丁寧に頭を下げる。

近藤生士

うむ、こちらこそ遅い時間に申し訳無かったな。

鈴鹿千秋

いえ、大丈夫です。
後1つだけよろしいかしら

近藤生士

なんですかな?

鈴鹿千秋

私は、天皇の親戚ではありません。天皇に力を貸している、鬼を纏める者。

鈴鹿千秋

皆さん、勘違いされていたのでお話しておきますね。

永倉新一

え!?まじ!?

藤堂平次

天皇の"隠し子"じゃねぇの!?

鈴鹿千秋

ちょ、ちょっと!待ちなさい!
そんな噂聞いた事も無いわよ!

原田右之助

ははっ、すまねぇな。
こいつらが勝手に憶測で言ってただけなんだ。

鈴鹿千秋

全く、ガキね。

天霧花菊

…姫様、そろそろ行きませんと。

鈴鹿千秋

えぇ、そうね。
夜分遅くに失礼致しました。
ではまた明日。

微笑むと霧のように姿を消し

斎藤肇(はじめ)

信じ難い話であった…

藤堂平次

ほんとだよな~、まさか天皇の隠し子じゃねぇなんてなぁ~。

土方影歳

まだそれ引きずってんのか!

藤堂平次

いや~、だってよぉ。
天皇様の屋敷に行く時、毎回あいつら居るしさ?

原田右之助

ま、勘違いするのも無理はねぇよな。

原田が、ははっと笑う

伊庭三郎

……千尋ちゃん、大丈夫ですか?

千尋にやっと聞こえる程の音量で尋ねる

風間千尋

あ、はい…すみません…

伊庭三郎

すごい汗…

伊庭は千尋の顔にかいている大粒の汗を自身の着物の袖で拭く。

伊庭三郎

部屋に戻りましょうか。

風間千尋

はい、そうさせていただきます…

伊庭三郎

えぇ、わかりました。

優しく微笑む

伊庭三郎

トシさん、千尋ちゃんを部屋へ送って来ますね。

土方影歳

あぁ、頼んだ。

……風間、無理はするな。
頼ればいい。

土方の言葉の後、幹部隊士たちも同じ気持ちだと言うかのように口角をあげている。

風間千尋

!!…はい、ありがとうございます。

千尋はそれを見て小さく微笑む

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