紗羅は藤野警部の車から降りると 呆然と工場跡を見つめた
辺りには火事特有の鼻をつく臭いが漂っている
紗羅
...こんなことって...
刑事
藤野警部!
遺体を発見しました!
遺体を発見しました!
藤野警部
判った、すぐ行く!
藤野警部
藤野警部
碧くん、念のためだが...
藤野警部
稔君の身長と体重を教えてくれ
紗羅
あ...はい
紗羅
えっと...身長は178㎝で
紗羅
体重は...えっと...
紗羅
確か...59くらいだったと思います...
藤野警部
判った
碧くんはここで待っていてくれ
碧くんはここで待っていてくれ
藤野警部に力無く頷き、 その場にしゃがみこむ
紗羅
(魔叉琉、生きてるよね...?)
どのくらい経ったのだろうか
目の前に誰かが立った音がして 紗羅は顔をあげた
藤野警部
碧くん、これを....
紗羅
――ッッッ!
画面がひび割れ、電源は 入らないものの
それは紛れもなく、 魔叉琉のスマホだった
紗羅
...これ...一体何処で....
藤野警部
中の...廊下だったと思われる場所の隅に落ちていたんだ
藤野警部
これから遺体を運び出す
藤野警部
碧くんは...見ない方が良いだろう
紗羅
あの...遺体は、1人だけだったんですか?
藤野警部
今のところ、見つかっているのは1人のみだが...
紗羅
そう...ですか....
紗羅
私に何か出来ることがあれば...その時は言ってください
藤野警部
あぁ...検死結果が判り次第、追って連絡する
藤野警部
わざわざ来てもらう程でも無かったが...
藤野警部
それじゃあ...
紗羅
待ってください!
紗羅
私と魔叉琉、2人で
『稔探偵事務所』です
『稔探偵事務所』です
紗羅
今回のこの事件は
私が解決します!
私が解決します!
紗羅
なので...捜査に同行させていただいてもいいですか......?
藤野警部
......それは構わないが...
藤野警部
本当に良いのか?
紗羅
はい...!私だって探偵事務所の一員ですから
紗羅
(不安が拭えた訳じゃない)
紗羅
(でも......)
紗羅
お願いします!
藤野警部
こちらこそ、よろしく頼むよ
藤野警部
――探偵さん
紗羅
――はい!
事務所の2階:2人の部屋
紗羅はベッドで、何度目かの 寝返りをうった
紗羅
(眠れないな...)
検死結果が早く出ない事くらい 判っているのだが
紗羅
(こんなんじゃダメだよね...)
紗羅
...ココアでも飲もう
ベッドを抜け出し、キッチンで ココアを入れる
紗羅
...もう2時過ぎてる
紗羅
早いな...
紗羅
紗羅
眠れない...読書でもしよ...
紗羅が2冊目の本を読み終えた時
着信音が鳴り響いた
紗羅
――ッ、はい!
藤野警部
検死の結果を伝えたいのだが
藤野警部
今、大丈夫か?
紗羅
はい、大丈夫です
藤野警部
うむ
藤野警部
まず、遺体の人物は
身長約165㎝、体重約73㎏
身長約165㎝、体重約73㎏
藤野警部
30代男性だと判った
紗羅
え...じゃあ、魔叉琉じゃ...
藤野警部
あぁ。稔君ではない
紗羅
(良かった...)
心の中で安堵し、 メモを書き留めていく
藤野警部
それから、遺体の手首に
円形の跡が付いていた
円形の跡が付いていた
藤野警部
手錠の跡だと考えるのが妥当だろうな
藤野警部
足には、円形の金属が付けられていた
紗羅
...それって、拘束されていたという事ですか......?
藤野警部
そう、なるだろうな
藤野警部
藤野警部
今、遺体の歯の治療痕などから
藤野警部
人物を特定している
紗羅
ありがとうございます
紗羅
また何か進展ありましたら、教えてください
紗羅
こちらも、調べられるだけ調べます
藤野警部
そうしてくれ
紗羅
あ、それと
紗羅
私のスマホのLIMEの履歴
紗羅
もし良かったら、使ってください
紗羅
魔叉琉にメッセ送っても既読が付かなくなった時間...
紗羅
その辺りも、操作の役に立つはずです!
藤野警部
ありがとう
藤野警部
稔君の無事が確認出来たら、真っ先に伝えるよ
紗羅
ありがとうございます!
通話を終了し、本を持って ベッドに寝転がった
紗羅
あ、あれ......?
紗羅
なんか...安心したら......
紗羅
ねむ....く.......
紗羅
......
大切な人が生きている可能性が ある事に対しての安心感と
緊張からの解放からか
紗羅はいつの間にか 眠りに落ちていった