優斗
あー…
優斗
懐かしいなこの景色
結菜
そうだね〜
優斗
ガキの頃は昼間の空しか見てねぇけど
優斗
今じゃ夜空もこう来て見えるんだからな
結菜
雲もあんまりなくて星が綺麗だね
優斗
昼と違った空を堪能できるなんて
優斗
大人になるってことは案外悪いことじゃないのかもしれねぇな
優斗
いつからか空を見るのが好きになったんだよ
結菜
そうだよね
結菜
たまに何の気なしにベランダに出て空見てるもんね
優斗
空って俺らから見てるこの景色
優斗
それ以上に続いててさ
優斗
この空の向こうは宇宙という暗黒の世界が広がってるって言われてるけど
優斗
逆に言えば宇宙から見る地球は蒼で覆われててさ
優斗
めっちゃ綺麗ってことだよな
優斗
空には無限という言葉が一番似合うんだと思う
優斗
限りない青が続きその先は暗黒の世界
優斗
けれどもその暗黒の世界を色付けるのは
優斗
絵の具なんかの着色料じゃなくて
優斗
その世界に到達した人の感性だもんな
結菜
優斗は時折空に願いを思うこともあるもんね
結菜
歳重ねてもそんなことしてるの優斗以外は私知らないもん
結菜
そーいうとこが好きだったりするんだけどね
優斗
人の感性ってのは無限なのかもしれない
優斗
十人十色という言葉があるように人によって考えは違う
優斗
だから宇宙に到達した時に何を思うのか
優斗
それすらも無限にあるんだから
優斗
人の数だけ想いや考え方が存在するんだ
優斗
そんな考えが空を見る度に毎回頭の中を巡るよ
優斗
特に夜空だと昼の空と違って色んな考えを巡らせやすいからかな
優斗
これは俺の思い出補正みたいになるけども
優斗
この公園の芝上とか他の場所で夜空見るよりも想いを巡らせやすいな
結菜
珍しく外出するってなって来てみれば
結菜
まさかの公園だったし
結菜
でも確かにこの公園は思い出沢山あるからね
優斗
空を見る癖がつきだしたのは小学の時からだ
優斗
嫌な事があればすぐに空を見る
優斗
空を見て嫌なことよりも明日以降の自分を考えるのが好きで
優斗
それでいつしか癖になったのかもしれないな
優斗
まぁ現実逃避と言われればそれまでだけどな
優斗
ぶっちゃけこの癖治りそうもねぇしな
結菜
そうだね〜
結菜
だいたい嫌なことあったら静かになって空を見るもんね
結菜
学校居た時も授業そっちのけで空見てたもんね
優斗
でもまさかこの癖が裏目に出るとは思わなかったな
優斗
嫌なことを忘れるために行ってたこの行動が
優斗
空を見る度に毎回嫌な事が頭の中を巡るようになってさ
優斗
歳重ねるとどうにもマイナス思考になりがちで
優斗
こればっかりはどうにもならねぇもんだな
優斗
言ってもまだ20超えたくらいだけど
優斗
如何せん空見て嫌なこと思い出して泣くなんてざらじゃねぇし
優斗
涙腺も弱ってきてるんかなぁ…
優斗
空を見る度に思い出すのは嫌なこと…
優斗
もちろん楽しかったこととか嬉しかったことも思い出すよ
優斗
でもやっぱりそれを凌駕する出来事だもんな
優斗
脳裏から離れないし離れることは無い
優斗
こんな時期に家を出て空見て思い浸るとはな
優斗
なぁ……”結菜”
結菜
私はずっと一緒だって言ってるじゃん
優斗
”還ってきたんだよな”
優斗
ずっと一緒に居るって言ったけども
優斗
それは叶わなくなって…
優斗
でもこの時期だけは還ってきてくれるんだよな
優斗
彦星と織姫のように
優斗
この日だけは……
結菜
まぁ…
結菜
それはしゃーないよ
結菜
居たくても居れないし私は
優斗
今どこにいるのかわかんねぇけど
優斗
きっと結菜の事だ
優斗
俺の近くに居たりすんだろうな
優斗
たった数年だが共に過ごせて
優斗
俺は嬉しかったぞ
優斗
初めて異性で信用できる人を見つけられた
優斗
めっちゃ嬉しかった…
結菜
私もそりゃー嬉しかったぞ
優斗
いつまでも引きずってるのは良くないよな
優斗
分かってるさそんなの…
優斗
でも、初めて大切な人を失ったってなると
優斗
人って簡単には切り替えれないんだなって
優斗
改めて感じたよ
結菜
まぁ私的には忘れてくれなければそれでいいよ
結菜
でももし私が原因で優斗の足枷になるのならば
結菜
それは私としても本望ではないから
結菜
そうなった時は切り捨てて欲しいかな
結菜
私のせいであんたの人生まで狂わせたくないし
結菜
割り切れとは言えないけれど
結菜
せめて何かやる時の足枷にならないよう
結菜
それだけに務めてくれるならそれでいいよ
優斗
優斗
そろそろ日付が変わる…
優斗
変わったら君はまた居るべき場所に還るんだろう
優斗
近くにいること前提で話すが…
優斗
俺は空が好きだ
優斗
もっと言えば君とみていた空が一番好きだ
優斗
俺にとって君はいて欲しい存在
優斗
俺がキャンバスなら君は絵の具だ
優斗
人生というキャンバスに君という色鮮やかな絵の具が塗り尽くされた
優斗
この空も同じだ
優斗
逢えるなら…
優斗
もし逢えるなら
優斗
昔のように俺の世界に色を乗せてくれ…
結菜
優斗
結菜
クヨクヨしてるあんたあんまり好きじゃないの
結菜
女々しいとかまた言われるぞ?
結菜
まぁギャップがあるという面で言えば私は好きだけどね
結菜
さて……
結菜
もう私は還るけどもクヨクヨすんなよ?
結菜
毎年毎年ひねくれてるみたいだし
結菜
切り替えてくれよ頼むから
結菜
そんな姿のあんたに私は惚れたんじゃないの
結菜
楽しそうに笑うあんたの笑顔と
結菜
みんなを笑わせようとする姿
結菜
グループの中で盛り上げ役みたいだったけれど
結菜
影でみんなを支えてるあんた
結菜
そこに惹かれたんだから
結菜
そんなあんたを見せていってよね
結菜
私が居なくなってもさ
結菜
私が居ないのが今じゃ当たり前だしね
結菜
それじゃあこの泪は土産に貰ってくよ
気が付いたら泣いていた優斗の涙を彼女はその手で拭き取り
それは空に消えると言うよりも夜に溶けるという方が適切かもしれない
優斗の瞳に映った彼女の姿は優斗が極限状態によって見せた幻覚か
はたまたこの時期によって還ってきた彼女の御霊なのか
優斗は判断が出来ずにいたが確かなことはひとつそこで見つけた
頬を伝う涙を拭き取りゆっくりと立ち上がり家にと帰る
その時一瞬吹いた風は彼の背中を押していたようなそんな気がした