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翌朝。外に出ると辺り一面に瓦礫が散乱していて、車も横転していた。特別海から近い訳でもないのに辺りに海の匂いが充満していた。
一咲家の父
一咲家の母
車で30分ほどかかってついたのは遺体安置所。所内ではご遺体がずらっとならんでいた。
こちらですと案内人に応じて誘導されるも、自分は信じたくなかった。
嘘だと証明したかった。小さな拳を握りながら、導かれる方へと進んだ。
皆の足が止まった。改めて前を見ると、他と比べて小さな棺があった。
一咲家の父
花音の父親が、その棺の中を覗いた。
ゆっくりと、息をするように肩が上がったのがわかった。
一咲家の母
花音の母親もその棺を覗き込む。
一咲家の母
その場に崩れ込み、花音の父親が宥める。
しばらくすると
一咲家の父
天宮 尚(5歳)
一咲家の父
天宮 尚(5歳)
天宮 尚(5歳)
天宮 尚(5歳)
一咲家の父
一咲家の父
天宮 尚(5歳)
天宮 尚(5歳)
泣きながら、重い足取りで棺の前に座り込む。
天宮 尚(5歳)
天宮 尚(5歳)
天宮 尚(5歳)
天宮 尚(5歳)
中を覗いた瞬間に崩れ落ち、同時に猛烈な吐き気が襲った。
棺の中にいるのは確かに、花音だった。
津波による打撲からの溺死だと聞いた。身体が硬く青ざめており、小さい体故、原型をとどめているのが奇跡という程だった。
泣き続け、吐き続け、過呼吸になっていたが、その間にも一咲家の両親は火葬の手続き等を淡々と済ませていた。
……
天宮 尚(5歳)
天宮 尚(5歳)
気づけば、周りは何も無い、殺風景な場所に変わっていた。
ねえ
天宮 尚(5歳)
とても、聞き覚えのある声。 聞きあきるくらい聞いていた声。 でも、聞きあきたことはない声。
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
天宮 尚(5歳)
天宮 尚(5歳)
一咲 花音(6歳)
少し離れた場所に、花音が立っていた。
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
その言葉で、花音は優しい笑顔から少し悲しそうな表情に変わった。
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
一咲 花音(6歳)
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
保育園でお昼寝の時間の時には、先生の目を盗んで二人でこっそり抱き合って寝ていた。
けっこんして、あかちゃんうんだらみんなでずっとこうしてぎゅーしてねたいね、とよく言われていた。
一咲 花音(6歳)
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
自分たちの保育園は仏教に根付いた教育をしていて、時折仏典の一部をわかりやすく教えてくれていたことがあった。
母親が宗教熱心で、家でもよく聞かせられていたが おあがりの意味はおそらく、成仏と似たような言葉だろうと子供ながらに思った。
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
何も言えなかった。
恋愛という概念がないこの歳で子供なりに愛を誓っていたのは確かだが、それがかえって相手の呪縛になってしまったのだ。
しかも、花音は一度決めると意地でも筋を通したがる。そこに惹かれる部分もあったが。
あがれない理由を自分が作ってしまった。楽になって欲しいのに。とても、もどかしい気持ちだった。
一咲 花音(6歳)
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
思えばどうして自分はここにいて、花音と話せている?
天宮 尚(5歳)
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
とにかく、頷くしかなかった。
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
一咲 花音(6歳)
一咲 花音(6歳)
天宮 尚(5歳)
確かに周りがメラメラと炎を立てているようにみえる。しかし暑さは全く感じられなかった。むしろ、肌寒いまである。
天宮 尚(5歳)
天宮 尚(5歳)
天宮 尚(5歳)