消える記憶、残る君

【 消える記憶、残る君 】

近所のおばあちゃんに、 「おかえり」と言われる。

「ただいま」、って返していいのか分からず 敬語で返す、そんな日々。

いつかは、「ただいま」って言いたいな。

そんなこんなで、今日も着いた。

この一週間は、桜が咲いていて綺麗らしい。

ふっかが言ってた。

ベンチには、犬の散歩中のおじいちゃんが 座っていたから、芝生に腰掛けた。

両手の親指と人差し指を合わせ、 四角のカメラを作る。

この辺は、特に桜が多くて綺麗だ。

カメラがあれば、写真撮れたんだけどな。

＿＿カシャ、

カメラのシャッター音が鳴った。

桜でも撮っているのだろう、

そう思って無視をしていた。

＿＿カシャ、

もう一度、シャッター音が鳴った。

周りを見渡すと、

＿カシャ、

茶髪で、少しパーマがかかった前髪の 男の子が、こちらにカメラを向けていた。

見た目的に、年下だろうか。

カメラを下げると、ニッコリと笑って、

そう言った。

俺は人とコミュニケーションを取るのが苦手で、 知らない人とは滅多に話さない。

だけど、

俺の口は、勝手にそう言ってた。

男の子は、俺の隣に腰掛けた。

ずるいな、康二くん。