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稲穂が揺れる秋。 今は夏との跨ぎ目だから、その姿を見るのは少し遠い気がした。 けれど、宇髄は助け出す日を稲刈りの日と指定した。 「宇髄様、なんで稲刈りの日なのですか?」 「稲刈りの日は、満月の事にあやかって行う行事みたいなもんなんだよ。だからこそ俺には好都合。ってか、ウズイ様やめろ。宇髄にしろ」 ふんっ、と、鼻息を吐き耳を立てる。銀色の髪は彼の細かい動きにも 反応し、きらきらと輝いていた。 「はい、宇髄……さん……」 戸惑いつつ、口にする。 「…………、まぁいいか。」 「稲刈りの日まで変な動きするなよ、善逸。」 大きい宇髄の手が不器用に善逸の耳を巻き込みなが、頭をなでる。 「はぁ、わかりました。」 満足そうに撫で回す宇髄をみる。 柘榴色の瞳が切れ長の目から見えた時、ひゆっと背筋が冷えた。 撫でていた手がとまり、突然頭を掴まれたような感覚に気分が悪い。 「お前の髪、秋まで伸ばしておけ。」 え? 「じゃあ、また」 近くにあった体温と音、頭の上にあった感覚が一気になくなる。 なんの痕跡も残さず、宇髄は消えた。