あれはお兄ちゃんがいなくなってすぐ
3日ほどがたった頃だったか
1日目は泣いて泣いて泣きまくった
2日目はなんの気力も起きなくてただボーッと1日を過ごした
そして3日目はどこにぶつけていいかも分からない感情を抑えられなくなった
バレーボールを持った手が意味もなく震えて
オーバーワークで絶対安静と言われていたが、じっとしていられなくなって外に出た
行くあてもなく
ただひたすらに走った
体が重いのも
暑いのも
恥ずかしさすら吹き飛ばすように
わめき声を出しながら走った
もう、いっそのこと全部壊れてしまえばいいのに
私自身も、家族も、全部
疲れ果てて、息も絶え絶えになって
止まらずにはいられなくなった頃には
知らない場所にいた
知らない住宅街に見覚えのない公園
△△ ○○
暑いからか、遊ぶ子供の姿すら見えない
太陽に照らされた暑いベンチに寝そべって真っ青な空を見上げる
△△ ○○
外はこんなにも明るいのに
私の未来は真っ暗だ
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
ふと、大声で泣き叫ぶ小さい子の声が聞こえた
迷子の男の子
上半身を起こして辺りを見渡すと幼稚園生くらいの男の子が公園の真ん中で泣いていた
まるで私のように
そう思ったら、声をかけずにはいられなかった
△△ ○○
迷子の男の子
迷子の男の子
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
私は脇に抱えていたボールを両手で持ち替えて見せる
迷子の男の子
△△ ○○
△△ ○○
迷子の男の子
迷子の男の子
△△ ○○
絶対安静と言っても、小さい子の相手をするくらいなら大丈夫だろうと思って私は男の子にボールを渡した
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
△△ ○○
迷子の男の子
なんてことない、小さい子の言ったことだ
でもその言葉はすごく私の心に刺さった
最近の私は、バレーを楽しめていただろうか?
強くならなきゃの一心でやってはいなかっただろうか?
自分の体調管理も出来なくなるまで追い詰めて、私は楽しかった?
そんなボロボロの状態で大きな舞台に行って、家族は元に戻ったのか?
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
迷子の兄
迷子の男の子
△△ ○○
そこに現れたのは、前髪を大きめのピンクのヘアピン2つで止めた同い年くらいの男子だった
迷子の兄
迷子の男の子
迷子の兄
迷子の兄
ヘアピン男子が怪しげにこっちを振り返る
迷子の兄
迷子の男の子
迷子の兄
△△ ○○
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
△△ ○○
迷子の兄
迷子の兄
△△ ○○
迷子の男の子
迷子の兄
彼は前髪のピンを外すとカバンにしまい、前髪を整え始めた
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
△△ ○○
私は意味がわからない人だと思いながらも、従わない理由もないから素直に彼について行った
彼の弟は遊んで来いと公園に放たれていた
日陰は思ったよりも涼しくて生ぬるい風が頬を撫でた
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
心底びっくりという顔で…というよりは若干引き気味に言われた
△△ ○○
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
聞かれたから答えただけじゃない
心のどこかで聞いて欲しいって思ってた
別に共感を求めてたわけじゃない
慰めて欲しかった訳でもないと思う
ただ、聞いて欲しかった
誰でもよかった
その行動が何か意味をなすのかって言われたら
その答えは多分「ない」
何もかもがどうでもよかった私は
その理由ですらどうだっていい
理由なんてなくていい
話し終わっても、彼は最初となに1つ変わらない表情をしていた
迷子の兄
少しの沈黙の後、彼はポツリと言った
△△ ○○
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
△△ ○○
何故か
視界が歪んだ
大粒の何かが
流しまくった水が
何筋も何筋も頬を滑り落ちる
綺麗事なんて聞き飽きたはずだった
1番信用していた人に裏切られても尚、私はまた人を信じるの?
しかも人を信じるなって言ってきた相手を
家族はいつか戻るなんて言ってた兄ですら、私を置いていったのだ
また裏切られてショックを受けるのは私だ
そしたら次こそ私は壊れるのでは無いのか?
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
彼は小さく笑うと私の頭をわしゃわしゃと撫で回した
迷子の兄
迷子の兄
迷子の兄
△△ ○○
彼に何を言われようと、私の境遇は何一つとして変わらない
お兄ちゃんが戻ってくるわけでも、家族が元に戻る訳でもない
けど
△△ ○○
迷子の兄
ちょっと、明るい
外の明るさじゃない
真っ暗だった私の未来の方だ
△△ ○○
久々に、自然な笑みがこぼれていた
その後、帰り道がわかなかった私はわかる場所かもしれないと言われ、彼らの買い物について行った
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の男の子
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
迷子の男の子
迷子の男の子
迷子の兄
迷子の兄
△△ ○○
迷子の男の子
迷子の兄
△△ ○○
迷子の兄
△△ ○○
彼はカバンから何かを取り出すと私に近づいてきた
△△ ○○
迷子の兄
彼は私の頭にそっと触れる
迷子の兄
迷子の兄
パチッと何かが頭に付けられた
商店街のガラス戸にうっすら映った私の頭には彼のピンクのヘアピンがついていた
何の表しかは分からないけどアルファベットのSが隅っこにペンで書かれている
迷子の兄
迷子の兄
白布 賢二郎
そっか
そうだった
白布だった
彼の名前は白布賢二郎だった
あの日、私が壊れずにいられたのは
ヘアピンをくれたのは
他の誰でもない
△△ ○○
白布 賢二郎
白布は静かに頷いた
△△ ○○
白布 賢二郎
掠れて見えなくなってきているが、アルファベットのKの文字
2つ合わせて、イニシャルだったのか
彼の言葉を信じて、全部耐えてきた
いじめも家庭の境遇も
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
白布 賢二郎
白布 賢二郎
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
白布 賢二郎
△△ ○○
△△ ○○
こんなにも近くにいたのに
何度も助けてくれていたのに
見た目だって大して変わっていない
前髪が斜めパッツンなのも、瞳の色も
少し大きくなったくらいしか変わらないはずなのに
どうしてヘアピンを手渡されたあの日に、ピンと来なかったのだろう
白布 賢二郎
白布 賢二郎
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
白布 賢二郎
△△ ○○
私は手のひらにのったヘアピンを見つめながら、無意識に笑っていた
白布side(過去)
高校入学式の日
他クラスの女子の名前が呼ばれた時、1人だけピンと来た奴がいた
△△ ○○
あの日以来、会うことのなかった彼女
その日の翌日、そいつのいるクラスを覗きに行った
肩より下に伸びたサラサラの髪
長いまつ毛
身長は小さくても、スラッと伸びた手足
細すぎるだろって位の体
あの時の雰囲気とだいぶ違っていた
あれから5年近くもたっているんだから当たり前だ
それでも尚、すぐに分かった
ヘアピン
ボケっとつまらなそうに座っている彼女の髪には、あの日渡したヘアピンがついていたのだ
誰かと絡む様子のない彼女は、目だけはあの日と変わっていなかった
どこかこの世界を諦めている
そんな悲しい目だ
そんな彼女に、俺は声をかけられなかった
約束も覚えているか分からない
俺の事を忘れてる可能性だって高い
そんな中、声をかけてどうする?
クラスも違うし、部活も俺は男バレに入ることを決めているから違う
話しかける内容も、関わりも何も無い
それに俺は今攫えるだけの力を持っていない
そんな考えはすぐに出来なくなった
毎日の授業
ハードな部活
最初はついて行くのにも精一杯で
毎日ヘトヘトだった
他のことを考える余裕は俺にはなかった
でも、どんな運命の巡り合わせか
2年になると同じクラスだった
教室の席も前後
これで拾ったヘアピンも返せる
でも、そこで見たのは、笑顔で友達と笑い合う彼女だった
千華野 美琴
△△ ○○
千華野 美琴
千華野 美琴
△△ ○○
昨日はあれだけ悲しげにしていたのに
悔しそうに瞳を歪ませていたのに
もう今日は元気なのかよ
○○に友達が出来たことは良い事だと思うし
確実に変わり始めているのは確かだ
でもなんだか嬉しくない
いや、違う
そうじゃない、そういうことじゃない
多分、俺は
俺が助けたかったんだ
きっとどこかでそう願っていた
あの日のように、笑顔にしてあげるのは自分なんだと
子供じみた考えを無意識にしていたのだろう
あれだけ長い間離れていて
どうしてそれは変わらないと思ったのだろうか
白布 賢二郎
△△ ○○
彼女はふと不思議そうな顔で振り返った
入学式の時ともあの日とも違う
少し明るくなった瞳
△△ ○○
俺が不機嫌そうな顔をしていたからか、対抗するように○○も少し目を細めた
白布 賢二郎
別に喧嘩がしたかった訳じゃない
けどイライラする
△△ ○○
白布 賢二郎
俺の姿を見ても、名前を名乗っても、彼女が何か気づいた様子は無かった
それもそれで少し嫌だったんだと思う
白布 賢二郎
△△ ○○
△△ ○○
○○は苦い顔で謝ってきた
別に謝るのが嫌だからそんな顔したわけじゃないことくらい分かる
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
演技じゃないことだって分かってる
どうして素直に言えないのか自分でも分からない
けどヘアピンを渡した時に
少しだけ安心したように緩ませた目を見たら
少しだけ、嬉しくなった
それに、一緒にいることが多くなってから気づいた
助けたのが俺じゃなかったからって別に良いじゃないかって
ただ、授業を受けて、部活をして、○○と口喧嘩をする
その何の変哲もない生活に俺はそれなりに満足していたし
あの時の泣いていた○○よりも今の方が良いということはわかっていたから
思い出さなくてもいい、気づかなくてもいい
俺も、別に言わない
ただ、今の生活を普通に過ごすことが1番良い事だ
男バレ部室
俺も○○も素直な性格じゃない
そんな○○が言った
助けてほしい
そんな、たった一言
七夕の時の五色と噂になってしまった時だ
素直に嬉しかった
信じられないと言っていた彼女が、俺を信じて頼ってくれたのだから
逃げるだとか攫うだとか
そんな細かい約束なんてもう、どうでもいい
助けてやりたいと思ったから助ける
理由なんてそれでいい
ついこの間の夜は本当に驚いた
あんなに怯えてるのを見るのが初めてだったから
変わったように見えて、彼女の境遇は何一つ変わっていなかった
でも助ける手段を俺は持っていない
逃げろとしか言えない
よく考えたら、なんて無責任な約束なんだろうな
攫うなんて王子でもあるまいし
でも、助けてやりたい気持ちはがあるのも確かだ
もう、出会ったあの日から
ただの他人ではなくなってしまったから
白布の部屋 (過去終わり)
勉強の息抜きに、俺はベットに仰向けに寝っ転がった
もう、ずっと気づいてないだけだ
いや、本当はちょっと前から気づいていた
その事実が信じられないだけで
何故か認めたくないだけで
白布 賢二郎
誰も見ていないのに、熱を持った顔を腕で覆う
出来れば気づきたくなかった
俺は
ずっと前から
出会ったあの日から
○○が︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎好き︎︎"︎︎なんだ
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし
迷子の男の子
△△ ○○
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
△△ ○○
迷子の男の子
迷子の男の子
白布 賢二郎
白布 賢二郎
△△ ○○
それに
「ありがとう」と、笑った笑顔が
すごく可愛かったから
コメント
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し、ら、ぶ、ん♪し、ら、ぶ、ん♪
見るの遅れた~、 え、ほんとに神ですか? 白布が恋!やばい展開になってますね、テンションめっちゃ上がってます⤴︎︎︎ 続き楽しみに待ってますね🎶