…お昼休み。
私たちはいつもどおりのカフェテラスで待ち合わせていた。
珍しく中国さんが一番乗りで待ち合わせ場所にいた。
あとから私と、反対側からきた韓国さんが同時に到着した。
日本
韓国
中国
…それから、何も喋れなかった。
何を喋っていいか、わからなくって。
だって、だって...あんなことが、あった後で...。
中国
韓国
そのとき、だった。
コツン、コツン、コツン。
背後から、三人の足音が聞こえた。
びっくりして、振り返る。中国さんや韓国さんにも聞こえてたみたいで、皆して後ろを振り返った。
…だけど、だれもいなかった。
不意に、手が動く。
それが、韓国さんの方へ動いて_____
韓国
日本
いつの間にか、私は、もっていた。
あの路地裏でも見た...あのナイフを。
中国
日本
日本
その瞬間、聞いたことのない耳鳴りが襲った。
世界が一瞬止まった錯覚に陥った。
長い長い一瞬のうちに、自分の耳に何かが聞こえた。
…夢の最後の、あの声だ。
???3
びく、っと身体が震え上がる。
…その声が、前の自分にそっくりだったから。
???3
________何度も何度も、心臓が跳ねる。
やがて聞いたこともなかった耳鳴りは突如として消え、世界が動き始めた。
…動き始めた世界でも、三人とも無言で一緒に居続けることしかできなかった。
アメリカ
扉の方から彼の声が聞こえる。____アメリカだ。
ロシア
アメリカ
アメリカ
ロシア
そんな感じで軽口をお互い言い合いながら、アメリカはようやく席についた。
イギリス
アメリカ
向かいの席のイギリスが話しかけてくる。
会議室も人が多くなってきて、がやがや、と騒がしくなってきたときだった。
_______聞こえる。6つ分の足音が、重なって。
奇妙だなと思い会議室の扉を見てみても、そこには6人もいない。
たったの三国______日本、中国、韓国しかいなかった。
ロシア
アメリカ
ロシア
俺の隣に、中国がくる。日本は向かい側で、韓国は今日はアメリカの隣みたいだ。
_____椅子に座るときですら、カツン、カツン、と別の足音が響く。
アメリカ
ぽつり、と呟く。
まもなくして、世界会議が始まった。
会議が開始して、かなり時間が経った。
珍しく今まで集中していたアメリカが、やっぱり空気を読まずハイテンションで韓国に話しかける。
アメリカ
そんな声が隣から聞こえる。
そういえば、あの後韓国はちゃんと休めただろうか。
自分もきになって、その会話を聞くことにした。
…だが、会話がない。
おかしいなと韓国の方をみると、机を見つめていた。
アメリカ
アメリカがそう言っても、韓国はなにも言わなかった。
アメリカ
韓国
アメリカが韓国に触れようとした、その時だった。
地を這うような声。小さな声での命令。
ぽつり、と。
そう呟いただけなのに、身体が、息が、鼓動がとまった。
そして背後には...なにかがいる、ような気がする。
でも、別に見た目は普段通りで。
あまりにもその現象が異様で、怖くなって隣りにいた中国に話しかけた。
ロシア
恐る恐る話しかける。
中国がゆっくりとこちらを向くと、中国の影がおかしな方向へ伸びたような気がした。
ハッとなって見てみても、その時には別に違和感はなかった。
中国
中国の声がした。だから、再び彼の顔を見た。
それだけだった。
______酷く無表情だった。
声も全く震えてない。瞳には、生気を宿していなかった。
ロシア
次の瞬間だった。
自分のすぐ横に、"かつての国"の影のようなものが立っていた。
驚いて振り返るも、なにもなかった。
ロシア
また正面を向くや否や。
吹き飛ばされる感覚があった。
ロシア
目の前に佇んでいるのは、中国だった。
先程まで両眼とも綺麗な赤色だったのに、右眼が金色に光っていた。
中国
手が再び首に触れ、圧迫される。未知の恐ろしさで、動けない。
世界会議も止まったらしく、後ろからアメリカやイギリスの声もした。
中国
暗い暗い、紅と金の瞳が、眼前にまで迫る。
アメリカ
その声で、中国の手は緩んだ。
突然肺に空気が流れてくると、思わず咳き込んでしまった。
アメリカ
ロシア
アメリカが背中を擦る。
壁を見てみると、思いっきりヒビが入っていた。
警戒していなかったとはいえ、こんなに衝撃を入れられるって...
恐怖で座り込んでいると、後ろからカチャン、という音が聞こえた。
そこにあるのは_______
イギリス
日本
…ナイフ、だった。
イギリス
日本
あわてて日本がナイフを会議室のゴミ箱に放り投げる。
日本は知らないが...中国に関しては、同じことが2回も起きた。
ロシア
日本
アメリカ
中国
韓国
日本
そうして、三人の影は見えなくなった。
…6人分の足音を、鳴らしながら。
人とすれ違うたびに湧いてくる、殺意。
過剰な防衛本能、保護欲。
風すらないのに、袖が後ろに引っ張られる違和感。
あれからさらに酷くなっている気がする。
今は三人で帰っているが...いや、だからこそ余計に、かもしれない。
お互いに、無言。もう、さっきので分かりきっていた。
全員に、同じような異変が起こっている。
それは、我と同じようなものなのか。或いは別のものなのか。
わからないけど、とにかく今、全員に異変が起こっている。
きっと...あの夢のせい。
内容は全く覚えてない。
でも、我の自我がそう叫んでいた。
あれから、どれだけ経っただろう。
もうそろそろ家のはずだった。
後は玄関の鍵を開けて、上がるだけ。
…だというのに、後ろから変な足音が聞こえた。
恐る恐る、振り返る。日本や韓国も同じ状況なのか、同じように後ろを見た。
何もいない。
…でも、今度はとまらなかった。
日本
中国
混乱しているせいか、鍵をなかなかうまく回せない。
早く、早く、早く!!
ガチャ。
鍵が回り、引き抜き、急いで扉を開けようとしたときだった。
______肩に、触れる。
日本じゃない、韓国でも...ない? いや、彼なら目の前に_____
韓国
ガチャン、どっ。
勢いよく扉が開いたかと思えば、気がついたら家の玄関にいた。
韓国
中国
もう触られている感覚はない。
…だけど、肩の皮膚に爪が食い込んだかのような不快感が、
残っていた。
コメント
2件
うーむ……やはり洗脳や防衛本能は怖いな……こういうシリアスなもの好きなんで次回も期待してます!!