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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

 二人は用務員室を出て再び中央ホールを目指していた。  作戦はいたって単純だ。  風香が物体の足止めをして、その間に陽斗が二階の所長室からパラコートの原液をとってくる。  逆の方がいいんじゃないか? と陽斗に言われたが、風香は「もしも最後になにかロックがかけられていたら私じゃ解けないもの」といった。

北原 風香

「でも急いでね。早くしないと死ぬから。本当に」

葛城 陽斗

「ああ、がんばるよ」

 二人は拳をぶつけ合い、再び中央ホールに戻ってきた。  物体は相変わらず巨人のままだった。  陽斗がその脇を抜けて反対側の廊下に向かおうとしたところで、物体は陽斗に爪を振り下ろそうとした。  その隙に風香が物体の太ももを鉈で切りつける。  物体はバランスを崩して爪を空振りした。  これで陽斗は突破できた。  あとは時間を稼ぐだけだ。  それが一番の問題でもあるけれど。

物体

「コホォオオオオオオオオ……」

 物体の足が再生し、髑髏のような顔で風香を睨みつける。  物体の背中が割れて、中から大量の細い触手が現れた。

北原 風香

「あんたが吸収した人たち、遊星からの物体エックスでも見てたのかしらね!」

 触手が襲い掛かってくるが、風香は後ろに下がりながら迫りくる触手を切り落としていく。  動きは早いが見切れないほどではない。  夜の雪原でどこから来るかもわからない罠に怯えるよりずっと楽だ。  あちこち火の手があがっており、徐々に逃げられるスペースがなくなってきた。  天井にも火の手が回っており、いつ天井が崩落してくるかもわからない。  風香と物体の命がけのダンスは、いつまでも続いた。

北原 風香

(いつまでつづければいいの。早くもどってきてよ、あの馬鹿!)

 心の中で悪態をつきながら、物体が振り下ろした爪を躱す。  物体が振り向いたところで、目を切り裂いた。  物体は顔を押さえて後ずさりし、風香はその間に呼吸を整える。

北原 風香

(よし、パターンはつかめた。切って、ひるんだ隙にちょっとだけ休憩。このまま繰り返せば三十分はもつ)

 自分の体力を分析し、正確に残り時間を算出する。  三十分もあれば陽斗はきっと戻ってくる。  生きることだけに専念しなければ。風香はそう思っていた。  ところが物体が、姿を変え始めた。  いまのままでは風香を仕留められないと判断して、より最適な姿になることを選んだのだ。

北原 風香

「なにに化けるつもり?」

 風香が固唾を飲んでいると、物体はーーーー陽斗の姿になった。

北原 風香

「おりゃああああああああああああああああ!」

 風香はすかさず首を跳ね飛ばした。

北原 風香

「愚か! 愚かだわ! いまちょうどぶった切ってやりたいと思っていた男に化けるなんてね!」

 物体はよたよたとふらつき、再び姿を変え始めた。  もうなにがきたって平気。このまま時間いっぱいまで逃げ切るだけ。風香は勝利を確信していた。  ところが、物体が変化した姿を見て、風香は息を飲んだ。

???

「風……香……」

 黒髪のおかっぱ頭。大きな黒曜石のような瞳と、ルージュを塗ったように赤い唇。やせぎすで色白で、病的ながらどこか神秘的な美しさを放つ少女。  ぼろぼろのセーラー服に身を包んだユリが、そこにはいた。

ハイパー・オカルト・サイエンスー三流ゴシップ誌の女記者と無精ひげのプー男が挑む超常科学事件簿ー

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