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数時間はもう経っている。
眦を赤く酔わせた彼女はまた、アルコールの煌めくグラスへ口を添えた。
最初からずっとこんな感じだ。
突然居酒屋に誘われて、来てやったら彼氏がこうで、ああだ。
そんな話ばっかり、つらつらと途切れなく紡がれている。
しかも時折泣きそうな顔をするもんだから、思わずため息が溢れそうになる。
信じらんない!と声を上げて、やけになってアルコールをまた飲み干した。
えっと、なんだっけ。 今は確か、彼氏がまた浮気してたって話だっけ。
なんでこいつもそんな奴と付き合うんだろうな、
俺には全く分からない
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正直に言ってみたら、ベタベタに甘い言葉を言われて耳を塞ぎたくなった。
こんな話男の俺じゃなくて女友達にすればいいものを。
好きな子の口からよそ見ばっかの野郎の話を聞かされてもいい気はしない。
とは言いつつ俺も俺だ。
早く別れればいいのにだの、俺にすれば?だの、在り来りな台詞は頭の中を過ぎるだけで彼女に向けたことは未だ無い。
とろりとした瞳がテーブルに向く。
呟く声は少し掠れていた
そろそろ店員さんにお冷頼まんと。なんて考えていると、俺の手の甲につん、つんと柔らかい感触。
いじらしく呼びかけるもんだから、ついつい視線が絡め取られるのも、惚れた側の弱みやと思う。
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歯切れの悪い彼女の目線はまだテーブルの上をさまよっている。
彼女の指先も、まだ俺の手の甲で踊っているまま。
かと思えば、
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柔らかな呂律で飛び出してきた言葉に、俺の語彙は破壊寸前。
それでも酔った彼女は止まらなかった。
けたけたと笑いながら冷えた指先が離れていく。
それを無意識に追いかけて捕らえると、きょとんとしたまぁるい目が不思議そうにこちらを見た。
人の気も知らんと、こいつは…
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在り来りにも程がある言葉。
いや、こっちは冗談じゃないんじゃ、馬鹿
当の馬鹿は最早この話は何処へやら、くすくすと笑っている。
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呆れていると、机の上に放り出されていた彼女の携帯から通知音が聞こえた。
ぽつり、酔いに溺れる唇が紡ぎ出したのは、彼女の視線を独り占めしている、くん付けで呼ばれている余所見野郎の名前。
彼女の手がぴくりと震える。
返事を返すのか、抜け出そうとするその手を今度は指を絡めて繋ぎ止めた。
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目の前の戸惑う瞳はぐらりと揺れる。 ゆるやかに下方向を彷徨って、それからまたこっちに戻ってきて。
戸惑いに泣き出しそうで、けれど眦に漂うのは何か違うもの。
赤い唇がはくりと震える。
少し掠れたその声が、かかとしか見えなかった彼女のつま先がくらりと揺らいだ瞬間の事だった。