日の当たらない部屋。
私は側室の子だから、北条家の中では優遇されてはいない。 きっと、有力な武将の子を産むだけの器と思われているだろう。
奥の暗くて冷たい部屋に押し込められずにここにいられるのも、きっと…
彗
高氏…
召使い
彗様…?
高氏様をお呼びしますか?
高氏様をお呼びしますか?
彗
あぁ、声に出ていました?恥ずかしい…
召使い
…ふふ、本当にお好きなのですね
彗
えぁ、ま、まぁ…はい、そうですが…
ドスドスドス…
彗
…来客ですか?高氏では無いですね
召使い
あちらの本棟から離れた場所に?珍しいですね
ドスドス、ピタ……
彗
私に用があるみたいですね
召使い
危険を感じたらすぐに奥の部屋へお逃げくださいませ。
彗
わかっています。
ガラララ……
雌黄
来てあげましたわよ、なんでしたかしら、セイでしたっけ?
彗
呼んでいませんわ。あと、私は彗ですよ、雌黄さま。
雌黄
あそうそう彗ですわ!地味くさいので忘れてしまいましたの!ごめんなさいね?
彗
はぁ……そうなんですね。
まぁ、目立たないに越したことはありませんから、お気になさらず。
まぁ、目立たないに越したことはありませんから、お気になさらず。
雌黄
……つくづく鼻につく小娘ですこと。可愛げが全く無いですわ
雌黄
これじゃぁ、高氏様に見捨てられるのも時間の問題では?オホホ
雌黄の召使い
失礼になってしまいますわよ雌黄さま……クスクス
彗
………なんですか、言いたいことがあるならはっきり仰られては?
雌黄
ですから、側室の子でそのような小汚い風貌…
それに、たいして可愛らしい顔も持ち合わせていない…
それに、たいして可愛らしい顔も持ち合わせていない…
雌黄
正室の子であるこの私とは大違いですわねぇ?と言ってるんですのよ?
雌黄の召使い
クスクス………
彗
あら、良いんですか?
その物言いでは私を選んでいる高氏様もろとも愚弄していることになりますけれど。
その物言いでは私を選んでいる高氏様もろとも愚弄していることになりますけれど。
雌黄
はぁ?
彗
口の聞き方は礼儀作法で学ばなかったんですのね?
雌黄
っな…………!この小娘………!!!
彗
そもそも…お互いに想い合って愛を伝えているというのに…
彗
愛し合う二人を引き離すなんて、どんな鬼ですの?
雌黄
お前のことなんて高氏さまはお好きでない!!
雌黄
正室の私の方が高氏様の妻に見合っているわ!!
彗
そんなことはないと言っているでしょう!
雌黄
っな、なんですって!
彗
私の方があの方の良いところを知っている!
彗
どうせお前も最近彼が知名度を上げているから魅了されているのでしょう!
彗
心の底から好きでないくせに身勝手な!!
彗
私は高氏が…
彗
高氏が乱世の厳しさに呑まれていない、又太郎の頃から知っているんですよ!
彗
ぱっと出の女が調子に乗るな!!
彗
私が一番彼を愛しているんです!!
雌黄
〜〜〜〜〜〜っ貴様ぁ………!!!!!
高氏
ふんふん…♪
高氏
今日も今日とて、美しい我が姫君に会いに来てしまっている…
高氏
あぁ、どこまで我の心を蝕めば気が済むのだろう……!
高氏
あの声が、笑顔が、全てが、あの場にいる時だけ全て我のものとなる…
高氏
なんて甘美な…!
雌黄
……………!!!
彗
…………………!!!!!
高氏
…?姫君と…誰の声だ?
彗
私が一番彼を愛しているんです!!
高氏
…………ッ!
高氏
(そう思っていただいていた…しっかりと我を愛してくれていた…!)
高氏
(今すぐにでも彼女の元へ駆け寄り抱きしめたい…)
高氏
(だが、まだ開ける時ではないだろう…それに、もう少し、もう少しだけ)
高氏
彼女の愛言葉を聞いていたい…
雌黄
お、お前なんて!!!穢らわしい小娘が!!
パチンッッ!!!!!
彗
っ……!!!
雌黄の召使い
おやめください雌黄様!これでは我々が悪者にございます!
雌黄
うるさい!指図するな!!
バチッッ
雌黄の召使い
キャァ!!!!!
彗
貴方、自分の召使いにまで手を上げるなんて…!?
雌黄
どいつもこいつも!私が愛されれば良いのに!!
雌黄
私が……私が一番なんですのよ!
ガラガラガラ
高氏
……それは違うなぁ。我にとっては、そこに居る姫君が何よりも尊く可愛らしく見える。
雌黄
高氏様…!?!?
彗
高氏…
高氏
お待たせしてすみませぬ、姫君。今日も今日とて我慢できず、この高氏、貴方様に会いに来てしまいました。
彗
最後に会ったのは昨日の夕餉のはずですが…?
雌黄
っ、高氏様!あのような醜女よりも、私を…!
高氏
……今、我は姫君と話している。
高氏
なぜ邪魔をする?
雌黄
っ………!!!
雌黄の召使い
し、雌黄様、行きましょう…!
雌黄
っ…!!ッチ……!!
ドタドタドタドタ
彗
行ってしまいましたね…
高氏
…………
彗
その顔をおやめなさい、私は別に平気ですから
高氏
そうはいきません、姫君。貴方様の柔い玉のような肌が赤く腫れております。
高氏
「あれ」にも、相応の罰を与えるべきだと…
彗
あれではありません、彼女です。
彗
別に良いのです、私が本棟のものに疎まれていることなどとうに知っていますから。
高氏
姫君…なんと慈悲深い…
彗
…それより、今日は何用で?
高氏
あぁ、そうでした!姫君、我と共に本棟へ向かう気はありませぬか?
彗
…いやです、あちらに行くと私が怒られてしまいます。
高氏
何かあれば我が言いまする!ですから、どうでしょうか!
彗
………わかりました
高氏
では、参りましょう!
メテオ
皆様、おせわになっております、メテオです。
メテオ
前回の更新から期間が空いてしまい、大変申し訳ありませんでした
メテオ
少しずつですが進め、完結させる予定です、長くお付き合いくださいませ。
メテオ
そして、次回からいよいよ彗と高氏の本格的な恋愛パートに入ります。
メテオ
こちらも一話時点でお知らせしておくべきだったのですが、最終的には彗はバッドエンドで終わろうと考えて話を進めております。
メテオ
次回からそれとなく死の匂わせや彗の悲観的な表現が多くなるため、ご注意ください。
メテオ
それでは、また次回のお話でお会いできることを楽しみにしております。