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第1話 - あ

2023年08月27日

#恋愛

結城　真矢

クミ

ミソノ、明日コウダを預かってくれない？

クミ

PTA役員会の飲み会が入っちゃってさ

ミソノ

は？

ミソノ

旦那はどうしたの？

クミ

旦那は出張でいないのよー

ミソノ

最近、毎日コウダを預かってる気がするんだけど

ミソノ

そんなに二人とも忙しいの？

クミ

どうせ暇なんでしょ？

クミ

専業主婦なんだし

クミ

別にいいじゃない

クミ

ミソノにとっては可愛い甥っ子でしょ？

ミソノ

専業主婦はお互い様でしょ？

ミソノ

それに甥っ子だからってこうも頻繁に預けられちゃ困るんだけど

クミ

あら

クミ

何か不都合でも？

ミソノ

コウダはヤンチャすぎるのよ

クミ

ヤンチャ？

クミ

なにか迷惑でもかけた？

ミソノ

迷惑はかけられっぱなしなんだけど

ミソノ

うちの床全面に落書きしたり

ミソノ

壁を殴ったり蹴ったりしてさ…

ミソノ

この前なんて、それのせいで穴が空いたんだよ？

クミ

元気は良いんだけど我が家が損害を被るのは困るんだよね

クミ

子供だから仕方ないでしょ？

クミ

小学校低学年って体力が有り余ってるのよね

クミ

まぁ、ミソノには子供がいないからわかんないと思うけど

ミソノ

ねぇ、こんな頻繁に他所へ預けてて大丈夫？

クミ

大丈夫って何が？

ミソノ

コウダよ

クミ

コウダが？

ミソノ

全然親と一緒に入れないとストレスが溜まるんじゃないの？

クミ

平気よ

クミ

あの子は能天気なんだもん

ミソノ

でも、やっぱりこうも頻繁だと…

クミ

私は最近忙しいの

クミ

PTAの役員にも選ばれちゃったし

クミ

ママ友の集まりにも結構お呼ばれしちゃうのよね

クミ

ほら、私って人の輪の中心になりやすいっていうかさ

クミ

リーダー気質なのよね

クミ

きっと

クミ

みんな私を頼りにしちゃって困っちゃうわ

ミソノ

困っちゃうって…

クミ

とはいえ、コウダを家に1人で置いとくにはまだ不安があるしさ…

ミソノ

学童保育には入れないの？

クミ

学童はね、いつも喧嘩してるクラスメイトが通ってるみたいなのよ

クミ

だから行きたがらないのよね

クミ

他所に預けるよりもストレスがかかっちゃうみたい

ミソノ

分かったわよ…

ミソノ

いつも通り、暗くなる前には家に帰すからね？

クミ

ありがと〜

クミ

いつも助かるわ！

〜1ヶ月後〜

クミ

ミソノ、今日コウダを預かってよ

ミソノ

え？今日？！

クミ

そうなの

ミソノ

突然すぎる

ミソノ

なんでよ

クミ

私の友達が緊急入院したみたいで

クミ

お見舞いに行きたいのよ

ミソノ

なら、コウダも一緒に連れていけば良いんじゃないの？

クミ

コウダは今、学校に行っててさ

クミ

帰ってくるのが15時すぎるの

クミ

ただ、病院の面会が感染症の関係で15時までみたいなのよ

クミ

コウダが帰ってくるの待ってたら間に合わないわ

ミソノ

そう言われても…

ミソノ

今日預かるのは難しいなぁ…

ミソノ

ごめんね

クミ

なんでよ

クミ

あんた専業主婦でしょ？

クミ

しかもPTAの集まりもママ友の集会もないじゃない

クミ

暇でしょ？

ミソノ

そこまで暇ではないけど…

ミソノ

今日は役所に行かないと

ミソノ

他にも買い物とか色々家事とか予定があるし、いきなり言われて今日預かるのは…

クミ

じゃあコウダを家に1人ぼっちにしとけって言うの？

クミ

それで事故があったらどうするの？

クミ

犯罪に巻き込まれたり

クミ

ミソノが責任とってくれるの？

ミソノ

それは責任負えないけどさ

クミ

じゃあ預かってよ

クミ

家に置いとくだけで良いのよ

ミソノ

分かったわよ…

ミソノ

17時までには家に帰すよ？

クミ

オッケー

クミ

私もそれまでには帰るから

クミ

コウダにはメッセージ送っておくわ

クミ

ありがと！

〜17時〜

クミ

ミソノ、ごめーん

クミ

病院からの帰り道にさ

クミ

PTAの友達にバッタリ会っちゃって、このまま飲みに誘われてるんだけど

クミ

コウダまだいるわよね？

クミ

そのまま明日まで預かっといてくれない？

ミソノ

は？

ミソノ

もう17時だから少し前に返したけど？

クミ

え？

クミ

早くない？

ミソノ

早くないよ

ミソノ

私、17時までには帰すって言ってるでしょ？

ミソノ

時計読める？

ミソノ

え？

ミソノ

まさか家に寄らずに遊びに行くつもりなの？

クミ

帰り道に会ったって言ったでしょ？

クミ

それに普通帰す前に連絡よこすでしょ？

クミ

私の帰りが間に合わない可能性だってあるでしょ

ミソノ

いやいや

ミソノ

私は17時までに帰すって言ったでしょ？

ミソノ

なら、17時までに帰るのが当然でしょ？

クミ

私に何かあって帰れなくなる可能性を考慮してよ！

ミソノ

それなら、事前に言っといてよ

クミ

もー…今から帰るけど間に合わないかも

クミ

気が利かない人やな！

ミソノ

気が利かない人にいつも預けてくるのは誰でしょうか

クミ

ホンマ、むかつくわ！

クミ

もうすぐ家やけど、今回のこと反省しといてな！

ミソノ

何を？

クミ

分かるでしょ！

クミ

ちょっと！

ミソノ

何よ？

クミ

コウダが居ないんやけど

ミソノ

え？

ミソノ

今17時40分だよね…

ミソノ

普段なら10分あれば着くのに…

ミソノ

コウダにはお母さんが居なかったら戻ってくるように言ってたけど…

ミソノ

スマホで連絡はとれないの？

クミ

メッセージ送ったり、電話かけてるけど出ないのよ！

クミ

こうなったのはミソノのせいだからね？！

クミ

1人で帰したりするから！

ミソノ

小学３年生でしょ？

ミソノ

明るいうちに帰してるし人通りが少なくない道を10分かけて歩くぐらい…

ミソノ

こっちだって忙しい中預かってるんだから

ミソノ

いちいち送迎なんてできないよ

クミ

じゃあ何？

クミ

息子に何かあっても知らないっていうの？！

クミ

ホンマ冷たい女やな

ミソノ

そんなこと言ってないけど…

ミソノ

もしかしたら小学校に戻ってるかも？

ミソノ

学校に電話してみたら？

ミソノ

私はその間にコウダに連絡とってみる

クミ

それで居なかったらアンタ訴えるからな！

ミソノ

なんでそうなるのよ…

〜その直後〜

ミソノ

コウダ？

ミソノ

今どこにいるの？

コウダ

あ、おばちゃん

ミソノ

ああ、よかった

ミソノ

無事なの？

コウダ

うん、大丈夫だよ

ミソノ

お母さんが連絡取れないっていうからさ

ミソノ

心配してたんだよ？

コウダ

だって、家に帰ったら誰も居なかったんだもん…

コウダ

だから、他の子のとこ行ってたんだ

ミソノ

そうなのね

ミソノ

おばちゃんの家に帰って来れる？

コウダ

うん！

ミソノ

じゃあ、待ってるわね

コウダ

あのね、おばちゃん帰ったら聞いてほしい話があるんだ

ミソノ

ん？

ミソノ

何かしら？

ミソノ

何でも聞くわよ

〜30分後〜

ミソノ

姉さん、コウダ見つかったよ

クミ

ホンマ！？

クミ

どこにいたん？

ミソノ

さっき、うちに帰ってきたよ

クミ

ああ、よかった

ミソノ

帰ったら誰も居なかったから友達の家に遊びに行ってたみたい

クミ

そうなの

ミソノ

でもね、友達の家のインターホンを鳴らしても何も返事が無かったみたい

クミ

へぇ

ミソノ

それでね

ミソノ

庭に回って窓から室内を覗き込んだみたいなのよ

クミ

…コウダがそんなことを？

ミソノ

ええ

ミソノ

どうも、その友達の家にはよく行ってるみたいで

ミソノ

そうやって驚かすのが好きみたいよ

ミソノ

まぁ、家の中には上がらなかったみたいだから許してあげてよ

クミ

ちょっと待ちなさいよ

クミ

その友達の名前聞いた？

ミソノ

ん？

ミソノ

どうしたの？

ミソノ

急に動揺してない？

クミ

してないわよ

クミ

家の中には上がり込んでないけど、敷地内に入ったことは間違いないんだから

クミ

後日謝りに行かなきゃいけないでしょ

クミ

早く教えなさい

ミソノ

山田くんって言ってましたよ

クミ

そう…

クミ

何か見たって言ってた？

ミソノ

え？

ミソノ

どうしたの？

ミソノ

そんなに気になる？

ミソノ

実はねコウダ見たんだって

ミソノ

姉さんと山田くんのお父さんがリビングのソファで裸同士で抱き合っているところ

クミ

へ？

クミ

裸同士？抱き合ってる？

クミ

何言ってんの？

クミ

何かの勘違いじゃないの？

クミ

きっと私が帰って来なかったから腹いせに嘘ついて私を困らせようとしてるのよ

クミ

子供の言うこといちいち間に受けなくて良いから

ミソノ

コウダがね

ミソノ

私の家に戻ってきた時に肩を落として泣いてたんだよ？

ミソノ

あんなに辛い目に合わせといて、子供が嘘ついてるっていうの？

クミ

じゃあ、何かの見間違いよ！

ミソノ

家の中に居たのはお母さんだったって言ったよ！

ミソノ

それに写真も撮ってたし

クミ

は？

クミ

写真…？

ミソノ

コウダが持ってたスマホを使ってね

ミソノ

コウダも信じたく無かったみたいよ

ミソノ

お母さんが自分を放っといて他の男と情事に勤しんでるなんて

ミソノ

だから第三者に確認してほしくて撮ったんだって

ミソノ

家に帰ってお母さんと顔を合わせるのが辛いとも言ってたよ

ミソノ

可哀想…

クミ

アンタ！

クミ

息子に変なこと吹き込んだでしょ！

ミソノ

は？

ミソノ

私が？

ミソノ

コウダに何を吹き込んだって？

クミ

自分のせいで甥っ子を行方不明にさせたもんだから

クミ

責任回避のためにありもしない話をでっち上げてるのよね！

クミ

呆れた！

ミソノ

あくまで、コウダが見たものを認めず不倫は認めないと？

ミソノ

写真も信じないと？

クミ

認めるも何も私は不倫なんてしてない！

ミソノ

そうなの…

ミソノ

じゃあ、この写真をPTAの方々に見てもらってもいい？

ミソノ

どう見ても姉さんなんだけどなぁ

クミ

やめてよ！

クミ

変な誤解を生むでしょ！

ミソノ

実はね

ミソノ

山田くんのお母さんには今回の件を報告してるのよ

クミ

は？

クミ

何してんの…？

クミ

いや、そもそもアンタが連絡先なんて知るわけない…

ミソノ

コウダが知ってたわよ？

ミソノ

よく行く家だからご家族とも連絡先を交換してたみたい

ミソノ

でね

ミソノ

山田くんのお母さん、家に帰ってすぐに室内を調べたみたい

ミソノ

そしたらリビングに奇抜な色の長い髪が落ちてたみたい

ミソノ

でも、家族にはロングヘアそれも奇抜な色の人はいないみたいで

ミソノ

それを旦那さんに問いただしたそうだよ

ミソノ

そしたら、旦那さん不倫を認めたってさ

クミ

そんな…

ミソノ

姉さんと違って潔い人だったんだねぇ…

ミソノ

まぁ、不倫をしといて潔いっていうのも…

ミソノ

なんか…ねぇ？

ミソノ

不倫なんてものは探偵とか興信所とか第三者を雇えばすぐにバレることだから

ミソノ

大事になる前にさっさと認めて内々に収めたかったのかしら

ミソノ

早めに白状すれば罪が軽くなったと思ったのかしらね

ミソノ

でも、甘かったみたい

クミ

は？

クミ

何があったのよ…

ミソノ

えっとね

ミソノ

今、山田くんのお母さんから私にメッセージが届いたんだけど

ミソノ

そのまま送るね

ミソノ

この度は不倫のご報告ありがとうございました

ミソノ

元々優柔不断な旦那で怪しい節は時々ありましたが

ミソノ

尻尾を掴みました

ミソノ

この尻尾は離さず、大々的にPTAや弁護士にまで引き継いでいきます

ミソノ

だってさ

ミソノ

残念だったわね

ミソノ

今回の件はPTA中に知られわたることになったし

ミソノ

弁護士にも話すっていうことだから離婚は免れないわね

ミソノ

もちろん姉さんの家も離婚沙汰になるんじゃない？

ミソノ

旦那と子供を裏切ってたわけだし

ミソノ

当然よね

ミソノ

言い逃れできるなんて思わないでよね

クミ

本気じゃないのよ！

ミソノ

何がよ

クミ

彼とはその…

クミ

ちょっとした遊びのつもりだったのよ

クミ

最初は子供のことや家族のことを話すだけだったの

クミ

でも、話していくうちに段々意気投合しちゃって

ミソノ

それで一線を越えたって？

ミソノ

普通しなくない？

ミソノ

それに、さっき嘘までついてたし

クミ

嘘？

ミソノ

そうでしょ？

ミソノ

コウダが嘘ついてるって

ミソノ

自分の保身のために子供を嘘つき呼ばわりしてさ

ミソノ

サイテーな母親だわ

クミ

だって不倫してたなんて公になったら家族の関係にヒビが入るじゃない

クミ

家族がバラバラになったらコウダを不幸にさせちゃうわ…

ミソノ

大丈夫でしょ

ミソノ

家族のヒビなら以前から入ってたと思うし

ミソノ

もう家族はバラバラになってるから

クミ

は？

ミソノ

コウダはお母さんに会いたくないって言ってるわよ

クミ

そんな！

ミソノ

だからお母さんの連絡を無視してたんでしょ

ミソノ

このまま旦那さんが仕事終わるまで預かって、コウダは旦那さんに渡すわ

クミ

やめてよ！

クミ

コウダを返して！

ミソノ

このあとは、２家族と弁護士さんとで話し合ってね

〜後日談〜

ミソノ

その後分かったことですが、クミがママ友やPTAと言っていたのは嘘でした

ミソノ

ずっと山田くんのお父さんと逢引きしてたみたいです

ミソノ

家族はそれぞれ離婚し、コウダの親権は父親が取りました

ミソノ

1人になったクミは山田くんの旦那さんと一緒になることもできず

ミソノ

一人でどこか離れた地へ引っ越していきました

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結城　真矢

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