週末、青葉城西は練習試合の遠征に出ていた。
体育館の隅では私がスポドリの準備をしながら、
ふと、視線をあげる。
コートの上で躍動する選手達。
その中心には背中で引っ張る大王様がいた。
(及川くんって本当にすごいな)
けれど、私だけは彼の凄さの裏にある、
誰にも見せない焦りや孤独を知っている。
だからこそ、その背中に祈るような気持ちで目を向けてしまう。
_その目に映る姿が、いつか壊れてしまわないように。
試合後、からになったスポドリの容器を洗っていた私に、
及川がやってきた。
及川 徹
少し汗を残したままの顔はどこか曇っていた。
遠征先の夜の空気はまだ少し肌寒くて、
2人は静かな公園のベンチに腰かけた。
及川 徹
天音 夜空
及川は無言で、自分の拳をじっと見つめる。
及川 徹
及川 徹
私はその横顔を見つめる。
天音 夜空
及川 徹
その短い返事が、妙に切実だった。
及川 徹
及川はポツリと言った。
及川 徹
及川 徹
その声に私の心が揺れた。
天音 夜空
及川 徹
天音 夜空
口にしてから、息を呑んだ。
及川も目を見開いたまま動けない。
春の夜風が、2人の沈黙を包み込む。
及川 徹
静かに、及川が私の手をそっと握った。
あの日、あの屋上で触れられた時よりも、ずっと確かな温度だった。
及川 徹
天音 夜空
及川 徹
心の奥に触れられたような言葉だった。
それは誰よりも器用に笑う彼がみせた、真っ直ぐな素顔。
私の胸がじんわり熱くなる。
天音 夜空
及川 徹
及川 徹
真っ直ぐな答えに私の目尻が緩んだ。
その夜、2人は少しだけ世界から抜け出して、
やっと
"過去"
ではなく
"今"
を生き始めた。
けれど_
その手を取った先に、まだ、知らない痛みが待っているとも知らずに_
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