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圭音side 昼休みにご飯を食べ終え 今から練習に向かおうとしている時に 父親から電話がかかってきた。 内容を聞いていつの間にか スマホが床に落ちていた。 慌ててスマホを持ち上げる。

福島

嘘でしょ…

圭音父

『そういうことだから来れそうなら来て。あとは頼んだ。』

そう言い終わり通話が切られた。 話を聞いていたのか 修也と蒼生が寄り添ってくる。

山田

ほらやっぱり…

百崎

圭音さん行ってあげてくださいよ。じゃないとその子が可哀想です…

筒井コーチ

ほら行ってこい。

福島

いいんですか?

筒井コーチ

いいから。監督には俺から言っておく。それよりも仲直りしてこい。

山田

なんで知ってるんですか?喧嘩してること…

筒井コーチ

午前中ベンチで騒いでたら聞こえるって。ちゃんと仲直りしてこいよ。

福島

はい。すぐ戻ってきます。

直ぐに部屋に戻って 練習服から普段着に着替えて 美月がいる病院に向かった。

病院 集中治療室に向かうと 俺の父さんが部屋の外で待っていた。

福島

美月は?

圭音父

あそこ。さっきよりは落ち着いてるけどいつ亡くなってもおかしくないらしい。

福島

本気で?

圭音父

本気やって。これ美月ちゃんから圭音宛に手紙。本人の横で見たら?

福島

入っていいの?

圭音父

主治医の先生に許可とってるから。

父さんから手紙を受け取り 美月の部屋に足を向けた。

部屋に入ると 点滴や心電図など管に繋がれた 美月の姿があった。 今朝見た姿よりも 肌が白くて何も食べてないのが 目に見えてわかるぐらい痩せていた。

圭音父

起きて早々『圭くんごめん』とか言ってたけどなんかあったん?

福島

美月が植物状態になって1ヶ月間幽霊離脱で俺のとこに来てた。

圭音父

は?幽霊離脱?

福島

それで、今朝ちょっと喧嘩した。

圭音父

なるほどね…だからか…

福島

なにが?

圭音父

それ読んだらわかる。美月ちゃんそうやんな?

手を握った指先が微かに動いた。 父さんによると 微かに意識はあるらしい。 手に持っていた手紙を開くと たぶん美月のお母さんの字で 書かれていた。 読み進めていくと ほぼ謝っていたが 思い出と感謝を伝えているものもあった。 最後になるにつれて 手紙に涙が落ちていく。

圭音父

それとこれ。美月ちゃんの枕元にあったやつ。

差し出してきたのは 押し花にされて キーホルダーにされたもの。

福島

何この花…

圭音父

ツキミソウ。美月ちゃんが好きな花。花言葉は『無言の愛情』。美月ちゃんのお母さん言ってたけど、本人の名前の由来がツキミソウだって。

福島

なんで俺に…

圭音父

本人が渡して欲しいって。その手紙にも書いてるでしょ。最後の方。

最後の1行には 枕元にあるツキミソウの押し花を 持っていて欲しいと書かれていた。 もし重かったら捨ててもいいからって。

圭音父

1ヶ月間何があったか分からないけど思い詰めるなよ。

福島

なんで教えてくれなかったの…この人…

圭音父

野球に専念して欲しかったらしい。それと忘れられてるはずやからって。

福島

忘れるなんてないのに…

圭音父

美月ちゃんが元気な時にお見舞い来たらこれずっと持ってたよ。

ベッドのそばに置いてたのは 俺が高校に上がる時にあげた プーさんのぬいぐるみ。 だいぶ色褪せているが大事に 使われてる様子だった。

圭音父

圭音のことたぶん好きだったと思うよ。昔から引っ付き回してたし。

福島

なんか、幽霊で俺のとこ来た時に彼氏のフリして欲しいとかって言ってて…

圭音父

単に会いたい口実じゃないの?

福島

それならそうって…

圭音父

もしこの子起きたら『もうあれだけ迷惑かけたから会わない』とか言い出すと思うからね。

入っていいっすか?

圭音父

どーぞどーぞ。

圭くんごめんなこんな状態の娘だけど。

福島

全然大丈夫です…

これで良かったですか?微糖のコーヒー。

圭音父

ありがとうございます

ほら圭くんも。

福島

すいません…

受け取ったのは 美月が好きだったりんごジュース。 1口飲むと変わらない甘酸っぱい味。 小さい頃にみんなで出かけた時に 2人して同じりんごジュースを 飲んでいた。

2人してよく飲んでましたよね。りんごジュース。

圭音父

あの頃が懐かしい…

昔話を始めた親の話を聞くと 次から次へと思い出していく。 動物園にプール、近くの公園。 花火や水族館に行った思い出。 今思えば常に横にいたのが美月で 初恋も美月だった。 なんで今まで気が付かなかったのか 不思議だった。 意識が朦朧としている美月の横で 子供のように泣きながら 彼女の手を握るのだった。

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