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沙花叉クロヱ🎣
路地裏で転がる‘ソレ’に尋ねる 薄汚い男だったモノ たった数分前まで沙花叉に暴言を吐いていたモノ
沙花叉クロヱ🎣
もう息をしていないことを もう心臓が動いていないことを もう生きていないことを 理解した上で、もう一度尋ねる
沙花叉クロヱ🎣
狭い路地裏に転がる‘ソレ’を蹴り飛ばす ただ、邪魔だったから 死んだものに興味はない 生きている、感情を見せるもので無くては意味がない いつからだろう 殺しに躊躇が無くなったのは いつからだろう 殺しを楽しむようになったのは いつからだろう 殺しをやめたいと願わなくなったのは いつからだろう 殺しを自ら望むようになったのは いつからだろう 殺した後に感じるこの胸の痛みは
沙花叉クロヱ🎣
呟き、男の体を漁る 財布と時計、スマホを見つけることができた これで今日は殴られない、なんて安心感が 溜息となって口から出た
表通りに出ると、そこはいつも通りの賑やかさに満ちていた すぐそこの路地裏で人が死んでいる、なんて知らずに ただ、ただいつも通り 街は変わらず廻っていた
沙花叉クロヱ🎣
空を見上げ、呟く こんな周りにとっての日常の中に こんな普通の集団の中に こんな怪物が紛れ込んでいるのは 何故だろうか 誰も知らない、誰も分からない、そんな疑問を 星の見えない空に向かって呟いた
家に入ってすぐに、男に声をかけられる ソレは沙花叉の父と呼ばれている男だった
沙花叉クロヱ🎣
それだけ言って、金を手渡す 近づかれた瞬間、酒の匂いが鼻をついた 気持ちが悪くて、無言で男の横を通り過ぎた 通り過ぎようとした 男に腕を掴まれ、引き寄せられる まるで遠慮もなく、沙花叉の胸に触れる ただ、嫌悪感が湧き上がる 沙花叉のお母さんを殺したくせに 沙花叉と妹にアザを作っているくせに それでも尚、沙花叉の体を求める その男に、憎悪が溢れる 男の手を振り払う 可能な限り無感情に男を見る 下衆な笑いを浮かべる男に背を向け 今度こそ自分の部屋へ向かった
薄暗い部屋に入った瞬間、飛びついてくる小さな影 お姉ちゃん、と笑う妹の頭を撫でる ただ一人の愛おしい存在 沙花叉が守るべき存在
沙花叉クロヱ🎣
お土産がない事を謝る 大丈夫だよ、と笑う妹に申し訳なさが募る 疑似的な、幸福な空間 どこか白々しい、沙花叉の拠り所 この部屋の中では、妹の前では いつも通りのように 何も無かったかのように そう見えるように 振る舞う
沙花叉クロヱ🎣
唐突に、男の怒声が響いた 体が一瞬強張る あの男だということを理解し、鍵を閉める 怯える妹を抱き締める 男がドアを叩く音が響く 同時に聞こえる男の怒鳴り声に 金が足りなかったことを察する そして同時に、怒りが湧いた その金は 沙花叉が身を売って手に入れたものだ 沙花叉が痣を増やして手に入れたものだ 沙花叉が犯されて手に入れたものだ 沙花叉が他人を殺して手に入れたものだ 沙花叉が自分を無理矢理変えて手に入れたものだ 足元のナイフに手を伸ばしかける 妹の前でそんなことをしてはいけない 妹の理想の‘お姉ちゃん’でなければいけない その義務感が、手を止める
沙花叉クロヱ🎣
可能な限り明るく、妹に笑いかける 滲んだ涙を拭い、髪を優しくすいてやる そして、何も聞こえないように、耳を塞いだ どれだけ時間が経っただろうか 漸く男は大人しくなり、部屋の前から立ち去る音がした 妹の耳から手を外し、もう一度抱き締めた
沙花叉クロヱ🎣
沙花叉クロヱ🎣
いつものように言いながら、毛布に包まる 腕を伸ばし妹を誘う 大人しく従う妹が可愛らしい
沙花叉クロヱ🎣
微笑みながら言い、妹の額にキスをする おやすみのキスはお母さんがしてくれていたもの 明日も一緒に居れるお呪いのキス 不確かなソレは、ほんの少しだけ、安心感を感じさせてくれる 妹の髪を軽くすき、眠りについた これが、沙花叉の、いつもの、日常