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sha
仕事から帰ると、玄関先に体育座りでちょこんと座っている彼女の姿が。
まるで偶然を装った口ぶりにため息が出そうになる。 最初から俺に会うために来たくせに。
そうしてふにゃりと笑う顔は何一つ変わっていない。
見覚えがある、なんてもんじゃない。もう見たくなかった。
sha
沈黙
呆れてこのまま帰そうかと思ったら、突然包まれるシャボンの香り。
sha
するりと背中まで絡みついた腕に、情けなくも少しだけ、肩が跳ねる。
sha
何も変わらないはずなのに重く感じる扉を開けて、2人で入るのは久しぶりの部屋に入り込んだ。
sha
じんわりと色付いた眦はきっとチークなんかじゃなくて、アルコール。 彼女の悪い癖だ。
とにかく水でも飲ませて早く帰らそう。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してグラスに注ぐ。
振り向けばさっきまでそこに居たはずの小柄なシルエットが見当たらず、慣れすぎたシャボンの香りは扉の向こう側から。
薄暗い部屋に、煌々と眩しい作業途中のパソコンと、今朝起きたままにぐしゃぐしゃの皺を残すシーツ。
そして、シーツに沈み込む見慣れすぎた人。
sha
口角の上がった唇は甘ったるい言葉を吐いて、皺になったシーツをたぐり寄せる。
過去にも見たおんなじ光景が頭の中にちらついて、今に重なって。
sha
うっすらと、細やかな水滴を着飾ったグラスを彼女へ差し出せば、溺れた瞳がくるりとこちらを向く。
膝より少し上までしかないスカートの裾で、肌が擦れる音。
静かすぎる部屋に、それはひどくいやらしくて。 わかってやってるなら、ずるいよ、お前。
また、息が詰まる
そんな簡単に言っちゃって。 誰だよ、勝手に消えたのは
sha
アルコールに頼ってまた現れるなんて卑怯すぎる
人形のように白い肌を、生ぬるい涙が滑り落ちていく。
大好きだった、泣き虫な彼女の泣き顔。
涙は女の武器、なんて言葉は使えないような、混じり気のない涙しか持っていない彼女だから。
sha
どうしても彼女を悪者だと思いたい頭の片隅で、他の感情で包んで無くしたふりをしていた想いが脈打ち始める。
指先から抜け出しそうだったグラスをサイドテーブルに置いた。
ぎしりと鳴るベッドのスプリングと衣擦れの音
爽やかに香るシャボンに誘われて、喰らうように噛み付いた
刹那顔を顰めて、怖がるように逃げようとするのも変わらない
掠れた声すら甘い
飲む酒が甘いものばかりなのも変わらないようだ
本当は寒い夜のはずなのに、彼女と触れる箇所はどこも融けそうなほど熱い。
苦しくなるくらいに隙間を満たしていくのは、どこまでもあまったるい温度
首筋に滲んだ赤色。
泣きたくなるような胸焼けが襲う
sha
そんなこと言っても、唇は震えたままだ
だけどもう止まることなんて出来ず、妖艶に、でもどこか泣き出しそうな彼女に吸い込まれるように喰らいついた
香りは爽やかなはずなのに、どこかあまったるい彼女の纏う空気は相変わらず変わっていない。
悔しくなる。もう彼女のことで泣きたくないのに