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"漢南洞のアパートの抽選が当たって買えたから、いずれ結婚するんだしお前が住みなさい"

という父親からの願ったり叶ったりな朗報は、そりゃあもう俺を天まで登らせる勢いだった。 羽が生えたかと思う程。

一人暮らしはしてみたかったけど、億劫という言い訳でのらりくらりと実家で生活していた。 が、家さえ手に入れば話しは別だ。 しかも漢南洞! 漢江ビュー!

幸運な事に割と裕福な家庭に生まれたもので、家具家電や生活に必要な物を揃えるのにも不自由がなく。 だからサクサクと事が運んで、父親のその発言から2週間後には俺だけの城の中にいた。

ホソク

ひっろ〜

一人では持て余す広さ。 家族と住んでも多少余裕がある。

このアパートの中でも比較的安い方の部屋ではあるが、充分。 リビングダイニングとは別に部屋が二個。 それからウォークインクローゼット。 浴室とトイレ。 申し分ない。

ホソク

最高すぎる。

そしてリビングの大きな窓から見えるのは、広い漢江の青。 そりゃあ独り言も漏れる。

俺が寝そべっても、まだあと一人くらい余裕で寝そべられるソファは一目惚れして即決した物。 それからテレビは映画を堪能したくて中でも大きめを。 ベッドも一人だけどキングサイズにしたし、乾燥機も最新式を買った。

正しくは買って貰っただけども。 でもそれも今回まで、という約束で家を出た。

"家と生活に必要な物は用意してやるから、家を出てからの生活費は自分で全て払う事"

これも父親の言葉だ。 勿論、それを承諾したから今ここにいる。

料理は好きな方だ。 働くのも。 こんな場所を用意してくれたのなら尚更、やる気が出るというもの。

陽が沈みかけてオレンジ色に輝く漢江を見て、一つ思い出した事があった。

"どうやら隣は芸能人らしいが、みっともないミーハー心を出して迷惑をかけないように"

無論、父親の言葉だ。

俺は知っている。

隣だろうが上だろうが下だろうが、意外と顔を合わせる機会がないという事を だから別にわざわざ"隣に越してきた何たら"なんてやろうとも思わず。

ジン

今日から1人暮らしだって?

ホソク

そ、いいでしょ?

同期のジンヒョンにピースして見せる。

ジンヒョンは二個上だからお兄さん的存在でもあるが、同期という事もあって敬語は使った事がない。 ジンヒョンも変に年上扱いされるよりはいい、と言っていたのもある。

ジン

いいなあ。

ジン

近々同期集めてホソガの家で引越し祝いだな。

ホソク

ジンヒョンが全員分のチキン代出してくれるならね。

ファイルを開きながら、八割本気の言葉をジンヒョンに言ってみせる。

ジン

いや、ホソガと俺の給料同じだからな?

ジン

流石に半々ね。

ホソク

半々とかケチくさっ!

ホソク

男ならせめて8割は出しなよ。

ジン

お前も男だろ(笑)

ジン

てか俺のこと男とか思ってないくせに、
こういうときだけ。

男だと思うとか思わないとか関係ない。 提案した者のすべき事だ。 しかも俺の引越し祝いという名目なら尚更。

などとガチャガチャじゃれあいの様な会話をしてると、少し離れたデスクの上司と目が合って'静かに'と口パクで言われてしまった。

ジンヒョンのせいだ。 いや、ジンヒョンのせいにする。

ホソク

ねえ、

ホソク

隣が芸能人だからあんまりうるさくできないからね。

ホソク

悪いけどお酒はなしにしてよ。

あっさり引越し祝いを承諾する言葉を言ってる自分がいた。 ジンヒョンは一瞬残念そうに眉尻を下げたが

ジン

誰が住んでるか見た?

と、本題からズレた質問をして来るから呆れた。 だからただ首を横に振るだけにして、デスクトップの画面と向き合う。

ジン

興味ないの?

ホソク

別に。

ホソク

そんなのいいアパートならよくあることだし、
迷惑だと思われて家出て行くことになるほうが嫌だもん。

今日期限の仕事にキーボードを打つ指が捗る。

ジン

冷めてる。

冷めてて結構。 俺は家の方が大事。

俺の引越し祝いは来週末に決まった。 主催は勿論、ジンヒョンで。 食器を買い足す事と、飲み物を揃えて置く事は俺の役割となった。

洗練されたエントランスを抜けてエレベーターに乗るだけでも、まだ胸が躍る 退勤時間は少し遅くなったけど、全然気にならない。

それに俺が思った通り、住民とすれ違うのは外くらいで棟の中に入ってしまえば静かな物だ。 まるで他の家には誰も居ないと錯覚してしまうくらい。

高級アパートの良い所の一つでもある。 民度が高いというか、プライベートを重んじるというか、他人に良い意味で興味もなくて。

ホソク

あ。

自分の家のドアが見えた時、隣の家のドアが開いて。 思わず小さくそう声を漏らして立ち止まってしまった。

玄関のドアの前に置かれた袋を手に取ろうとしているから、行っちゃいけない気がして。 顔を合わせちゃいけない気がして。 そう思うなら背中を向ければいいのに、自分の家まであと少しの所でそれは出来かねたらしい。

そうこうしてるうちに袋を手にした隣人が俺に気付いた。 髪の色が凄い。 黒い色素が見当たらない、銀にも似たグレー。 肌が白____

ユンギ

何?

低い声。 目の前の隣人の声、だと思う。

話しかけられるとは思ってなくて、馬鹿みたいだが後ろを振り返った。 誰も居ない。 やっぱりこの人が言ったんだ。

ホソク

何って、言われましても…俺の家がそこに。

隣人が立っているドアのすぐ隣のドアを指差すと、その俺の指を追って見て

ユンギ

あー隣の、どうも。

適当な会釈なんかするから、発光して見えるグレーの髪がポサポサと揺れた。 一応俺も同じ様に軽く会釈を返した。

その後で隣人の手にしてるのは配達で来たであろう、チキンの紙袋だと気付いた。 俺も今日はチキンを注文してしまおうかと、久しく食べていないその店の袋を眺めていただけだったのだが。

ユンギ

これ?

隣人が'これ?'と言ってその袋を持ち上げて見せた。 俺は何も言ってないのに"これ"とは…

ユンギ

あげないよ、食べたいならご自分でどうぞ。

何が面白いのか。 ふっと鼻で小さく笑ってドアの中に引っ込んだ隣人。

か、感じ悪…! 別に頂戴なんて言ってないし! 感じ悪!!

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