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3日目 / 理玖視点
あれから、もう72時間以上が経っていた。
理玖は捜査本部のモニターの前で、腕を組んだまま立ち尽くしていた。
目の下には深い隈、手は何度も握ったまま戻らず、背中は張り詰めたまま動かない。
差し出された水もエナジードリンクも彼の手には届いていない。
警察
警察
警察
声が擦れた。 怒鳴ることも 苛立つことも もう意味がないと分かっていた。
でも、黙っていることのほうが耐えられなかった。
理玖
警察
警察
息を呑んだ。
言葉にするには生々しすぎた。 ただ拳を握って奥歯を噛みしめた。
理玖
警察
理玖
ひとつ、深く息を吐いた。 その音さえ、喉の奥に引っかかって出るのが遅れる。
理玖
誰にも聞かれない声で呟いた
3日目 / 晋視点
明るい時間も暗い時間もここでは何の違いもなかった。
窓がない。時計もない。 ただ、一日が何となく終わると、また次の始まりが来るだけ。
朝は、背中の痛みで目が覚めた。
晋
身体を起こすたび、服の背に引っ張られる。 昨日、壁に叩きつけられた時、擦れた場所がじんじんと痛む。
でも痛いと声を上げるとまた殴られるから、黙って唇を噛みしめた。
誘拐犯
部屋の扉が開いた。 足音、笑い声、そしてカメラの起動音。
誘拐犯
近づいてくる足音。 首元を掴まれ、顔を無理やり上に向けられる。
晋
その瞬間、髪を思いきり引っ張られた。
晋
頭皮が引きちぎれるような痛みに、思わず悲鳴が漏れる。
誘拐犯
後ろから殴られる。 今度は頬じゃない。肩、背中、腹。
一発ごとに身体が悲鳴を上げ、体が折れて、声が漏れて、呼吸が狂う。
晋
泣きたくなくても、涙が勝手に出る。 けれど、それさえ“撮影の素材”になるのが悔しかった。
だから、泣きながら笑ってやった。
晋
男は少しの沈黙のあと、乾いた笑い声を上げた。
誘拐犯
誘拐犯
そのまま口を塞がれ、音を立てるように頬を叩かれた。 涙と唾液が混じった顔で、カメラがぐっと寄ってくる。
誘拐犯
そう言って、男たちは出て行った。
鍵のかかる音。 灯りの消える音。 残されたのは 押し潰されたような沈黙だけ。
痛みも 恐怖も 怒りも、 全部、体のどこかに溜まって 呼吸だけが苦しかった。
理玖、 今どこにいる? 今、なにしてる? ……探してくれてる?
わからなかった。
でも、心の奥底にひとつだけ残ってる感覚があった。
あの人は、きっと、来てくれる。
晋
声にならない声が、闇に溶けて消えた。
2025.08.06 公開
1383文字、61タップ お疲れ様でした