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それから 数え切れない程の季節が巡った

僕は英霊獣として成体になり 多くの戦場を、父上と駆け抜けた

剣ではなく、爪と牙で

言葉は持たなかったけれど 心はいつも、父上の隣にあった

幾つもの災いを共に討ち 幾つもの厄災を屠った

父上の背を見つめることが

誇りであり、指針であり、祈りだった

────でも

命には、限りがある

僕の時間は、父上よりも 遥かに短かった

激しい戦いの只中 僕はついに、力尽きた

爪も牙も、もう届かない

勝利など、そこには無かった

僕は……敗れてしまった、

 

(まだ、終われない)

 

(父上を、こんな世界に……
ひとり、残して────)

必死に、立ち上がろうとした

痛い、痛い、痛い でも、立たないと────ッ

僕がここで死んだら 父上はまた、ひとりで厄災と戦うんだ

────ひとりで 生き続けなきゃいけないんだ

こんな、地獄な様な世界で ずっと────────ッ

それが、あまりにも悔しかった

 

(僕は、ついて行くって決めたのに……ッ)

 

(最後まで隣にいるって
そう誓ったのに……ッ)

────それが、叶わなくなってしまった

胸の奥が 締め付けられるように、苦しかった

体が裂けるよりも ずっと、ずっと痛かった

その時、頭にそっと手が添えられた

振り返れば、父上がいた

そして、変わらぬ眼差しで ────────ただ一言…

 

────爽……、

それは、消え入りそうな 震えを帯びた声だった

 

(……あぁ、そうか)

 

(僕は…ここまでなんだ、)

分かっていたけど、悔しかった

悔しくて、悔しくて

罪悪感に 押し潰されそうになった

ふわり、と 父上の腕の中に抱かれた

懐かしい匂いがした

お日様と、桜の匂い────

あの日と変わらない、春の匂いだった

 

(父上……
あなたの子になれて、よかった)

……消える

ゆっくりと、確かに

僕の身体は、光の粒になって 風に溶けていく

───でも…… ────僕は、まだ……、

 

(まだ……行きたくない…)

声にならない声が 喉の奥で震えた

まだ、父上の傍にいたい

隣を歩いて、肩を並べて

戦って……笑っていたかった

僕は“ついていく”って決めたんだ

ずっと一緒にいるって… ────そう、誓ったんだ……

 

(……僕が、いなきゃ……)

 

(僕が、最後まで……
守りたかったのに……ッ、)

光に溶けていく手を、必死に伸ばす

父上の袖を もう一度だけ、掴めたら……

涙が溢れて、もう見えない

音も、もう聞こえなかった

 

でも……この温もりだけは……

最後の最後まで、僕は縋った

どうか、あと1秒でも このままでいたくて……、

父上の腕の中で

父上の温もりを抱いたまま 終わりたかった────……

────怖いなぁ…… 怖いよ……、父上────、

風が吹いた

────春の匂いを残して

「────“爽”」

……酷く懐かしい、声がした

大好きで、大切で、憧れの…… ────父上の声だった

ふと、一筋の光が頭に当たる 暗闇の中で、ただ、真っ直ぐ

──白に射抜かれるみたいに…

「“爽”」

また、呼ばれた

────行かなくちゃ 早く、父上の所へ────

僕は、光に向かって飛び込んだ

視界いっぱいに広がる、光

眩しくて、暖かくて……

陽だまりのような 優しさに包まれて……

次第に輪郭を帯び始めた景色の中に

大好きな、父上がいた

あの時と、変わらない姿で、 あの時と、変わらない声で、

あの時と変わらない お日様と桜の匂いも携えて…

────僕の名前を呼んで

また、僕を連れてって────

 

(今度こそ
置いて逝ったりなんかしないから────)

僕は、溢れる嬉しさを抑えられず 勢いのまま、父上を押し倒した

ドサッと、花びらが舞う

そのまま、コツンと お互いの額をくっ付けた

ほんのちょっとの、イタズラ

でもそれは、僕なりの “また会えた”の合図────

この合図は この地獄のような戦場の只中で

言葉を持たない僕が、唯一 互いを癒すために編み出した

小さな “祈り”の形だった

 

……ふふっ

父上が小さく笑って 戸惑いながらも優しく頭に手を添える

僕は、額を合わせたまま そっと目を閉じた

良かった、また会えた────

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