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空中楼閣の船旅

空中楼閣の船旅

「空中楼閣の船旅」のメインビジュアル

3

空中楼閣の船旅 後編

♥

2,789

2020年04月29日

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「あれ、ここどこだ…?」

「どうしてこんな年寄りの人ばかり…」

“初めまして皆様。”

“皆様の目の前にある この「迎え船」が”

“皆様を天国までお送りさせていただきます。”

“この船で最終場に向かい”

“皆様は3つの選択肢が与えられます。”

“1つ目は「そのまま天国に逝く」”

“2つ目は「新しい生命として生きる。」”

“そして3つ目は「生き返る」”

“しかし3つ目は条件があります。”

“自分の左胸を見てみて下さい。”

「青い…バッジ…?」

“このバッジは死因を表しています。”

「え?」

“赤色は自殺、黄色は老衰、黒色は他殺”

“そして、青色は病気です。”

「…青色は病気、」

あぁ……

そっか…

いつもの発作が起きて

そのまま…。

俺、

 死んじゃったのか。

「空中楼閣の船旅」

後編

登坂 悠良

…青、色……

衝撃を隠せなかった。

まさか、音緒が…

病気で亡くなった人だったなんて

信じられないよ

登坂 悠良

…っ……

おじいさん

大丈夫かい…?

登坂 悠良

…わ、私……

登坂 悠良

音緒に酷い事…たくさん…言っちゃった……

登坂 悠良

「あんたは何も分かってない。」

登坂 悠良

「自殺する人がどれだけ辛い思いをしているかを」

登坂 悠良

「何も知らないのに、生き返えなんて言わないで」って……

登坂 悠良

……ど、うしよう…

私の方が知っていなかったのだ。

音緒の事を何も…

何も…知らないのに…

登坂 悠良

……ごめんな…さい。

おじいさん

音緒くんはそんなに器の小さい人ではないよ。

おじいさん

大丈夫だよ、お嬢さん。

おじいさん

私もね…、音緒くんには良くお世話になったもんだ…

登坂 悠良

…え

おじいさん

病室が同室でねぇ…、私の話し相手になってくれたり

おじいさん

今にも死にそうな時はそばに居てくれたよ。

登坂 悠良

……

おじいさん

音緒くんの方が重い病気だったはずなのに…

おじいさん

辛かったろうになぁ…

おじいさん

今まで良く頑張ったよ、音緒くんは。

おじいさんは優しい声で音緒の事を語った。

登坂 悠良

……

登坂 悠良

…どうして、バッジを隠したんだろう…。

おじいさん

音緒くんは

おじいさん

よく…人助けがしたい…と言っていた。

登坂 悠良

…!!

おじいさん

こんな身体だから、体の強さはない。

おじいさん

だから、せめて…

おじいさん

「人の悩みは聞けるようになりたい。」と言っていた。

登坂 悠良

…っ

登坂 悠良

(私を…助けようと…?)

おじいさん

だから、きっと…

おじいさん

音緒くんは助けたかっただけなんだろうなぁ…

おじいさん

生きたくても死んでしまった彼は、

おじいさん

生きたくなくて死んだお嬢さんに

おじいさん

ただ…

おじいさん

「生きたい。」と思わせてあげたかっただけなんだろう…

登坂 悠良

……

おじいさん

バッジを隠したのは、きっと…
お嬢さんと同じ目線に立つため。

おじいさん

長年話していれば分かる。

おじいさん

…音緒は…、少し不器用なんだ。

おじいさん

どうか、分かってあげてくれ。

登坂 悠良

……

分かるよ…。

あなたの言いたい事は分かったよ。

“皆様、船の旅はいかがでしょうか?”

登坂 悠良

…!?

登坂 悠良

(これが…アナウンス?)

“後、15分ほどで最終場に到着いたします。”

おじいさん

おやおや、もうそんな時間かい。

登坂 悠良

おじいさん

お嬢さん

登坂 悠良

…はい

おじいさん

名前は何と言ったかのう?

登坂 悠良

登坂です。
登坂 悠良です!

おじいさん

悠良ちゃん…

おじいさん

もう…時間はないよ。

おじいさん

もう一度音緒くんの話し相手になってあげてくれないか?

登坂 悠良

…も、もちろんです!!

登坂 悠良

ありがとうごさいました!!

私はもう一度

歩き出した。

伝わるか分からないけど

私の悩みを聞いてほしい。

学校のいじめで

命を投げ出した事。

もう生きる意味を失くした事。

「死にたい」と呟いた事。

死ぬ前に泣いた事。

家族にいじめの事を相談せずに

死を選んだ事。

ベランダから飛び降りる前に

家族への遺書に

「いじめが辛いです。」

「大切に育ててくれたのに命を投げ出す事を」

「許して下さい。今までありがとうございました。」

3文しか書かなかった事。

全部…     

       全部

全部

音緒に聞いてもらおう。

登坂 悠良

音緒。

柴崎 音緒

…悠良……

柴崎 音緒

さっきは…

登坂 悠良

さっきはごめんなさい!!

私は深々と頭を下げた。

柴崎 音緒

え?

登坂 悠良

音緒は病気で死んじゃったんだね…

柴崎 音緒

…な、んで…知ってるの?

登坂 悠良

あなたから逃げたときに会ったの。

登坂 悠良

優しい…おじさんに…

登坂 悠良

だから…、もう隠さなくて良いよ。

登坂 悠良

登坂 悠良

私のために…ありがとう。

柴崎 音緒

…そっか……

柴崎 音緒

おじさんに聞いたんだね…。

登坂 悠良

…うん。

登坂 悠良

…あのね、私

登坂 悠良

学校でいじめられてたの…

登坂 悠良

…それで、もう毎日が地獄で

登坂 悠良

辛くて、怖くて……

登坂 悠良

どこにも出口がなくて…

登坂 悠良

それに…家族にも相談する勇気が出来なくて

登坂 悠良

それで…ある日

登坂 悠良

思っちゃったの……。

柴崎 音緒

……

登坂 悠良

…死んだら、この世界から逃げられるって……

登坂 悠良

でも…逃げても解決しない。

登坂 悠良

…分かってた…

登坂 悠良

分かってたの……!!!

登坂 悠良

けど、もう心の限界でっ……

吐き出せば吐き出すほど

言葉が溢れて溢れて

もう…

__止まろうとはしてくれなかった。

今まで爆発出来なかったのだ。

ただ

一歩の「勇気」が

出なかっただけ…。

ギュ。

登坂 悠良

…っ、音緒?

音緒は優しく私を包んでくれた。

音緒から聞こえる心の心拍数は

私よりも速くて

それに体が震えている。

柴崎 音緒

大丈夫

柴崎 音緒

今、俺に喋れたんだから…

柴崎 音緒

こんな初めて出会った俺に

柴崎 音緒

言えたんだ。

登坂 悠良

…っ!!

柴崎 音緒

悠良は大丈夫。

柴崎 音緒

これからもきっと生きていける。

柴崎 音緒

…頑張れ!!

柴崎 音緒

頑張れ、悠良!

登坂 悠良

……っ

きっと

誰かに言ってほしかったのかもしれない。

嘘でも

本当に口にした言葉でも

「頑張れ」って。

登坂 悠良

……っ…

登坂 悠良

う"ぅ……あ"ぁあぁぁぁ……、!!

君の腕の中で

自分の弱さを隠すように泣いた。

抑えきれなかった感情ともに

雫となって流れていく涙は

ただただ

音緒の衣服にシミを作っていくだけで…

登坂 悠良

(あぁ……、そうだ。)

登坂 悠良

(私は…勇気を出して)

登坂 悠良

(話を聞いて貰えば良かったんだ…)

柴崎 音緒

…俺、結局何も出来ずに死んじゃったんだなぁ……

柴崎 音緒

本当に悔しい…

柴崎 音緒

もっと……

柴崎 音緒

もっと…もっともっともっともっともっともっともっともっと!!!!!

柴崎 音緒

…ただ、あの世界生きたかっただけなのに。

柴崎 音緒

色んな景色を見たかったのに。

登坂 悠良

柴崎 音緒

小さい頃から、そういう運命だったんだ…

柴崎 音緒

…だからせめて、皆の悩みを聞けるような人になりたい。

柴崎 音緒

…そう、思ってただけなのに……

柴崎 音緒

出来なかった…。

柴崎 音緒

…よくニュースで見たんだ。俺と同じくらいの人たちが自殺しているのを。

柴崎 音緒

…助けてあげたい。

柴崎 音緒

…けど、俺は……

柴崎 音緒

不器用だから…。

音緒は私の肩に顔をうずめた。

何だか肩がどんどん温かくなってきた。

あぁ、

君も泣いているのか。

登坂 悠良

……

彼は今にも消えてしまいそうな

掠れた声で呟いた。

柴崎 音緒

…死にたくなかった……。

その後、何も声をかけてあげる事が出来なかった。

ただ抱きしめてあげることしか出来なくて。

その時思ったんだ。

私に話しかけた勇気は

どのくらいだったのだろう。

自分が傷ついても

傷をつけられても

君は赤の他人を

助けてくれようとした事。

登坂 悠良

登坂 悠良

…ありがとう……。

船が最終場につくまで

私たちは自分の人生を

思い出しながら

静かに涙を溢し続けた。

この満点の星空の下で

最終場についたそこには

3つの光が見えた。

1つ目は「そのまま天国に逝く」

2つ目は「新しい生命として生きる。」

3つ目は「生き返る。」

柴崎 音緒

悠良、お別れだね。

登坂 悠良

……うん。

登坂 悠良

(どうしよう…)

柴崎 音緒

迷ってるなら…

柴崎 音緒

行け…

登坂 悠良

…!

柴崎 音緒

自分が今、行きたい所に行くんだ。

登坂 悠良

……

登坂 悠良

わ、私……

登坂 悠良

もう一度…

登坂 悠良

…が、頑張るよ……。

登坂 悠良

だから、見てて。

私は初めて君に笑いかけた。

登坂 悠良

(大丈夫。)

登坂 悠良

(きっと…大丈夫……)

君は優しく笑い返し

「行け。」と呟いた。

登坂 悠良

……

登坂 悠良

待って…

登坂 悠良

音緒は……

登坂 悠良

音緒はどうするのっ!!!?

柴崎 音緒

……

見たこともないような

優しい表情…。

仮面の割れた音が聞こえた。

登坂 悠良

……

柴崎 音緒

行け!!!

柴崎 音緒

俺の事は良いんだよ!

柴崎 音緒

まっすぐ前を見ろ!!

柴崎 音緒

そして、ゆっくりでもいいから進むんだ。

登坂 悠良

……

「うん。」と深く頷き

また涙を溢しながら

3つ目の光に駆け出した。

「もう、大丈夫。」

そう、言い聞かせながら。

ただ、

あの光に向かって走り続けた。

「じゃあな!」

登坂 悠良

…っ!!

君の声だと体が反応し

振り向くと

君は確かに笑っていたのだ。

青色のバッジが

彼の居場所を教えるように。

登坂 悠良

…っ!!!

登坂 悠良

あ……れ、

悠良!!!

悠良ちゃん…!!

登坂 悠良

ここは…?

登坂 悠良

(戻って…きたの?)

ベランダから落ちたんだ!!
それでここは病院…
覚えていないのか?

悠良ちゃん、丸1週間も目を覚まさなかったのよ…!

登坂 悠良

…え

涙を流す両親を見て

自分が何をしてしまったのかを

改めて実感した。

…今まで、気づいてやれなくて悪かった。

…そうよ……。
私たち、ちゃんと聞くから…

何があったのか話してほしいの…

登坂 悠良

「…頑張れ!」

「頑張れ、悠良!」

登坂 悠良

(大丈夫…大丈夫だよ。)

登坂 悠良

あの、ね……

あの船が何だったのか

今までもよく分からない。

船の旅をしたことは

夢だったのか。

それとも現実だったのか…。

私が作った架空の世界だったのか…

そして、音緒が2つの道の内

どちらを選んだのか。

分からない。

「じゃあな!」

その言葉に希望を持って

君が帰ってくるのを

待ち続けよう。

この話を見つけたなら

今度こそ…

あなたに

お礼が言いたいです。

久しぶりに学校の図書室に行ったら

何故か1つの本に目を離せなくなった。

太刀川 泉

「空中楼閣の船旅」…?

友達

おい!泉ー!!

友達

サッカー部集合だってさ!!

太刀川 泉

あー!!うん!

太刀川 泉

先に行ってて!すぐ行く!

太刀川 泉

著者…

太刀川 泉

登坂 悠良…

太刀川 泉

…んー?

「音緒。」

太刀川 泉

……

太刀川 泉

帰ったら調べて見るか!

高田怜 様

TKDグランプリ

お題「ファンタジー」

「空中楼閣の船旅」

ーENDー

一慶

どーも、皆さん

一慶

一慶です🙄

一慶

「空中楼閣の船旅」

一慶

前編中編後編を最後まで読んでいただき

一慶

ありがとうございました!

一慶

後編だけクソ長くなりましたw

一慶

配分間違えました
すいませんw

一慶

今回は少しだけ解説させていただきます!

一慶

まずは題名です🙄

「空中楼閣の船旅」

一慶

空中楼閣というのは

一慶

空中に楼閣を築くような、土台のない事柄。

一慶

つまり、架空の物事です!

一慶

架空の船旅ですね🙄

一慶

お題がファンタジーだったため

一慶

架空って言葉いれたくてw

一慶

そして、今回

一慶

皆様に伝えたかったのが

一慶

「生」と「死」について。

一慶

生きたかった男の子と

一慶

死にたかった女の子

一慶

正反対の二人を組み合わせるとどうなるのか

一慶

というのを考えながら作りました

一慶

そして、悠良は生き返る事を選び

一慶

自分が体験した話を本にしていたんですね

一慶

それが「空中楼閣の船旅」です

一慶

それを手に取った少年は一体誰だったのかは

一慶

皆様の想像におまかせします!

一慶

また、音緒と悠良が会える事を作者も願ってます🙄

一慶

いいねやコメントが励みになってます

一慶

作品を最後まで読んでいただき

一慶

ありがとうございました!

一慶

いじょー、いっけーでした🙄

この作品はいかがでしたか?

2,789

コメント

58

ユーザー

このたびはTKDグランプリにご参加頂き誠にありがとうございます😊素敵な作品をありがとうございます、またご機会が合えばよろしくお願い致します♪

ユーザー

いいお話…!

ユーザー

めちゃめちゃ遅コメでごめん💦 最初タイトル見た時からすっごく気になってて今全話読んだんけど、すっごく感動した!! また引き込まれてたっ‪‪w 一慶やっぱりすごすぎなっ✨

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