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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

3つの奇妙な殺人事件

被害者の胸を切り裂き、心臓に刃を突き刺した、通称「ハートブレイク事件」

被害者が死に至る様子を実況しながら殺害した「殺人実況事件」

鍋料理の定番、大根で撲殺した「大根撲殺事件」

それぞれの事件の犯人は捕まった

しかし動機は語らない

俺____橘圭一 は、3人の殺人犯の取り調べを担当することになった

その女は結構な美人

と、言うわけではない

かといって、その逆でもない

つまり「平凡」を絵に描いたような女性なのだ

しかし、動機は語らない

取り調べ中も、焦点の定まらない目で遠くを見つめずっとブツブツ呟いている

だから俺は問いかけた

橘圭一

松野綾香さん

橘圭一

君は

橘圭一

Kという人をご存知ですね

弾かれたように

「ハートブレイク事件」の犯人___松野綾香は顔をあげた

眼球がこぼれそうなほど目を見開き、口は微(かす)かに震えている

その顔には涙の跡が色濃く残り、げっそりと痩せこけている

昔の松野綾香を知る人は、今の松野を別人だと言うだとだろう

あるいは

「ざまぁ見ろ」とほくそ笑むのかもしれない

拝啓

日に日に寒くなって行きますが、いかがお過ごしでしょうか? 私は元気、とは言い難い状況です。

どうしても貴方に読んで欲しくて、この手紙をしたためました。

まずは、感謝の気持ちから。

貴方が提供してくれた「計画」のおかげで

無事あの男を殺すことができました 本当に感謝しています。有難う御座いました。

そして申し上げたいことが1つ。

私はいま檻の中にいますが、貴方を責めるつもりはありません。

ただ貴方と、1度だけでもいいんです、

昔みたいに「Kさん」「松野さん」とお互い呼びあい、手紙上でやり取りをしたいんです。

お願いします。返事をください。

どうして私が今、こんなに切羽詰まっているのか最初からお話しします。

私には2歳年下の彼氏がいました(この部分は以前も書いたので読み飛ばして貰っても構いません)。

荒木俊介と言います。

俊介のお父様__荒木宗一 は、大変教育熱心な方でした。

部屋に閉じ込めて1日中勉強させられたことはザラにありましたし、俊介の交友関係にも厳しく口出ししていました。

私と俊介が付き合っていることも良く思っていませんでした。

しかし私達は愛していました。 それ故に俊介のお父様の存在に苦しみました。

私が高校2年の時でした。俊介は中学3年で、俊介の父親の束縛はいよいよ厳しくなりました。

ある日の夜中、父親の目を盗んで俊介が電話をかけてきました。

今にも泣き出しそうな、あの日の俊介の声は頭に残っています。

「悪いことをした人間の血は赤くないって本当だと思う?」

「もしそうだとしたら、お父さんの心臓は真っ黒だね」 「心臓は血液を送り出す機関だから」

「いっそ本当に真っ黒だったら、心の底からお父さんを嫌いになれたのに」

過剰な教育も、根底にあるのは子を思う親心です。

それを理解しているからこそ、俊介は苦しんでいるのです。

電話の向こうから聞こえるか細い嗚咽を聞きながら、私は思いました。

殺すしかないと。

父親が___荒木宗一がいるから、俊介が苦しむことになる。だから、私の手で葬ってあげないといけない。

私は俊介を愛していましたから。

人は私を「依存者」と揶揄しました。 それでも私は俊介を愛していました。

だから、殺しました。 俊介の為に俊介の父親を殺しました。

胸を切り裂いて心臓をさらけ出した時、心臓が黒くないことにがっかりしました。

心臓が黒くないと意味がないのです。俊介が困ってしまいますから。

だから、心臓を刺しました。

酸素濃度が低い血液がたまっている場所にナイフを突き刺しました。

酸素濃度が低い血液は、黒に近い赤色です。

その血で心臓を染めました。

俊介の為に、心臓を黒くしました。

これで、私と俊介を隔てる物はない___ そう、思っていたのに

俊介は死んでしまいました。殺されたのです。(ここから読んでください)

世に言う「殺人実況事件」の被害者になってしまったんです。

俊介が死んで行く様を貧弱な語彙力で表現され、数多(あまた)の野次馬どもに晒される__

こんなふざけたことが許されるのでしょうか。

と、憤っても何もならないんです。私は今檻の中にいますし、俊介は戻ってこない。

私にはもう貴方しかいないんです。

お願いです。返事をください。

俊介がいない今、貴方だけが心の支えなんです。

貴方の返事をずっと待ってます。

___親愛なるK様へ

松野綾香

橘圭一

Kという男をご存知ですね?

松野綾香の口から掠(かす)れた声が漏れた

松野綾香

……どうして、…………彼の名を………………………

橘圭一

質問しているのはこっちなんです。イエスかノーで答えてください

松野綾香

……………………

橘圭一

……あなたは、これまでに何回か

橘圭一

Kという男に手紙を出しているようですね

橘圭一

かなり切羽詰まった内容でしたが……

橘圭一

どうして俺が手紙の内容を把握しているのかって?

橘圭一

少し考えたらわかることですよ

橘圭一

…話を戻しましょう

橘圭一

「親愛なるK様」「貴方だけが頼りです」
随所にこのような表現が見受けられましたが

橘圭一

Kとは友達か何かですか?

橘圭一

違いますよね、Kはあなたに殺人の計画を授けたにすぎない

橘圭一

あなたがどこでどんな状態だろうと、関係のないことなんです。

橘圭一

返事をくれないのが何よりの証拠では?

松野綾香

松野綾香

…………心臓

松野綾香

私の心臓も黒くなったから……Kさんは……………………………

橘圭一

橘圭一

__昔、1人の男子中学生がいました。

橘圭一

その中学生はクラスメイトに手酷く虐められていました

橘圭一

中学生は、唯一自分と仲良くしてくれた隣の席の女の子に助けを求めました

橘圭一

しかしその女の子は、中学生のことをノート見せ要員としか見ていなかったのです。

橘圭一

女の子はクラスメイトと一緒になってその中学生を虐めるようになりました。

橘圭一

男子中学生の名前はK

橘圭一

男子中学生を裏切った女の子は…

橘圭一

松野綾香さん。あなたのことですよ

松野綾香

……まさか、kさんは…………

驚きと恐怖に満ちた顔で、松野綾香は初めて俺の顔を見た

俺はそれを冷たい目で見つめかえす

橘圭一

悪い人間は心臓が黒い…
なかなかいい表現ですね

橘圭一

あなたの心臓は中学の時から真っ黒でしたから

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コメント

10

ユーザー
ユーザー

なるほど、黒い心臓・・・ まあ、腹黒いって言葉があるくらいだからね

ユーザー

背景暗めだから黒文字で書かれると読みにくい…

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