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素行不良

刑事を前にして机に足を投げ出して取り調べに応じる姿勢は、もう賞賛に価する。

速水涼介

刑事サン

速水涼介

何回おんなじコトするつもり?

速水涼介

いーかげん飽きない?

橘圭一

まぁこれが仕事ですから

橘圭一

と、言っても正直そろそろ飽きてきましたね。同じ質問を繰り返すのは

橘圭一

だから話してくれると助かるんですけどね

橘圭一

どうして被害者の死に行く様を実況しながら殺害しネットに投稿したのか…

速水涼介

へっ

速水涼介

だから何回も言ってんだろ

速水涼介

俺に話して欲しかったら、まずアイツを処刑しろよ

速水涼介

俺の恩師を大根なんかで撲殺しやがったアイツ____吉村の馬鹿をよ

橘圭一

ご存知だったんですね、名前

速水涼介

…同級生だったからな、中学の

橘圭一

顔色が変わりましたね

橘圭一

苦い思い出でもありましたか?中学生時代に

橘圭一

橘圭一

1人の男子中学生を虐め倒して不登校まで追い込んだ……とか

速水涼介

………てめぇ

橘圭一

何か気に障ることが?

橘圭一

刑事ですから、貴方の中学時代を調べることくらいしますよ

橘圭一

なんて言ったかなぁ、不登校になった中学生の名前

橘圭一

覚えてたりしますか?

速水涼介

…お前性格悪いよな

橘圭一

殺人犯に言われるとはね

速水涼介

__吉村が処刑されたら

速水涼介

動機でも中学の思い出話でもなんでも話してやるよ

橘圭一

…どうしても、話してくれませんか?

速水涼介

へっ

速水涼介

俺は昔からビクビクしてる奴と、お前みたいな正義の味方気取りが大嫌いなんだよ

速水涼介

虐めたくなってくる

橘圭一

…全然変わってないですね

そう口の中で呟いた。

相変わらず机に足を乗せてるし、動機について話す気配も見せない。

期待するだけ無駄なこと

俺もお前みたいな一匹狼気取りが心底嫌いだ

刑事じゃなかったら、そう口にしている。

拝啓 なんて、いちいち書けるかよ

なんで日本の手紙ってこう回りくどいんだろうな。

そう思わねー?

こんなスマホ普及時代に手紙オンリーのやり取りとか遅れてるぞ、お前。

お前の文通ごっこに付き合ってやるから、お前も最後まで読めよ。

まぁまずはアイサツか。

久しぶりだな。K。

不思議なモンで、こうやって手紙書き始めると案外楽しくなってくるんだよな。全然長文を書くのが苦にならない。

国語が得意な奴って感じ。

荒木先生は俺に国語の才能があるって言ってくれたけどな。

檻の中って案外やることねーんだ。 さっき取り調べで急に中学時代の話をされたから、暇潰しにそこから回想してみるよ。

俺は昔から、考えるより先に手が出る奴だった。注意されることが大嫌いで、大人だろうが女だろうが手をあげた。

そんな俺の問題児っぷりに、親は早々にサジを投げた。

半放置教育で育った俺は、まぁいろいろやらかした。

中学の時に同級生を不登校に追いやった時は、さすがにヤバいって思ったな。

そっから馬鹿ばかりやるのは止めようって思ったんだ。

でも俺は昔からケンカしかしてなかったからな。かなりアホだった。

高校の時、国語の朗読で「ナマモノ」を「セイブツ」って読んだくらいだ。

その時ちょっとだけ賢いクラスの奴がめちゃくちゃ馬鹿にしてきたから、つい昔の癖で殴ってしまった。

そっからまぁ大騒ぎよ、殴った奴の親が学校とでかいパイプでつながってるらしく俺は退学になりかけた。

学校内で孤立した俺を庇ってくれたのが、荒木先生だった。

誰しもが「手に負えない」と最後は見放す俺の将来の可能性を見出だしてくれた。

「先生は速水君の書く文章好きよ。」 「人に気持ちを伝える手段は口だけじゃないわ。」 「口で伝えるのが苦手なら、書いて紡いだらいい。速水君の文章は繊細なんだもの。」

「貴方には国語の才能があると思うわ。」

先生の言葉は忘れられない。 その言葉がどれだけ俺を救ったか。

先生のやることは全て信じられる。

例え先生が、毎日ストレス発散の為 学校で飼育しているウサギを虐待していても____ 俺は先生を信じた。

だって先生は言っていた。 「生き物は死に至る瞬間が美しいのよ」

「どの作品も、何かが死ぬ描写は克明に丁寧に描かれるでしょう?」 「日本人は儚い物を美しいと思えるの。生き物がそれを最もよく表すことができるのが 死 よ。」

「先生はそれを言葉で紡いでいるのよ。決して悪いことではないわ」

甘美な背徳感がそこにあった。 それを先生と共有できることが本当に嬉しかった。

俺と先生は毎日放課後になると、生き物の最も美しい瞬間を共有した。

でも生き物って言っても、人の「美しい瞬間」は虫とか小動物のそれとは全然違ったんだ。 それを教えてくれたのは、やっぱり先生だった。

先生には、すごく優勝な息子がいる。先生の夫は優勝な息子に夢中。先生のことなんか全く気にかけない。

息子のせいで。じゃあ息子が居なくなれば解決すんじゃん? 動機はそれで充分。

どんな時も俺を見捨てなかった先生、俺を救ってくれた先生。じゃあ今度は俺が救ってやらなきゃな!

先生が才能があるって言ってくれたから国語の勉強も頑張った。それで培った語彙力で「美しい瞬間」を表現したい!

__ところがいざ人の「美しい瞬間」を目の当たりにすると、言葉が出なかったんだ。

生きようと必死にもがく姿、もう駄目だと絶望した姿 それらがとても、言い尽くせないほどとても、美しかったんだ。

俺が撮影したのは、

一切の編集を行っていない 生(ナマ)の放送。 脆く儚く美しい 生(セイ)の放送。

この最高のプレゼントは、絶対に先生を喜ばせることが出来たはずなんだ

なのになんで、大根なんかで先生は撲殺されなきゃならない?

__なぁもう一回人を殺せる計画を授けてくれよ。マジで。真剣な話。

シカトこいてんじゃねーよ。

速水

橘圭一

あんな殺人動画が、最高のプレゼントですか、物好きですねぇ

速水涼介

へっ

速水涼介

アンタみたいなのには一生わからないだろうよ

速水涼介

俺と先生だから理解できるんだ

橘圭一

__いえいえ、貴方は何もわかっておられませんよ。

橘圭一

随分と都合のいい頭をお持ちのようで…

速水涼介

あ?

速水涼介

お前今日はやけに上から目線じゃん?

橘圭一

橘圭一

いつからお前が上になった?

速水涼介

あ?

橘圭一

足を下ろせ、勘違いしてんじゃねーよ

速水の顔がひきつった。 速水が足を下ろすと、俺は再び笑みを貼りつかせる

橘圭一

儚い物が美しい、なんて無理矢理に命を奪った輩がよく言えますね

橘圭一

貴方が敬愛している先生は、もっともらしいことを宣(のたま)って生物虐待を正当化していただけです。

橘圭一

そのことにどうして気づかなかったんですか

速水涼介

…先生は、そんな人じゃねぇ

橘圭一

そして貴方が敬愛している先生は

橘圭一

夫がかまってくれないストレスを、もう1人のKという息子にぶつけていました。

速水涼介

………嘘だ

橘圭一

さぁ質問します

橘圭一

貴方は何をもって、その先生を敬愛していたんですか?

橘圭一

培った国語力で教えてください

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コメント

7

ユーザー
ユーザー

「アイサツ」などに見受けられるように不自然にカタカナ表記なところがあったと思いますが、喧嘩ばかりやってる頭の悪い速水 を表現したかったんです。それ以外の特別な意図はございません😳 読んでくださりありがとうございます❗

ユーザー

死を美しいと勘違い、洗脳され実況へ… 美辞麗句で自らの正当化なんて思慮のある大人のずるいところですよね…

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