僕たちはカヤがよく行くというBARにやってきた。BARと言っても先程のレストランのようなお堅いフォーマルなBARでは無く、カウンターと立ち飲みテーブルがいくつか並んだカジュアルなBARだった。
店内には僕らの他に既に三組ほどいて、備え付けのダーツを楽しんだり、各々談笑に浸っている。 バーテンダーもマスターと言うには似つかわしくなく、いかにもアルバイトといった若い男が二人カクテルを作ったりなどしていた。
カケル
僕
カケル
カヤ
こんな話、するべきじゃないのかもだけど…
カヤ
僕
カケル
カヤ
カヤ
今のあたしにはもったいないくらいの、ちゃんとした好きを持ってくれている人に出会えて
カヤ
カヤ
全く意味がわからない 要するにキープか?
僕
カケル
答えになってねぇ。
俺が友達はまだしも、こいつもか?
別に会ってはじめまして好きです、って訳でもねぇんだろ?
カケルの言うとおりだ。 たしかにカヤは魅力的だし、惹かれ始めていたが先手打ってお友達、は理解できない。
カヤ
あたしが二人とも好きなんだ、ぶっちゃけちゃうと…。
カケルの熱意も凄く嬉しい。
だけど、同じくらい目の前の彼が魅力的なんだよ。
カヤ
見ていて応援したくなるっていうか、あたしの中の分からないものを一緒に考えたいって、思っちゃったんだ。
カヤ
カケル
その好きがなにか分からねぇんじゃねぇのかよ。
カヤ
僕
会話の中で、共感できる要素は一つも見当たらなかったが、それでも好きが分からないというテーマは僕にも理解できた。
僕
カケル
俺もそう思う
カヤ
カヤ
二人にあたしをもっと知って欲しい。
カヤ
あはは…。
カヤ
僕
カケル
カヤ
カケル
俺は諦めてねぇし、ぽっと出のこいつに負ける気もサラサラねぇ。
カケル
僕
カケルは堂々と、恥ずかしげもなく ただ真っ直ぐにカヤを見ている スラッとした高身の彼は僕から見てもカヤにお似合いの男だが、それ以上にカケルの内面に僕すら惹かれていた。
カケル
今日会って、カヤが好きですってわけじゃねぇんだろ。
俺としては、ライバルは少ない方がありがたいわけだが…。
どう選択しても別に俺は俺のやりたいようにやる。
カヤ
僕は頼んでいたジントニックを二口飲んで口を開いた。
僕
僕
カケル
なんだそれ?
僕
けどカヤちゃんの言葉の真意をカヤちゃんも、僕も理解出来ていない。
だから、僕もカヤちゃんと同じ気持ちなのかもしれない。
僕
カヤちゃんに会う前の僕より確実に、今の僕は前に進んでるんだ。
カヤちゃんと進んでみたい。
カヤ
カヤ
カケル
カヤ
僕
どこか含みのあるカヤに僕とカケルは小首を傾げることしか出来なかった。
カケル
時間も言葉も。
僕
僕
僕
とても懐かしいんだ。
カケル
僕
僕
まるで、ずっと僕を知ってくれていたかのような…。
カヤ
カケル
僕
でも、僕は時間だけじゃないこの好きの感覚を知りたい。
カケル
カヤ
それでも、彼を手放したくない。
カケル
カケルはハイボールをゴクリと飲み干し、グラスを叩きつけるように僕の目を睨む。
カケル
僕
負けじと僕も手元のグラスを飲み干しカケルのグラスに叩きつけた。
カヤ
カヤが上からカチャリとカシスオレンジを僕らのグラスに重ね合わせた。 妙な出会いの僕らのゴングが賑やかなBARにひっそりと鳴り響いていた。