目が覚めた場所は白い壁の保健室。
凛
今日もまた死ねなかった。
どうやって屋上から帰ってきたかも覚えていない。
手を伸ばしたら届きそうなところに君がいるのに、 どうしても届いてくれない。
どこまでも伸びていきそうなこの手なのに、 まだ、あなたが好きなあの子を越せやしない。
凛
あぁ、死にたい。
凛
でも死にたくない。
彼が止めてくれるから。
彼が止めてくれるから。
何回、この身を傷つけたって、足りないくらい。 いつになっても気付いてくれない。
凛
泣かせたくないから。
菅原考支
なぁ、今日遊びに行げる?
美愛
いいよ。
あの子は何もしなくても彼と話せるのに、 私は理由がないと話せない。
凛
菅原君、これ...
菅原考支
どうも。ニコッ
こうやって、彼に微笑んでもらうだけで十分なはずなのに、 もし、あの子の場所に私が立ってたら、なんて考えてしまう。
凛
はぁ、醜いな。
乾いた笑いが今日も零れる。
誰とも話さない。話せない。 ひとりぼっち。
それを隠してくれたのはあなたへの恋心。 でも、私はあなたの目には映ってくれない。 映っているのはあの子。
ねぇ、私はあなたに望んではいけない? あなたが私を好きかもしれないという1%にも満たないような確立に。
凛
なんで、こんな見た目で、体で生まれてきたんだろう?
赤い瞳が映る鏡。
凛
ホントは生きたい。
ホントの気持ち、届かないまま消えたくない。
凛
でも、死にたい。
こんなの抱えながら生きたくない。
こんなの抱えながら生きたくない。
彼は、私が死ぬって知ったら止めてくれるかな?
凛
でも、もう死ねない。
彼が、私の気持ちに気づかない。
それでいい。
彼が、私の気持ちに気づかない。
それでいい。
凛
私の中にいてくれれば寂しくない。
消えない痛みと消えていく記憶。 何度も繰り返して増えていく傷。
あぁ、来世で彼に会えたらな。
ここは病院。 一生治ることのない病気を抱えて、 もうすぐ消える命と、恋心を抱えて。