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10年後 大学院を卒業し 父の会社の仕事に ある程度慣れた頃。 父に頼まれ とある建物に向かった。

スタッフ

それではこちらで少々お待ちください。担当の者を呼んでまいります。

美琴

わかりました。

とあるスポンサーを 契約している所に 今後の内容について 話し合いに来た。 大手スポーツ道具を生産している 私の会社の道具を使っている 実際の選手の意見を 聞かせてもらうことになっている。 持ってきた資料に目を通していたら 扉が開いた。

田中

すいません。お待たせしました。

美琴

いえいえお気になさらず。

田中

阪神タイガース球団職員の田中と申します。

美琴

ススキノの広報を担当しております笹倉美琴です。本日はよろしくお願いします。

球団職員さんと 名刺交換をして 早速本題に入ろうとしたら とある選手が入ってきた。

田中

あ、ほら挨拶して。

修也

すいません。遅れました。山田修也です。

聞き覚えのある 名前で記憶を遡ろうとする。

田中

彼女はスポーツメーカーの次期社長の笹倉美琴さん。

修也

え?嘘…

美琴

もしかして…

顔を見ると 10年前に助けた男性だった。 こんなところで会うとは思わず 呆気に取られる。

田中

え?あ、もしかして10年前に助けていただいた笹倉様でしょうか?

美琴

あ、はい。そうですね…

田中

その説は本当にありがとうございました

美琴

いえいえ、そんなお気になさらず…

気を取り直して 今日の本題に入った。 これからの練習に使う 道具の設備などを 擦り合わせていく。

会議が終了し ロビーまで案内してもらった。

田中

本日はありがとうございました。

美琴

こちらこそありがとうございます。また後日道具を発送致しますね。

田中

ありがとうございます。ではお気をつけてお帰りください。

美琴

はい。それでは失礼します。

建物から出て 大きな交差点に出る。

美琴

えっと、戻ったらとりあえず会議の報告して…それから、

修也

あの!

美琴

びっくりした…

修也

あの時助けてくれてほんとありがとう

突然何を言い出すかと思ったら お礼の言葉だった。

美琴

いえいえ。そんな大した事してないけど…

修也

今からちょっと時間ある?

美琴

あるけど…

修也

ちょっと付き合ってもらっていい?

美琴

え?あ、うん。

近くの喫茶店に入り 飲み物を頼んだ。

修也

いきなり連れ込んでごめんね…

美琴

全然いいよ。何か話したかったことがあるんでしょ?多分。

図星だったようで 言葉に詰まる彼。 沈黙を破るように 頼んだ飲み物がやってくる。

美琴

まぁゆっくりでいいよ。

修也

うん…

美琴

最近どう?

修也

相変わらずプロで生活してる。最近はほとんど1軍でプレーしてるかな。

美琴

何年目だっけ?

修也

10年目かな。

美琴

長いじゃん。

修也

高卒やから。結構長く続くね。

彼が話しにくそうにしてたから 話題を振ると 普通に答えてくれた。 10年前のような 優しい口調で 喋ってくれる。あの日に 封じ込めた恋心が 蘇りそうな気がしたけど 住む世界が違いすぎて 躊躇してしまう。

修也

俺さ、好きだよ。

美琴

なにが?野球?

修也

野球も好きだけど、美琴の事がほんとに好き。

美琴

え?

修也

もちろん恋愛感情として。

突然のカミングアウトに びっくりして固まってしまう。

修也

あの日助けてくれた時、ひと目で好きになった。まぁ一目惚れってやつ。

美琴

……うん。

修也

でもいま彼女になって欲しいとか言ったら困らせちゃうから落ち着いたら返事をして欲しい。

美琴

………うん。わかった。ありがとう。

修也

俺が言いたかったのそれだけ…

美琴

ううん。言ってくれて嬉しい。ありがとね。

あの後 修也くんとは別れ 会社に戻った。 上司と社長である父に 今日の結果を報告し 家に戻った。

美琴父

修也くんに会ったのか?

美琴

うん。元気そうだったよ。

美琴父

そうか…母さんの言う通りだな…

美琴

なにが?

生前に母さんに 何か言われたのか 納得した様子の父。

美琴父

それがなぁ…

美琴

うん。

美琴父

母さんが亡くなる寸前に言うてて、

美琴

うん。

美琴父

ていうかこの手紙見てほしい。その方が早い。

美琴

だれから?

美琴父

母さんだ。

便箋を開けると 中には手紙が入っていた。

美琴父

母さんが美琴を第1に考えてくれる人が現れたら渡して欲しいと言っていたんだ。

美琴

それって…

美琴父

とりあえず手紙に目を通しなさい。

手紙に目を通すと 母さんの優しい字で 私に向けメッセージを書いていた。 私に夢があるのに 跡継ぎを進めたせいで 苦しい思いをさせてしまったことを 悔やんでいたらしい。 私の事だから 溜め込んで将来の思いや恋心を 押し込んでしまうかもしれない。 けど自分の素直な気持ちを そのままで生きて欲しい。 それが母さんの本当の願いだったらしい。

美琴父

………ほんとは薬剤師になりたかったんだろう?

美琴

なんでわかるの?

美琴父

そら美琴の本棚見てたらわかる。

美琴

………当たり前か。

美琴父

あと、修也くんのことも好きなんだろ?

美琴

………うん。

美琴父

両思いか。

美琴

なんでそれも…

美琴父

実は縁談が来ててな。取り引き先の社長さんの息子が修也くんだったんだよ。

美琴

え?修也くんのお父さんって部長さんじゃ…

美琴父

1悶着あった時辞職されるそうだったんだが、前社長が辞職届けをシュレッダーにかけたらしい。

美琴

なんで?

美琴父

彼のお父さん社員からの信頼が厚かったからだ。辞職を取りやめる代わりに次期社長に任命されたらしい。

美琴

そっか…

美琴父

うちとも縁があったから修也くんとぜひ縁談を考えて欲しいとの事だ。

美琴

それって本人知ってるの?

美琴父

ああ。元々美琴のこと好きだったそうだよ。

美琴

そっか…

10年前 彼と別れた後の 父の言葉は 私の恋心を全て 見透かしていたらしい。 もちろん彼の気持ちも全て。

美琴父

返事するなら早めにな。

美琴

うん。

母さんの手紙の通り 素直に生きることを 肝に銘じた。

美琴

父さん

美琴父

ん?

美琴

私その縁談受ける。

美琴父

本当にいいのか?

美琴

うん。私素直に生きるって決めたから。

美琴父

そうか。相手さんに伝えておくな。

美琴

うん。

彼との会話を思い出す。 過去と変わらない 優しい眼差しと口調が 繰り広げる私への思い。 一方私は住む世界が違うと決めつけ 思いを塞ぎ込んでしまった。 彼の健気な気持ちを 胸にしまいこんで 部屋に向かった。

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