あれは去年の文化祭
俺は悪友と共に屋上に侵入し
土嚢を積み上げて
小さな山を築き上げた
そして蝋燭を大の字に並べ
拡声器でこう宣言したのだ
紫
これが
紫
苺高校の送り火だー!
どうしても五山の送り火を
文化祭で再現したかった
だからしてみた
もちろん
めちゃくちゃ怒られた
2週間の停学処分を食らい
田舎の母ちゃんは泣いた
桃
僕
桃
その話聞いてなんて馬鹿なんだろうって感動したよ
桃
だから
桃
何かあったら真っ先に紫ちを頼るって決めてたんだ
桃
実行力が伴った馬鹿は無敵だもん!
頭を1周するように桃が移動し
熱弁する
褒められているようで
けなされている
だが
これで合点がいった
同じ学校に通いながらも面識がなく
ノリで何でもしてくれるとの噂の
馬鹿は復讐劇にうってつけの
人材と睨んだらしい
誰が馬鹿か
紫
でも
紫
初対面だよな?
紫
なんで俺の住所知ってたんだよ
桃
同級生が鍵垢で
桃
紫ちの部屋番号晒してたし
紫
待て待て待て
桃
紫ちのアパートって
桃
有名だよ?
どうやら
俺の知らぬところで
住所が共有されているらしい
郵便受けに変な手紙が
届いていたのはこのせいか
そういえば
この前は
生きた鯉が突っ込まれていた
勿体ないので
勿体ないので刺身にして食べたが
しっかりと腹を下して地獄を見た
桃
紫ちは噂通りの馬鹿だし
桃
部屋は動物園みたいな臭いがして最悪だったけど
桃
信じて良かった!
ものすごく酷い評価を口にしながら
桃が万遍の笑みを浮かべる
俺は自分でも情けなくなるくらい
単純なので
こんな顔されると
住所なんて安い物だと思ってしまう
減るもんじゃないし
紫
...まあいいや
紫
頼ってくれてありがとう
桃
うんっ
桃
これで僕たち共犯者だねっ
そう言いながら
桃はぺこりと頭を下げる
部屋で見せた闇の深さと
今のような明るい表情
相反した要素が
目まぐるしく切り替わる姿に
どこか歪な印象を受けた
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