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コンビニの陳列棚の前で、にらめっこする俺に声がかかる。
来栖三成
俺に声を掛けてきたのは、来栖の兄貴。
中々、決めきれない俺に対し、来栖の兄貴は今にも溜め息をつきそうな程に、顔の全面に呆れを滲ませていた。
阿蒜寛太
リップの箱片手に泣き言を溢す。
化粧品の陳列棚には、リップスティック、ティントリップ、リップグロス、リキッドルージュの計4種類の口紅が並んでいた。
種類だけならまだ良かったが、そこに色味の違いまでプラスされるので、更にややこしい事になっている。それなら、一色に絞れば良いだろと思うかも知れないが、同じ赤色でも発色が全て違うのだ。その中から、自分に似合う色を探せなんて無理ゲーである。
阿蒜寛太
普段、化粧をしない身としては何が何やらさっぱりで、一つ一つに、どういう違いがあるのかさえ分からない。
阿蒜寛太
来栖三成
来栖三成
そう何を隠そう、今回俺が口紅を選ばなきゃいけなくなった原因は、一週間後に迫ったハロウィンのせいである。
ハロウィンの時期になると各地で、普段の鬱憤(うっぷん)ばらしか知らないが、暴徒化(ぼうとか)する奴が出てくる。
そして、俺達のシマである花宝町も毎年、被害にあっている。
暴れるのが一人ならまだ良いが、多数の人間が寄せ集まって暴徒になると厄介で、人数が多ければ多い程、鎮圧(ちんあつ)するまでに時間がかかり過ぎてしまう。
だから、今回は結託される前に潰してしまおうという話になった。よって、親父から、組員全員にハロウィンに仮装して参加するように、命が下されたのだ。
生まれてこの方、 ハロウィンみたいなイベントには縁がなかった。
ハロウィンに縁がなかったのは、何も俺だけではなく、兄貴達も同じだった。たった、一人、犬亥の兄貴を除いて。
犬亥鳳太郎
犬亥鳳太郎
流石は一児のパパだ。娘の幼稚園行事などで、体験した事があるようだ。
ただ一つ気になるのは、お菓子が貰える発言をした際に、明らかに視線が俺を向いた事だ。いや、確かに俺は、この中で一番若いですけど、お菓子を貰って喜ぶほど子供じゃないんですけど。
犬亥鳳太郎
犬亥の兄貴が、籤が入った箱を取り出した。
そして、順番に籤を引いていく事となった。
籤の結果、柳楽の兄貴はオーソドックスな白布のお化け、龍元の兄貴はエジプトのファラオ、伊武の兄貴はアラブの石油王、月麦の兄貴は狼男、鮫洲の兄貴はスフィンクスの着ぐるみ、橘花の兄貴はストⅡのガイルだった。
橘花の兄貴の籤だけは、意図的に橘花の兄貴が引くように仕向けられていた気がするのは、果たして俺だけなのだろうか?
犬亥鳳太郎
そして、俺の番が回ってきた。最後の籤を引いて、紙を開くと、そこには魔女っ子と文字が書かれていた。
籤の結果、俺だけ女装する羽目になったのだ。
衣装は鮫洲の兄貴が、全員分手作りしてくれる事になった。しかし、小物などは各自調達なので、ちょうどシマの見回りついでに立ち寄ったコンビニで、仮装用の化粧品選びをしていた訳なのだが、選択肢の多さに思いの外、難航(なんこう)中なのだ。
来栖三成
未だ口紅一つ決めかねている、俺に来栖の兄貴から、兄貴の方へ顔を向けるように指示された。
そう言えば、独特ではあるが、来栖の兄貴も口紅をしていたなと思い出し、もしかしたら、何かアドバイスをくれるかもと勝手に期待して、俺は来栖の兄貴の方へ顔を向けた。
来栖三成
顔を横に向けた瞬間、目を閉じた来栖の兄貴の顔が、俺の視界にドアップで映ったかと思えば、次の瞬間、唇に柔く、温かい物が当たる。
阿蒜寛太
時間にして、たったの数秒の出来事だった。
来栖の兄貴が俺から離れると同時に、唇にあった柔かな感触と温度が消えていった。
来栖三成
そう言って、来栖の兄貴は、兄貴の口紅の残る俺の唇を、親指の腹で拭った。
阿蒜寛太
咄嗟の出来事を処理しきれる程、俺の頭はハイスペックに出来ちゃいない。
俺はだだただフリーズしたまま、来栖の兄貴の顔を見つめるしか出来なかった。
未だ混乱している俺を他所に、来栖の兄貴は商品棚から、一本のティントリップを摘まみあげると、俺の手を開かせて、手の上に置いた。
来栖三成
阿蒜寛太
来栖三成
来栖三成
何の事はないとばかりに、来栖の兄貴は店の外に出る為に、颯爽(さっそう)と俺の横を通り過ぎようとした。
通り過ぎ様に、来栖の兄貴がぼそっと一言だけ、俺だけに聞こえる声量で囁いた。
来栖三成
ついに俺の頭は情勢を処理しきれず、オーバーヒートを起こし、ぷしゅ~という謎の煙を頭から吹き出しながら、コンビニの床に座り込んだ。
おわり
あとがき 鮫洲ちゃんも可愛いよね。久々に、いぶあびでハロウィン話でも良かったけど、口紅のシーンを入れるなら、どうしても来栖の兄貴しか相手がいないので、今回はくるあびになった。狼男に美味しくいただかれる、つむあびでも良かったっちゃ、良かったんだけどな。 のだかぶ、野田ニキ吸血鬼、ハロウィン話が読みたいな~。なぐかぶ、あおかぶ、くがかぶでもいいけど。 当の本人は書けるけど書く気はない模様。そう言えば、ドンキーのコスプレコーナー、何故かキョンシー率高いのな。今年の流行りだろうか?キョンシー好きだし、キョンシーな華太ちゃんも可愛いだろな~( ‘༥’ )ŧ‹”ŧ‹” 流行りにちなんで、面白小耳情報。ファッション関係の話になるけど、毎年その年に流行る色や服のデザインって、実は二年前から決まってるって知ってました? INTERNATIONAL COMMISSION FOR COLOR(国際流行色委員会)と呼ばれる国際機関によって、二年前の6月と12月にシーズン別の世界共通の流行色が決められます。この会議で、国の社会情勢や人々の心理を加味して、500色から20~30色にイメージカラーを絞ります。そして、世界共通色選定後に、日本国内向けのトレンドカラーが選定されるようになります。ここで服のデザインなども決まります。実はこの話は、ショップの店員さんが、何故か力説してくれたんですよね。行きつけの店とかでもないのにな。まじで意味不やった(ಠωಠ) pixivで素敵なのだかぶ、わなかぶ作品を読んだらインスパイアされて、創作活動が進む、進む。されど、リクの消化は遅々として進んでない模様(;゜0゜)激しめ18禁って何だ?華太を和ニキの顔の上に乗せれば良いのだろうか( -᷄ω-᷅ ).。oஇ まあ、大まかな構想は練れてるんだけど、一つの作品を集中して書くのが苦手やから、どれもこれも中途半端な状態でメールボックスに溜まってる。 リクが進んでないけど、きどかぶで書きたい話あるんだよね。そっちまで手を出すとなると余計回らなくなる。でも書きたい。