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手に伝わる不快感で

ボクは意識を取り戻した

珀兎(ハクト)

ボク

珀兎(ハクト)

ボクは、母さんを殺してしまった!

珀兎(ハクト)

うわああっ!!

握りしめていた刀を 放り投げる

珀兎(ハクト)

(母さんは、みんなを殺した)

珀兎(ハクト)

(母さんは、父さんを殺した……)

珀兎(ハクト)

(そして、今)

珀兎(ハクト)

ボクが、ボクじゃなくなって……

珀兎(ハクト)

母さんを……殺してしまった?

珀兎(ハクト)

ぐぅ…ぐえっ!

現実が受け入れられず

ボクは、その場で吐いた

ガシャン!

祖父

おい珀兎、しっかりせえ!

祖父

よう見い!
それはもう、人やなか!

祖父

はよう、顔ば見い!

珀兎(ハクト)

顔……?

恐る恐る覗き込むと

切り離された頭部には 2本の角があった

珀兎(ハクト)

これって、七三五様と同じ……

珀兎(ハクト)

それに、この顔!

珀兎(ハクト)

母さんじゃない

これが母でないのなら

ボクはいったい……

誰を 殺してしまったんだ?

原石(ハライシ)

おい、宇山!

原石(ハライシ)

今は、それどころじゃない!

原石(ハライシ)

美羽が……!

七面(ナナモ)

うぅ……

珀兎(ハクト)

七面さん!

珀兎(ハクト)

顔色が悪い……

原石(ハライシ)

足から血が出てて……

原石(ハライシ)

止まらないんだ!

珀兎(ハクト)

すぐに止血しないと!

ボクは破れた服を拾って

七面さんの足首を きつく縛った

珀兎(ハクト)

救急車は!?

原石(ハライシ)

もちろん呼んだ!

原石(ハライシ)

だけど到着まで、30分以上かかるって……

珀兎(ハクト)

そんな……!

七面さんはケガをして 歩けない

いったい、どうすれば……

祖父

あんぽす!

祖父

救急車なんか待っとったら、日がくれると!

祖父

ワシが車で送ったるから、はよ、こっち来んね!

珀兎(ハクト)

でも、母さんをそのままには……

祖父

兎和子は手遅れたい!

祖父

……もう、死んだと

原石(ハライシ)

宇山!

原石(ハライシ)

悪いが、手を貸してほしい

珀兎(ハクト)

珀兎(ハクト)

わかった!

原石くんと一緒に 七面さんを抱え

祖父の車に運んだ

珀兎(ハクト)

母さんは、なんであんなことを……

珀兎(ハクト)

それに、あの顔

珀兎(ハクト)

あれは、母さんじゃなかった……

祖父

兎和子は、しゃれこうべば使うて、神降ろしをしよったと

祖父

自分の体さ、器にして……

珀兎(ハクト)

しゃれこうべって?

原石(ハライシ)

頭蓋骨のことだよ

珀兎(ハクト)

え……

原石(ハライシ)

でも、どうやって七三五様の骨を手に入れた?

原石(ハライシ)

七三五様は、100年以上も前に死んだ

原石(ハライシ)

骨は慰霊碑の下に埋まって、もう土に返ってるはずじゃ……

祖父

それは、兎吉たい

珀兎(ハクト)

どういうこと?

祖父

儀式の前の晩

祖父

兎吉は、七三五様を逃がしよったと

祖父

そんで、自分が身代わりになったげな

原石(ハライシ)

そんなこと、出来るわけがない!

珀兎(ハクト)

そうだよ。それに、七三五様は女の子だよ

珀兎(ハクト)

すぐにバレるんじゃない?

祖父

お前らは、七三五様の姿さ、知らんと?

祖父

頭にツノ、背に羽。爪はウロコまみれの化け物たい!

祖父

……同じことすれば、見分けはつかんと

原石(ハライシ)

それじゃあ……

原石(ハライシ)

儀式の日に死んだのは……

祖父

ああ、兎吉たい

原石(ハライシ)

そんな……!

祖父は話を続けた

神様が求めたのは 七三五様

しかし 捧げられたのは兎吉

不完全な儀式により

神様は怒り

十五祭の儀は 形を変えた

村の繁栄を叶えるもの ではなく

十五になった子の命を 奪い取る呪いへと

珀兎(ハクト)

それが、十五祭……

原石(ハライシ)

くっ……!

原石(ハライシ)

兎吉の身勝手で、こんな儀式が始まったのか……!

祖父

ふんっ!

祖父

やっぱり、原石の坊やの。血ば争えん!

祖父が急に ブレーキをかける

珀兎(ハクト)

うわっ!

祖父

着いたと

珀兎(ハクト)

あれが、病院?

道の先に見えたのは

苔にまみれた建物

珀兎(ハクト)

(診療所って、看板には書いてあるけど)

珀兎(ハクト)

(大丈夫なのかな?)

祖父

悪いが、ここで降りてくれ

祖父

こっから先、ワシと珀兎は行けんよってに

祖父

七面のお嬢さんば連れて、降りてくれんか

珀兎(ハクト)

え、ボクもだめなの!?

祖父

すまんな……

祖父

ワシはまだ、許せんとよ

祖父

儀式の責任ば、ぜんぶ十五夜家に押し付けよって

祖父

神社も神具も、ぜんぶ取りあげよった

祖父

御三家と、原石家の人間が

珀兎(ハクト)

そんな……だからって

珀兎(ハクト)

原石くん、ボクも手伝うよ

車のドアを開けようと 手を伸ばすと

原石(ハライシ)

いいんだ

原石くんが止めた

原石(ハライシ)

ここまで送ってもらって、助かった

原石(ハライシ)

それで充分だ

原石(ハライシ)

十五夜さん、ありがとうございました

祖父

……

七面(ナナモ)

ううん……

原石(ハライシ)

美羽、診療所に着いたぞ

原石(ハライシ)

すぐに手当てしてもらおうな?

七面(ナナモ)

七……三五、様……

バンッ

原石くんが 乱暴にドアを閉めると

祖父は車を走らせた

祖父

珀兎

祖父

お前は、なんも心配せんでよか

祖父

全ての責任は、ワシがこなしておくけん

珀兎(ハクト)

おじいちゃん……

珀兎(ハクト)

珀兎(ハクト)

本当に……

珀兎(ハクト)

母さんだけが、悪かったのかな?

珀兎(ハクト)

始まりは、七三五様を犠牲にした儀式なのに……

祖父

お前は、なんも知らんから、そげなことが言いよる!

祖父

家に、血の付きよったスコップがあったと!

祖父

他にも、ぎょうさん。物騒なモンが……!

祖父

珀兎。
お前には、未来がある

祖父

東京さ帰れ

珀兎(ハクト)

帰らない!

珀兎(ハクト)

ボクは、この村に残る

祖父

それは、いかん!

祖父

イヤな思いするだけたい!

祖父

兎和子のことで、みんなから腫れもん扱いされるに決まっとう!

珀兎(ハクト)

それでもボクは、この月無村に居たい

珀兎(ハクト)

やっと……

珀兎(ハクト)

よう、やっと……

珀兎(ハクト)

この名ば、呼んでもろたと

祖父

……珀兎?

珀兎(ハクト)

もう二度と……

珀兎(ハクト)

お前を一人にせんとよ

空にかがやく ツキに誓う

珀兎(ハクト)

昔も今も

珀兎(ハクト)

ワシはずっと、お前のお付き様やけ

珀兎(ハクト)

そばば、離れんとよ

珀兎(ハクト)

並子……

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