誠
笑那
笑那
誠
笑那
彼女の腕は僕から離れ
先へ先へと走ってしまう
僕は捕まえなくちゃいけないのに
どうしても追いつくことができない
誠
笑那
彼女は泣いている
そんな視界の悪い状態で
きっと見えていなかったんだ
誠
誠
誠
ドンっ!
車のブレーキ音
何かとぶつかった車の鈍い音
人の悲鳴
青を知らせる信号音の鳴り響く交差点
誠
誠
彼女の荒い息
その音を最後に 僕は意識を失った
目覚めたら見知らぬ天井…
ではなく、 見慣れた僕の部屋の天井だった
マコト
マコト
それにしては あまりにリアルで恐ろしかった
ピピピピ、ピピピピ
マコト
マコト
あまりに恐ろしい夢を見ていたせいか
目覚ましの音でびっくりした
情けない…
マコト
マコト
僕は予定がない休日は目覚ましをかけないので
目覚ましをかけたと言うことは予定があると言うことだ
マコト
マコト
時刻は10時半だった
カレンダーに目をやる
マコト
僕は思わず叫んでしまった
“10月20日”
“1年記念日”
“10時、時計台前”
そこからはもう、秒だった
準備を10分で終わらせた
マコト
もう、携帯なんて見る余地もなかった
焦ってたせいか連絡もせず
だから僕は気がつかなかったんだ…
「彼女からの連絡がない」
と言うことに…
マコト
マコト
エナ
時計台の前にエナはしゃがみこんでいた
そして何故か、泣いていた
マコト
マコト
エナ
エナ
エナ
マコト
エナ
マコト
エナ
エナ
マコト
マコト
エナ
エナ
マコト
エナ
エナ
言われてみればそうだ…
今日は日曜日
広い公園だから人がたくさんいてもおかしくはない
マコト
マコト
エナ
エナ
“世界から人が消えてしまった”
そう言うと 彼女はまた泣き出してしまった
僕は背中をさすろうと近づく
しかし…
マコト
マコト
エナ
エナ
マコト
マコト
“触れない”
言おうとして、やめた
さらに彼女が怖がってしまうと思った
エナ
マコト
エナ
マコト
エナ
マコト
マコト
マコト
マコト
マコト
エナ
そういって彼女は僕の後をついてきてくれた
正直この状態はよくわからないし
絶対2人でいたほうが安全だ
エナ
マコト
エナ
“嘘つき”
彼女の言葉は聞こえていた
何故か僕は、なんとなく聞こえないふりをしてしまった…
家にいる間、連絡はLIMEですることにした
ちなみにエナが使っているのは僕の前の携帯だ
マコト
エナ
マコト
マコト
エナ
彼女の態度はそっけない
“嘘つき”
その言葉がどうにも引っかかる
マコト
エナ
マコト
マコト
マコト
エナ
何かを打ちかけてやめたみたいだ
マコト
マコト
エナ
???
???
エナ
???
???
???
???
???
エナ
エナ
???
???
???
???
???
???
???
???
エナ
エナ
遺影に映る誠は
いつも私に向ける温かい笑顔だった
???
???
マコト
???
???
???
???
???
???
???
???
???
???
???
???
???
???
???
???
マコト
マコト
エナ
エナ
マコト
マコト
マコト
エナ
エナ
マコト
マコト
マコト
エナ
そう言って、エナは僕に抱きつこうとした
が、それはできなかった
エナ
エナ
マコト
マコト
今の状況が
エナを抱きしめられない理由が
世界から人が、消えた理由が
エナ
マコト
マコト
エナ
マコト
エナ
ここ最近の夢
あれは、現実世界の僕たちだ
僕たちは“あの日”事故にあった
彼女をかばって
僕は…
マコト
マコト
マコト
そう…
本当に世界から消えてしまったのは
僕の方だったんだ…
エナ
エナ
エナ
マコト
マコト
マコト
マコト
マコト
マコト
エナ
マコト
マコト
“あの日”
僕は笑那の姉
笑美と歩いていた
誠
笑美
笑美
誠
誠
笑美
笑美
誠
“一年記念日”
“そのプレゼントを買う”
これが僕の使命だった
誠
誠
誠
誠
笑美
笑美
誠
これが、いけなかったのだ
彼女は、一緒にいるところを見てしまった
それで、勘違いしてしまったのだ
笑那
誠
笑美
笑那
誠
笑美
笑美
笑美
誠
笑那
誠
笑那
誠
笑那
そして笑那は走って行ってしまった
誠
ここからは、あの夢の通り
誤解を生んだまま
僕は死んでしまったんだ……
マコト
マコト
エナ
エナ
エナ
マコト
あの時の“嘘つき”は
誤解したままの彼女からの無意識の発言なのだろう
エナ
エナ
エナ
マコト
マコト
マコト
マコト
エナ
エナ
エナ
マコト
マコト
エナ
マコト
マコト
エナ
エナ
マコト
エナ
エナ
マコト
マコト
マコト
マコト
マコト
彼女はどんどん濃くなって
こっちに来ようとしてる
エナ
マコト
僕は彼女を抱きしめた
マコト
マコト
エナ
次の瞬間
彼女の体が光り出した
抱きしめられるくらいまでこちらに来ていた彼女の体が
すうっと薄くなった
エナ
エナ
彼女がそう行った瞬間
パッと消えてしまった
あたりに残ったのは
ただひたすらの静寂だった
マコト
頑張って我慢していた涙も
頬を伝って床に落ちた頃には
…僕の姿も消えた
笑那
あれから5年が経った
玄関に飾ってある誠の写真を見て
今日もドアを開ける
笑美
今は就職先の関係で、姉の家に居候している
目覚めてから“あの日”のことを何度も謝られた
そして、時計を渡された
今でも大切に使っている
時計の針は
誠と一緒に刻むはずだった時を 繰り返し刻んでいる
笑那
笑那
誠が救ってくれた“命”を
一度は捨てかけた“命”を守って
今日も、生きていく。
コメント
4件
気楽に読むんじゃなかった...涙出てきた
すごくリアルなストーリーで感情移入できました😢