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テラーノベル(Teller Novel)

まって!まって、笑那!

笑那

嫌よ!離して!

笑那

あんたなんか信じられない!!

違うんだ!話を聞いて!

笑那

聞きたくないっ!

彼女の腕は僕から離れ

先へ先へと走ってしまう

僕は捕まえなくちゃいけないのに

どうしても追いつくことができない

待って!

笑那

来ないで!!

彼女は泣いている

そんな視界の悪い状態で

きっと見えていなかったんだ

笑那待って!

止まって!

止まれっ!!!

ドンっ!

車のブレーキ音

何かとぶつかった車の鈍い音

人の悲鳴

青を知らせる信号音の鳴り響く交差点

…え、な

だい、じょうぶ…?

彼女の荒い息

その音を最後に 僕は意識を失った

目覚めたら見知らぬ天井…

ではなく、 見慣れた僕の部屋の天井だった

マコト

え、夢??

マコト

今の全部夢だったの?

それにしては あまりにリアルで恐ろしかった

ピピピピ、ピピピピ

マコト

(びくっ)

マコト

(なんだ目覚ましか…)

あまりに恐ろしい夢を見ていたせいか

目覚ましの音でびっくりした

情けない…

マコト

(目覚ましをかけたってことは)

マコト

(今日は何か予定があるのか…)

僕は予定がない休日は目覚ましをかけないので

目覚ましをかけたと言うことは予定があると言うことだ

マコト

(なんだっけ??)

マコト

(てか、スヌーズじゃん…)

時刻は10時半だった

カレンダーに目をやる

マコト

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

僕は思わず叫んでしまった

“10月20日”

“1年記念日”

“10時、時計台前”

そこからはもう、秒だった

準備を10分で終わらせた

マコト

(やばいやばいやばいやばいやばい)

もう、携帯なんて見る余地もなかった

焦ってたせいか連絡もせず

だから僕は気がつかなかったんだ…

「彼女からの連絡がない」

と言うことに…

マコト

エナ!

マコト

ごめん!!

エナ

まっ、マコト…

時計台の前にエナはしゃがみこんでいた

そして何故か、泣いていた

マコト

エナ??

マコト

なんで泣いてるの??

エナ

怖い夢を見たの

エナ

マコトが車にひかれる夢

エナ

本当にリアルで怖かったの

マコト

えっ、俺も…

エナ

しかも時間になっても来ないし!

マコト

ご、ごめん…

エナ

私も携帯無くして

エナ

連絡のしようがなくて…

マコト

そっかそっか

マコト

不安にさせてごめんね

エナ

それにね

エナ

人がいないの…

マコト

え?どう言うこと??

エナ

気がつかなかった??

エナ

どこにも人がいないの!!

言われてみればそうだ…

今日は日曜日

広い公園だから人がたくさんいてもおかしくはない

マコト

た、確かに

マコト

必死すぎて気がつかなかった…

エナ

どう考えてもおかしいよね

エナ

怖い…

“世界から人が消えてしまった”

そう言うと 彼女はまた泣き出してしまった

僕は背中をさすろうと近づく

しかし…

マコト

!?

マコト

(触れないっ!?)

エナ

エナ

こんな時に、抱きしめてもくれないんだね…

マコト

ごっ、ごめん…

マコト

でも、さわれっ…

“触れない”

言おうとして、やめた

さらに彼女が怖がってしまうと思った

エナ

今日のところは帰る…

マコト

いや、離れないほうがいいと思う

エナ

大丈夫だよ…

マコト

僕といるのは嫌??

エナ

そうじゃないけど…

マコト

じゃあさ、僕の家に行こう

マコト

エナは二階にいてくれても構わないから

マコト

でもまだこの状態はよくわからないし

マコト

近くにいてくれたほうが僕も安心する

マコト

エナと離れたくない

エナ

わかった…

そういって彼女は僕の後をついてきてくれた

正直この状態はよくわからないし

絶対2人でいたほうが安全だ

エナ

………

マコト

何か言った???

エナ

なにも言ってない

“嘘つき”

彼女の言葉は聞こえていた

何故か僕は、なんとなく聞こえないふりをしてしまった…

家にいる間、連絡はLIMEですることにした

ちなみにエナが使っているのは僕の前の携帯だ

マコト

お腹減ってない??

エナ

大丈夫

マコト

そっか

マコト

何かあったら言ってね

エナ

うん

彼女の態度はそっけない

“嘘つき”

その言葉がどうにも引っかかる

マコト

今日で、一年だね

エナ

そうだね

マコト

よくわからない感じになっちゃったけど

マコト

僕はずっとエナが好きだよ

マコト

この先も変わらない

エナ

何かを打ちかけてやめたみたいだ

マコト

とりあえず、もう時間も遅いし寝ようか

マコト

おやすみ

エナ

おやすみ

???

この度は、御愁傷様です…

???

ご丁寧にありがとうございます

エナ

(誰の葬式だろう…)

???

皆さま、本日はご参列いただき

???

ありがとうございます

???

本来、この場に立つのは父でありますが

???

すでに他界

???

まさか、最愛の息子まで失うとは思っても見ませんでした

エナ

(この葬式…)

エナ

(もしかして…)

???

誠は非常に優しい子でして

???

旦那を無くした時、必死で励ましてくれました

???

私に、寄り添い…

???

ずっと…サポートを…

???

ずっと、支えてくれました

???

きっと今回の最期も

???

納得していると思います

???

とても、素晴らしい息子でした

エナ

(誠の…)

エナ

(葬式…)

遺影に映る誠は

いつも私に向ける温かい笑顔だった

???

起きて!お願い!

???

おいっ!しっかりしろっ!

マコト

(誰の声だ??)

???

いやぁっ…

???

お父様、お母様

???

少しお時間をいただきたいのですが…

???

はい、なんでしょう

???

娘さん、外傷もほとんどなく

???

目覚めてもおかしくはない状況です

???

は?

???

どういうことですかっ??

???

わかりません…

???

目覚めるのを、拒否してるかような…

???

このまま目が覚めないことも充分にあり得ます

???

その時は、覚悟してください…

???

そんな…

???

嫌よっ

???

ねぇ起きて、お願い!!

???

笑那!!!!!

マコト

(あぁ、エナの両親だ…)

マコト

(なんてリアルな夢なのだろう…)

エナ

マコトっ

エナ

起きてマコト!

マコト

んっ、…

マコト

エナ??

マコト

どうしたの?そんなに慌てて

エナ

夢を見たの!

エナ

マコトのお葬式の夢…

マコト

そうなの??

マコト

僕は、君が入院してる夢を見たよ

マコト

最近は変な夢ばかりを見るね

エナ

よかった、生きてて

そう言って、エナは僕に抱きつこうとした

が、それはできなかった

エナ

さわ、れない…

エナ

なんでよ…

マコト

エナ…

マコト

僕わかったんだ

今の状況が

エナを抱きしめられない理由が

世界から人が、消えた理由が

エナ

何がわかったの??

マコト

エナ、君は

マコト

帰れる、帰るんだ

エナ

帰るって、どこに??

マコト

元の世界に

エナ

え??

ここ最近の夢

あれは、現実世界の僕たちだ

僕たちは“あの日”事故にあった

彼女をかばって

僕は…

マコト

あの日僕は死んでしまった

マコト

ここは、死後の世界

マコト

人は消えてなんかないよ

そう…

本当に世界から消えてしまったのは

僕の方だったんだ…

エナ

じゃっ、じゃあ私は??

エナ

ここが死後の世界だとしたら

エナ

私も死んでしまったの??

マコト

いや、エナは生きてる

マコト

エナは実態がここにないから

マコト

僕は当然触れない

マコト

エナが僕に触れないのは、多分

マコト

…………

マコト

実態が、触ることを拒んでいるからだ

エナ

………

マコト

全部思い出したよ

マコト

“あの日”何があったか…

“あの日”

僕は笑那の姉

笑美と歩いていた

すいません笑美さん

笑美

いいよいいよっ

笑美

誠くんは本当に笑那が好きねぇ〜

それはもう!

世界一大好きです

笑美

やだ〜

笑美

なんか照れちゃう

なんで笑美さんが照れるんですか〜

“一年記念日”

“そのプレゼントを買う”

これが僕の使命だった

僕、ほんとこういうの選ぶのセンスないんですよっ

いつもプレゼントすると振られるんですよね

でも笑那は特別だから

彼女がとっても喜ぶものをあげたいんです!

笑美

笑那は本当に愛されてるわ〜

笑美

これからもよろしくねっ

はいっ!

これが、いけなかったのだ

彼女は、一緒にいるところを見てしまった

それで、勘違いしてしまったのだ

笑那

誠…

あっ笑那!

笑美

あら笑那!偶然ねぇ

笑那

何してるの??

え、えっと…

笑美

やだー笑那

笑美

そんな怖い顔しないで!

笑美

ちょっと相談に乗ってたのよー

そ、そう!相談乗ってもらってた!

笑那

私には出来ない相談?

あ、えっと…

笑那

もういい

笑那??

笑那

もう知らないっ!!

そして笑那は走って行ってしまった

笑那!!!

ここからは、あの夢の通り

誤解を生んだまま

僕は死んでしまったんだ……

マコト

これが真実だよ

マコト

こんな形でも、伝えられてよかった

エナ

そっ、そんな…

エナ

わたし…は…

エナ

ごめんなさいっ!!

マコト

いいんだよ、誤解されるようなことをしてしまった僕が悪い

あの時の“嘘つき”は

誤解したままの彼女からの無意識の発言なのだろう

エナ

でもっ!

エナ

私はとり返しのつかないかをしてしまった!!

エナ

現実世界に戻っても、もうマコトはいない!!

マコト

ダメだよエナ

マコト

君は、帰らなきゃダメだ

マコト

ここにいたいと願うのはやめて

マコト

今僕は君に触れる、
少しづつ君はこっちに来ようとしてる

エナ

だって帰りたくないもの

エナ

マコトはここにいるじゃない!

エナ

ここで2人で暮らそう!!

マコト

ダメだよ、ここは不完全な場所なんだ

マコト

いつかなくなっちゃうよ

エナ

でも!でもっ…

マコト

エナ、これを君にあげる

マコト

あの時渡せなかった、記念日のプレゼント

エナ

……

エナ

時計??

マコト

気に入ってくれた??

エナ

もちろん!!ありがとう!

エナ

大事にするね!!!

マコト

ちゃんと、君の時間を進めるんだ

マコト

向こうに戻ったら多分笑美さんが渡してくれるよ

マコト

君を追いかけるとき、笑美さんに預けたんだ

マコト

僕から渡せなくてごめんね

マコト

ダメだって、戻りたいって願って?

彼女はどんどん濃くなって

こっちに来ようとしてる

エナ

でもっ

マコト

エナ

僕は彼女を抱きしめた

マコト

大好きだ、愛してる

マコト

だから、生きて欲しい

エナ

マコトっ!

次の瞬間

彼女の体が光り出した

抱きしめられるくらいまでこちらに来ていた彼女の体が

すうっと薄くなった

エナ

マコト!私も

エナ

愛してる!!

彼女がそう行った瞬間

パッと消えてしまった

あたりに残ったのは

ただひたすらの静寂だった

マコト

エナっ!エナっ!

頑張って我慢していた涙も

頬を伝って床に落ちた頃には

…僕の姿も消えた

笑那

行ってきます!

あれから5年が経った

玄関に飾ってある誠の写真を見て

今日もドアを開ける

笑美

行ってらっしゃーい

今は就職先の関係で、姉の家に居候している

目覚めてから“あの日”のことを何度も謝られた

そして、時計を渡された

今でも大切に使っている

時計の針は

誠と一緒に刻むはずだった時を 繰り返し刻んでいる

笑那

(よしっ)

笑那

(今日も頑張るぞっ!!)

誠が救ってくれた“命”を

一度は捨てかけた“命”を守って

今日も、生きていく。

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