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《スパイは恋に落ちるか?》

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《スパイは恋に落ちるか?》

8 - 第8話 笑ってんじゃねーよ、任務だろ。

♥

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2025年08月07日

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『笑ってんじゃねーよ、任務だろ。』

「ーーあれが、今回のターゲットと接触してる男だ」

耳のインカム越しに聞こえる本部の声を、片手で抑えながら聞き流す。 僕の視線はーー えとさんに向いていた。

……正確には、その横にいる、えとさんの“任務上の恋人役”の男の指先。 テーブルの下。あいつの手が、えとの太ももにそっと重ねるのが、見えた。

しかも、えとさんがそれを……払わない。 えとさんが“まるで恋人のような笑み”を浮かれてるのが、はっきり見えた。

ーー何やってんだよ、ほんと。 任務だって、分かってる。

僕だって、任務で女スパイと腕を組むことくらいあるし、 えとさんにだって、文句を言う権利なんてない。

けど。

🌷

……笑ってんじゃねぇよ

無意識に呟いた声が、自分の耳にすら低く聞こえた。

任務終了後。 ホテルの非常階段。

🌷

よー、いい笑顔でしたね。恋人役のプロですか?

壁にもたれて腕を組みながら、皮肉っぽく声をかけると、 えとさんは少し驚いた顔をしてこっちを見た。

🍫

なに?見てたの?

🌷

丸見えだったよ。太ももに触れられてんのも、笑ってんのも

🍫

………あー、それはね、演技

🌷

へぇ、ずいぶん楽しそうな演技で

僕の声が棘(とげ)を含んでたのか、えとさんは眉をひそめた。

🍫

なおきりさんこそ。前に佐伯さんと任務したとき、
めっちゃ笑ってたじゃん

🌷

僕はあんなヤらしー手、使ってない

🍫

……なにそれ、言いがかり?

🌷

うん、嫉妬

えとさんの動きがぴたっと止まった。

僕はコートのポケットに手を入れながら、少し笑って、言ってやる。

🌷

君が他の男と仲良くしてるの、あんま好きじゃないんですよ

……しーん。

えとさんはしばらく固まって、それから顔をぷいっとそらした。

🍫

……そういうの、ずるい

🌷

何が?

🍫

それ以上言われたら、私……

僕のほうを見ずに、ぽつりと。

🍫

演技じゃなくなる

静から夜の非常階段に、ふたりの間の“任務じゃない感情”が そっとしみ出すように漂ったーー。

ーこれは、任務の一環であり、偶然であり、そして……たぶんちょっとだけ、 僕のわがままだ。

翌週。 街角の監視カメラが届かない影のビル裏に、僕は立っていた。 時間は夜九時。今日は敵対組織の動きがあるという情報が入り、 それぞれの組織が別にルートで潜入を試みていた。

……えとさんの姿も、その中にあることは予想していた。 だって僕はもう、あの人の行動パターンがだいたい分かる。

だけど今回は、任務よりもーーいや、任務の中で、僕はひとつだけ、やりたいことがあった。

先週のレストランでの“別の男”との任務。 えとさんが笑ってた。それが、くやしかった。

別に恋人でもないし、敵同士だし、任務だし……わかってる。 けど、悔しかった。だから今日は、

僕の番だ。

🌷

ーーターゲット、発見。

🌷

……ずいぶん、無防備ですね?

路地裏で何かを調べていたえとさんの背後から声をかけると、 ぴくりと肩が動く。

🍫

……お前かよ。ったく、どこまでストーカー気質なん?

🌷

敵の動きを追ってるだけです。えとさんがそのルートにいた、
ただそれだけですよ?

微笑みながら近づくと、えとさんはじり、と下がる。 けど、壁に背を預けた瞬間ーー

僕はそのすぐ前に立って、両手を壁についた。

壁ドン。

夜風と、えとさんの小さく詰まった息が重なる

🍫

……っ、ちょ、ちょっと、近っ…!

🌷

任務中にそんなに顔赤くして、油断しすぎですよ。

🌷

……えとさん、緊張感足りないんじゃないですか?

🍫

ふざけんな……!これは事故……というか、なにこの距離、マジで……!

ふるふる震えるえとさんのまつ毛。 けど、目は逸らさないところがかわいい。 僕はその頬に髪がかかっているのを、さらりと指で払った。

🌷

この前のレストラン、楽しそうでしたね。任務、成功でしたか?

🍫

は、はぁ? まぁ、そりゃ成功はしたけど……

🌷

……へぇ、そうですか。

🌷

じゃあ今日は、僕の任務にも協力してくれませんか?

🍫

は……?

🌷

任務名は、“えとさんの油断した顔をもっと引き出す”。

🌷

ターゲットは、君です。

🍫

なっ……! ふざけ、

言い終わる前に、えとさんは黙った。

僕の指が、彼女の顎の下に触れたから。 あと数センチで触れる距離。

けど、触れない。 僕はそれ以上のことはしない。 ただ、ゆっくりと息を落として、その表情を眺める。

🌷

……今日は僕の勝ちでいいですよね?

🍫

……っ、ば、バカじゃないの……ほんと、敵だってこと、忘れてんでしょ……

🌷

忘れてませんよ。でも、敵でもーー

「ちょっとくらい、触れてみたくなる夜もあるでしょう?」

次回 第9話 「まさかの家連れ帰り!?」 お楽しみに✨

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コメント

3

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ほんとにタヒにそう … 、 、 壁ドンは流石にやばいねっ ! ? もう キュ ン キュ ン だよっ ! ! ‪🫰🏻🩷 ̖́- 続き楽しみにしてます ! !

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