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倉庫の灯りは,相変わらず弱い。 影が,二人の足元で 曖昧に重なっている。

康平は何も言わず待っていた。

急かさない。 埋めない。 それが,いま一番きつい。

蓮音は俯いたまま, 息を整えようとする。

蓮音

……オレ

声が,思ったよりも低く出た。

蓮音

……ずっと,
勘違いだ,って
思おうとしてました

康平の視線を感じる。 けれど,顔は上げない。

蓮音

……近いのも,
優しいのも,
全部普通だ,って

指先が,強く絡む。

蓮音

……オレが勝手に
変な意味に
してるだけだ,って

一度,言葉を切る。

胸が苦しい。

蓮音

……でも

喉の奥が,ひりつく。

蓮音

……一人分でやめる,とか

蓮音

……無理しなくていい,とか

蓮音

……離れる,って
言いながら,
ちゃんと見てくる
ところとか

一つずつ,並べるように。

蓮音

……そういうの聞くたびに

声が,少し震える。

蓮音

……オレのほうが,
離れられなくなる

康平が, なにか言おうとして、やめる。 その沈黙が,続きを許してしまう。

蓮音

……限界なんです

はっきり言った。

蓮音

……これ以上,
普通の顔して隣にいるの

肩が,小さく上下する。

蓮音

……好きだ,って
言うつもりは,なかった

ここで初めて,顔を上げる。 目は,逃げない。 でも,どこか切羽詰まっている。

蓮音

……言ったら,
全部変わるから

一歩,踏み出す。

蓮音

……オレが欲しいのは,
優しさでも,
善意でもなくて

言葉を探す時間すら, もう残っていない。

蓮音

……一線,越えるか

蓮音

……ちゃんと,引くか

短く,息を吐く。

蓮音

……どっちかじゃないと,
……壊れる

静寂。

雨音が,遠くで一度だけ強まる。

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